第23話「RUN RUN RUN!」
──うぉぉおおおおおおおおおおおお!
雄たけびを上げるロメオ達の前に立ちふさがったのは、このダンジョンの多く生息する動物系の魔物であった。
しかし、その大半が入口からの援護射撃に驚いたのか、散を乱して逃走していく──。
……これならいけるッ!
確信したロメオ達は足を止めることなく単縦陣になって突き進む。
もちろん、先頭は火力に優れる前衛のロメオだ!! そして、リーダーが続き、Cランクの5名。最後尾にBランクの女弓士がついた。
「はぁぁぁあああ!」
ザンッ!!
目の間に迫ってきた地猪を一刀のもとに屠り、その屍を捨て置くと後続に続けと無声指揮!
──ほかにも、入口付近では何匹かが踏みとどまっていたようだが、
どうやら、逃げる仲間に足を踏まれるなどして動けなかった個体群らしい。
いい、こーいうのは無視だ。
「いけるぞ!! 前方──空白地帯!」
「了解ッ!」
ロメオの背後についた、リーダーを務めるベテランが鋭く叫ぶ。
彼は、髭面の一見して悪人顔の|
しかし、見た目に反して情に厚いのか、今回の騒動においても、引退寸前のところギルドに出頭したという経緯がある。
当然、地元なだけあってこのダンジョンにも詳しいらしく、足取りは自信に満ちていた。
なにより、盗賊職らしく「物見のスキル」も持ち合わせているのか、敵を素早く察知し、その空隙へとよどみなく進路を指示してくれる。
ゆえにロメオを先頭にまったく足を止めることなく突進すると、
ほどなく、集まっていた魔物の群れを抜け出ることに成功──すると、なんと意外なことにダンジョンの中はいつも通りの光景が広がっていた。
──ザァァアア……。
「ひゅー♪」
「おっどろいた……もっと、地獄みたいになってるかと」
背後に付き従うCランクの冒険者たちの軽口。
だが、ロメオも同感だ。
──洞窟特融の冷たい空気が流れるとともに、
薄暗いダンジョンと、光る苔──むき出しの岩肌の壁とボンヤリと光る天井にはそれらがびっしりと張り付いている不思議な空間。
そして、高い位置を舞う飛行型モンスターに、どうやって生えているのか謎の植物が多数と……──なるほど、いつもの『夕闇の洞穴』だ。
──ただし!!
「油断するな! 来るぞ!!」
リーダーの声の先、洞窟の陰から顔を見せるのは、Eランク御用達の一角兎の──群れだった。
……さすがに、数だけはいつも通りとはいかないらしい。
「はは! 思った以上の数だな!」
「だけど、それほどでもねーぜ!」
「ほんと、拍子抜けしちゃうわー!」
あはははは!
相変わらず軽口を叩いているが、怖気づかれるよりははるかにいい。それに、たしかに昨日の防戦のそれと比べてあまり脅威を感じないのは事実。
「あの隊長の読みがあたったか!」
「みたいだな! ただ、それでいくとあんまし時間はねーぞ!」
隊長曰く、モンスターの群れが本格的に動き出すのは夜明けを待ってから。その間は、おそらくどこかで待機しているか、休息しているだろうと──。
なるほど。半分あたりだ──どうやら、血気盛んな個体だけが入口に集結していたらしい。
それ以外の個体は、
そして、ボスはおそらく──……。
「多分、この先の中ボス部屋だ!」
「……なるほど! あり得るな!!」
一度、入口付近で確認された巨大なボスモンスターが確認できない。
可能性としては朝までどこかに潜んでいるかだろう。そして、その場所として適しているのはこの付近だと中ボス部屋しかない。
リーダーの
──いける!!
「目標、前方の中ボス部屋────ロメオたのむ!」
「おうよ!!」
ガシャンッ!!
視界が狭くなるので兜の前面をを解放していたロメオであったが、それを一気に押し下げ顔面を保護すると、盾を前に突撃開始!!
その前方に数体のモンスターがいるが、知ったことか!
「おがっぁあああああああああああああああああああああああ!!」
ビリビリビリッ!!
戦士としての闘争本能のままに、ロメオが咆哮する!!
スキル『
ただでさえ、初心者ご用達の地域で、Bランクの冒険者の実力をもったスキルの発動だ。
──しかも、それだけではなく、どうやら頭にしている兜の効果か、凄まじいハウリングが起こり、
下級のモンスターが慌てて道を開ける。
「は、はは!」
と、とんでもない効果つきじゃねーか!
プルートかベッキーの作か。狙ってやったかどうかは別にして、とんでも効果付きの
──おそらく、クマの頭蓋骨をそのまま使ったことで、骨格からもたらす振動がロメオの『
見た目を気にしなければ装備としてはかなり優秀だ!
そして、
「いったたた……なんちゅう声だすんだよ、お前は!」
耳を抑えながら顔を
「はは、わりぃわりぃ!」
ちっとも悪びれずに言うロメオを苦笑しながら見送る最後尾にBランクの弓士がいう。
「見なっ。奴等引いていくよ!」
『ゲッ!』『ピギャァァ!』
なるほど。もともと大ムカデやジャイアントスパイダーといったE~Dランク程度の魔物が大半だ。
逃げた個体は無視──怯えて足を止めた個体は、間髪いれず追撃を開始したロメオの暴走馬車のごとき突撃に跳ね飛ばされていく。
「邪魔だぁぁああああああああああああああああ!」
ドカーン!!
バーーーン!!
そして……、
「逃げる先、前方空間!────やはりあそこか!」
おそらくボスの元に逃げ帰ったのだろう。
そして、その先は予想通りに中ボス部屋!!
『戦の咆哮』と『シールドバッシュ』の組み合わせ! さらには『速歩』を使用し、全く足を止めないロメオが道を作ると、
まるで、除雪でもするかのごとく、モンスターを跳ね飛ばされていく! その攻撃正面は、もちろん、ベッキー特性のスパイク付きの大盾だぁぁああ!
──おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
スキルと装備の組み合わせが相乗効果を発揮し、まるで重装騎兵の突撃だ!!
──ドカン、ボカーン! と、面白いくらいに跳ね飛ばされていくモンスターの群れは成すすべもなく蹴散らされていく。
「「つ、つぇぇ……」」
その様に、一瞬ポカーンと呆気に取られていた冒険者たちであったが、次の瞬間慌てて追従する。
「お、おい!! 今だロメオの背中についていけ!」
──お、おう!!
「す、すげぇ!」
「まるで猪だぜ!」「こりゃラクチンだ!」
威勢のいい声もやや呆れのそれが混じって聞こえるが、
余計なお世話だ、黙ってついて来い!!
「くっちゃべってないで来い! 舌を噛むぞ!!」
だいたい、楽させるためにやってんじゃねーよ!!
気楽な声を上げる他の冒険者に毒づきたい気分だが、ロメオをして、足を止める気は全くなかった!
「いいぞ!! 前方そのまま──今のところ、雑魚ばかりだ! そのまま行け!」
「あいよぉぉお!」
ズドォォオン!!
リーダーに言われるまでもなく、邪魔だぁぁあ! とばかりに、
残る魔物を盛大に吹き飛ばし、ロメオを先頭に決死隊は達はついに中ボス部屋に到達。
たしかここは──。
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