友達

天川裕司

友達

タイトル:友達


私はその日、公園で静かに本を読んでいた。

すると座っていたベンチのそばで、

子供が遊んでいるのを見かけた。女の子。


その子は砂場へ行き、滑り台の方へ行き、

ブランコの方へ行って、

またベンチのそばまでやって来た。


私はとりあえず静かに小説を読み、

その子が遊んでるのをなんとなく横目で見ていた。

していると、その子は私の隣に腰かけてくる。


「…こんにちは♪」挨拶してあげた。

するとその子はこっちをぱっと振り向き、

はにかむような感じで笑顔を見せた。


そして何か喋り出したのだ。


「え?この公園でずっと遊んでたの?」

女の子「うん。ずっとずーっと」

「ふうん、そうなんだ」

子供特有の、

ちょっと大袈裟に言う感じで言ってくれたんかな、

なんて思いながらその子が可愛く見えてくる。


女の子「あの砂場がアタシのベッドでね、あの滑り台がアタシの遊び道具で、あのブランコがアタシのキッチンでね、そんでこのベンチがアタシのリビングでねー」

「へぇ〜そうなんだ♪」

なんだか面白い子だなぁ。


でもその内あんまりそんな事を

何度もリアルに言ってくるので、

少しずつ不思議な気がしてきた。


そして興味本位に、

「お父さんとかお母さんは?」と聞いてみた。


その子はだいたい歳の頃、8歳か9歳ぐらい。

改めて見てみると、公園には他に誰もおらず、

こんな子がずっとこの公園で

1人で遊んでる…と言うのも少し不思議な感じ。


女の子「ここには居ないよ。でも眠ったら居るの」

「……眠ったら、居るんだ」

ちょっと返事に困った。

何を言ってるのか?…それを少し本気で考えたのだ。


女の子「でも今日はここへ出てきてよかった。お姉ちゃん、あたしの友達だね♪じゃあね、また会おうね」

と言ってずっと私の横に座ってた

その子は急にうっすら消えたんだ。


「えっ…?!………」

一瞬、訳がわからない。


とりあえず私はパッとベンチを跳びのき、

辺りをバッバッと見渡してみた。

やっぱり誰も居ない。


これは数年前のこと。

その時私が読んでいた小説はサスペンスもの。

そのラストのところで

女の子が消える衝撃的な場面が待っていた。


あの時の恐怖と不思議はもう薄らいでるけど、

「もしかしてこの小説の中から…?」

と言う思いは今でも鮮明に残っていた。

これも不思議な話。


とりあえずその本を、

私は今でも大切に自分の書棚に置いている。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=CFKzNPruz9s

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友達 天川裕司 @tenkawayuji

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