雫
「はあ~、マジで怖かった」
ハチは、登った時の比にならないほど下りるのは、怖いと思いもう二度とこの樹に登らないと心に決めた。
次は、天霊山に向かうために丘の上で周りを見渡すと山と呼ぶには、少し小さいと思ったけどその山の中腹辺りが光っていた。
「確かあの人が言うと天霊山の中腹にある光る柱の下って言ってたし、あそこから光が見えるからあそこに行こう」
光の方向を確認してナナとハチは、丘を下りていく。
「なあ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ナナは天の雫を手に入れた後は、どうするんだ?」
「私?私はまだこの世界にいるわ」
「何で?一緒にこの世界から出ようよ」
「それはまだ出来ないの、でも君には向こうで待ってる人がいるでしょ。それに私にはまだ向こうの世界に待ってる人はいないから」
「そんなことないよ、少なくとも自分はナナと一緒に帰りたいと思ってるよ」
ナナは小さな声で、君が向こうの世界に帰ったら私も帰れるからと言う。でもその声はハチには聞こえてはなかった。
あれからナナに話しかける事が出来ず、ハチはナナの背を見ながら後ろについて歩いてると光る大きな柱が見えてきた。
「これが柱の泉かすごく綺麗な所だな」
「そうね、すごく綺麗」
泉の中央辺りにある大きな柱の上から光りが泉の一点に降り注ぐ様に光りそこに雫が落ちていく。
光りが降り注ぐ場所に近づきハチは、光りを塞がない様に雫を生命の杯に注ぐ。
天の雫は、生命の杯に溜まるとさらに光り輝きだす。
「これで全部揃ったから、あの人の所に戻ろう」
そしてハチは、これでナナとお別れだと思うと歩く足取りがとても重く感じた。
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