第41話 五大貴族ー4
「
「了解いたしました! お疲れ様でした! 夜虎特級魔術官!!」
そのあと、国家魔術官たちが集まってきて、けが人の対処や後処理などをやってくれた。
報告を済ませて、俺とアザルエルは病院を出る。
そのときだった。
「「お嬢様ぁぁぁぁ!!」」
20人ぐらいの黒服が、走ってくる。
全員色黒のアフリカ系だ。
ということはやはり。
「あちゃーつかまっちゃったか。さすがに騒ぎすぎたかな」
俺はアザルエルを見る。
これも因果か。と思うほどの偶然ではあるがこの金髪ギャル――その名を。
「ということで、アザルエル・ロートオリフラムちゃんでしたぁ! びっくり?」
ロートオリフラム家のご令嬢。つまり五大貴族だった。
「まさかアフリカを支配する五大貴族、黄金の聖火――ロートオリフラム家のご令嬢がこんなギャルとはな」
「あはは! 親しみやすいっしょ? やーくんも、白虎夜虎っていうんだね。なんか名前聞いたことあるって思ったけど、確か五大覇祭にでるよね?」
「そう。偶然だな」
「運命感じる? 感じちゃう?」
にやにやと俺を下から覗き込むように見るアザルエル。
なんというかいちいち仕草がエロいな。男子高校生を舐めるなよ、イライラするぞ。
「ふふ、じゃあまた遊ぼうね! あ、これお金返しとくね」
「あぁ」
そして、部下であろう黒服たちに連れていかれて、アザルエルは言ってしまった。
あれがロートオリフラム家――シルバーアイス家と対を為すように、溶けない氷ではなく、消えない火といわれている五大貴族の一角。
さらに、あの爆発魔術。おそらく視認できている場所を爆発させることができる魔術のように思えた。
「……強いな。とんでもなく」
圧倒的な範囲攻撃と攻撃速度。
視認するだけで発動する。
随分と抑えていただろうが、本気を出したらどんな爆発を起こせるのか。
それに俺に追いついてきたんだ、高速で移動する手段すらもっているのだろう。
俺ならどうやって対処するか。
そんなことをつい、考えてしまう。
プルル♪
「ん?」
すると電話がかかってきた。
静香お姉ちゃんだ。なんだろう。
「はい、もしもし」
「さぼりはダメよ。今日の分の授業は補講するように」
なんで俺が学校をさぼったことを知っているのか。
というか開口一番それですか。
「わ、わかったよ」
「ふふ、偉いわ。それで本題だけど、今日の夕方18時。先ほどメッセージを送ったからその店に来なさい。これは紫電家としての命令よ」
「え? なんで?」
「あなたに会いたいという人がいるわ。相手も学生だからかしこまった服を着る必要はないけれど、国賓だからそのつもりで。さぼるぐらいだから予定はないのでしょう? それとも何か言い訳があるのなら聞いてあげるわ」
「……何もありません」
「そ。ならいいの。遅れないように」
ブチッ。
いきなり呼び出しでこれである。
紫電家の名を出されたら断るわけにもいかないし、静香お姉ちゃんには逆らえない。
俺は大人しく向かうことにしたが、しかし、VIPって誰だろう。
夜。
俺は、学生服を着て指定された場所に行く。
まぁいつものごとく摩天楼の最上階――ここは中華のお店らしい。
メニューを見たら10万こえてた。笑っちゃうね!
静香お姉ちゃんからの呼び出しだし、払ってくれるでしょう!
ラーメンも途中だったし、めちゃくちゃ食ったろ。
アワビに上海蟹、小籠包。あー腹減ってきた。
そんなことを思いながらエレベーターに乗り、最上階へ。
すると黒服が何人もいた。そして貸し切り状態。
「…………まさかね」
なんとなく……なんとなくだけど、国賓がどんな人かわかった気がする。
「白虎夜虎様ですね。こちらです」
「あ、どうも」
エレベーター前でスタンバってた店員さんに、案内されたのは個室だった。
そしてその扉を開けると。丸い中華テーブルが中心に置かれたなんか高そうな皿と龍の置物が飾っている部屋だった。
「あなたが、白虎夜虎ね!」
「あ、はい」
そこには、とんでもなく偉そうに腕を組んで、ツン! という効果音が聞こえてきそうな勢いで俺を見下す女性が立っていた。
真っ赤なチャイナ服、黒い髪、額を開けて、クレオパトラみたいにぱっつん。
なんだかクジャクみたいなうちわを持って、俺を見るのは。
「黒王冥よ! 冥様と呼びなさい!」
「は、はじめまして~冥様~」
やっぱり五大貴族のご令嬢だった。
若かりし頃の静香お姉ちゃんから、ツン成分だけを抽出して、煮詰めてたような。
若干幼い体型と慎ましやかな、それでいてすべてのパーツが整って、やはり非の打ち所がないほどに可愛い。
身長は随分と小柄のようだが、ゼフィロスぐらいかな。150ちょっと?
俺は会釈しながら席に座ろうとした。
とたんに、すねを蹴られた。痛い……どうして。
「誰が座っていいっていったのよ! 一番偉い私が立っているのよ! 躾けがなってないわね、この駄犬!」
「えぇ…………」
いきなりの駄犬呼ばわりである。
静香お姉ちゃんが俺を見てクスクス笑っている。
「こんな礼儀知らずが、国の代表として五大覇祭にでるなんて! 精々恥をさらさないことね!」
「あ、はい……頑張ります」
すると俺を見て睨み、またすねを蹴られた。
痛い……どうして。
「私が座ろうとしてるのよ! 椅子を引くのが当然でしょ! そんなこともわからないの? 駄犬!!」
「は、はい。失礼しました。冥様」
ふん! っと鼻を鳴らす黒王冥。
俺は渋々椅子を引いて座らせた。なんだこの我がまま娘は。
「じゃあ、揃ったことだし。食事を始めましょう。なにやってるのよ、早く座りなさい。とろいわね、駄犬!」
「もうめちゃくちゃだよ……」
何をしてもとりあえず駄犬と呼ばれることがわかったが、なんというか、今までの五大貴族で一番貴族っぽい。
悪い子じゃないんだろうけど、このメスガ貴族め。
それから信じられないぐらいうまい中華料理が運ばれてきて、俺達は食事を始めた。
冥様と静香お姉ちゃんが食事する仕草は、さすがに美しく、俺はさてテーブルマナーか。わからんな。と適当に食べた。
犬用のエサ皿をもらった方がよかったようねと、また駄犬と怒られた。
そこからは、当たり障りのない会話。
どこで生まれたとか、どうやって生きてきたとか。
そしておそらくは本題に入るための前振りが始まる。
「駄犬、あなた
「えーっとは、はい。一応」
「勘違いしないでよね!!」
「えぇ……」
別に何も言ってないのに。
「それぐらいで調子にならないで。
「す、すごいです。冥様はとてもお強いんですね」
とりあえずおだてとこ。
「ふん! 当然よ! 私を誰だと思ってるの。黒王家史上最強と呼ばれる天才魔術師よ!」
心なしかちょっと嬉しそう。
なるほど、意外とチョロいと。
「冥……夜虎は、あなたより強いわよ」
「…………はぁ?」
――ぞくっ。
「冗談でも笑えないわね、静香」
「ちょ、ちょっと静香お姉ちゃん!」
黒王冥から漏れでた黒い魔力に、思わず反応してしまった。
強い。
当たり前だが前回第二位の黒王家。ヴァイスドラグーンがいなければ世界の覇者だった家。
「でもいいわ。自信があるのならこの話を始めやすい」
「やっぱり何か話があったのね」
「私の曽祖父。つまり現当主――黒王
壮絶な過去をサラッと話したようだが、さすがに黒王家。
今や世界の覇権をヴァイスドラグーンと争う大国の支配者、きっと想像もできない何かがあるのだろう。
「それで、じい様が言ってるの。そろそろだろう。もう十分待っただろうってね」
「待った? どういうことかしら?」
「まがい物の紫電家になってから100年待った。もう十分、魔術師たちを無駄に死なせた。だからこの五大覇祭……あなた達が、ふがいない結果になったなら」
黒王冥は、目を開いて俺をまっすぐ見て言った。
「日本は黒王家がもらうわ」
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