第39話 五大貴族ー2
「まだ……足りない? ならもう一度」
地上で慌てふためく民衆を眺めて、もう一度指を動かそうとするゼフィロス。
そのとき、後ろから声がした。
「今のはあなたね?」
高層ビルの屋上、ゼフィロスは振り向く。
そこには、ローラと夜虎がいた。
二人は、ゼフィロスの魔力を
それは勘違いだとすぐに気づいたが、しかしゼフィロスは無関係の一般人に危害を加えていた。
「あら? 耳が遠いのかしら。仕方ないからもう一度言ってあげる。バカなことをしたバカはあなたね? っていったのよ、バカ」
「侮辱? 最強はそれを許さない。……死んで」
ぎろりとローラを睨むゼフィロス。
次の瞬間だった。
風の刃が、ローラ目掛けて飛んでくる。当たれば人間など簡単に真っ二つに切り裂く刃。
しかし、ローラの銀色の氷がそれを阻み、氷越しにゼフィロスを睨む。
「理性もないのね。もはや機械? 龍は知性が高いというのは嘘だったみたいね」
「…………その魔術」
次の瞬間。
「シルバーアイス家のオーロラ・シルバーアイス?」
「――!?」
ローラの目の前にまるで瞬間移動したかのように、立つ。
反応できなかったローラは、慌てて魔術を使おうとするがその手を掴まれる。
「たとえ五大貴族でも、私に敵対するなら殺す。私は世界の支配者、歯向かうことは許さない」
「私を支配できるのは夜虎だけよ。離して、それとも凍る?」
「あなたじゃ私には勝てないのに、なぜそんな態度をとるの? 反抗的……支配しないと」
「へぇ、言うじゃない。やれるもんならやってみなさいよ!」
そのときだった。
「二人とも、待って!!」
間に入り、二人を遠ざける夜虎。
「誰、あなた」
しかし即座に、吹き荒れる暴風が夜虎を吹き飛ばそうとする。
夜虎は、ローラを抱えてその場から距離を取る。
風を纏うゼフィロスの殺気、思わず夜虎も雷を纏うって相対する。
一触即発、しかし、間に銀氷の壁が二人を阻む。
「そこまでだ。君たち」
現れたのは、ジークフリートだった。
「ゼフィロス君、そして夜虎君。ローラ。君たちが戦う舞台は用意されているのではないか?」
「ジークフリート……あなたも私に歯向かうの?」
「いいや、これは提案だよ。力をみせて支配するのなら、うってつけの場所があるはずだ。そこで思う存分と戦えばいい。それにそろそろ……」
直後スマホのアラーム音が鳴り、電話がかかってくる。
それはゼフィロスのポケットからだった。
「はい。戻ります」
そして電話を切るゼフィロスはジークフリートを見る。
「御父上によろしく。また五大覇祭で会えることを楽しみにしているよ。ゼフィロス君」
「…………」
ゼフィロスは無表情に、こちらを見つめながらも風を纏って飛び立った。
「あれがゼフィロス…………なんというか……まるで機械だ」
「仕方ないんだ。だが……彼女は犠牲者だ」
「犠牲者?」
「ふん! でも気に入らない。支配支配って……それより、夜虎! かっこよかった! ありがとう!」
そういって夜虎にぎゅっと抱き着くローラ。
夜虎はしかし、去っていくゼフィロスの背を見つめた。
心臓がドクドクと音を立てている。
勝てるかわからない相手との対峙、それが夜虎の心をざわつかせる。
間違いなく強い。
それもとんでもなく強い。
今の自分でももしかしたら……生まれて初めてそう思わせる何かがゼフィロスにはあった。
「男の子って感じ?」
「ふっ……楽しみだな」
◇その日の夜。夜虎
俺は男子寮に戻り、ベッドの上で今日のことを思い出していた。
現・最強との邂逅。
性格はまるでマシーンのように淡々と、だが強い。
「ゼフィロス・ヴァイスドラグーンか…………もしかしたらあれが……必要になるかもな」
そんなことを考えているとなんだかうまく眠れなかった。
武者震いという奴だろうか。
全然眠れないので、結局起きて太陽学園に向かい、特別申請で真夜中の修行をした。
清十郎に、修行バカと言われても仕方ないな。
でもこの日は、高ぶった何かを抑えないと寝れなかった。
翌日。
「しっかり寝坊した……」
見事なまでの寝坊を決めて、俺はベッドで二度寝した。
ローラや清十郎からめっちゃ連絡きてるけど、寝坊した。休むとだけ送っておいた。
久しぶりにやったな。
すでに11時、お昼ごろ。
顔を洗ってせっかくなので、昼飯を食べに行った。
あとは生活必需品も買っておくか。よし、久しぶりにちゃんと東京に出よう。
渋谷。
なんでここなのかと言われると、ラーメンが食べたくなったからだ。
清十郎が奢ってくれたラーメン、結局食いそびれたし、めちゃくちゃウマそうだったからな。
1時間近く並ぶかもだが、よし、今日はチャーシュー大盛と餃子大盛、チャーハンも付けちゃうぞ。
ん?
「まじ!? えぇぇぇぇ!!!! カード使えないのぉぉぉぉ!?」
ラーメン屋の前で泣き崩れるギャル? がいた。
金髪の髪をくるくると撒いて、片側に全部流し、うなじが見える。
日サロ? に週8で通ってますという感じのしかしそれでいて健康的な小麦肌と、ほぼ水着だろと言いたくなるほどの露出度の高い服。
それでいて…………でっか。胸がデカいを通り越して、もはや長い。
項垂れて四つん這いで膝をついているが、そのまま地面に胸がついてしまいそうなほどで失礼とはわかっていても思わず見てしまうのは男のサガか。
「ここが東京で一番美味しいっていうから色々頑張って、抜け出して……しかも1時間近く並んだのにぃぃぃ! ありえないんだけどぉぉぉ!! まじありえなーーい!! 日本円もってないよぉぉぉぉ!!」
どうやら現金しか使えないのに、カードしかもってないようだ。
やっと順番が来たのにそれは普通に可哀そうだ。
「あ、あの……よかったら、貸しましょうか?」
「え?」
こういうとき、つい助けたくなるのは……まぁ父さん達の育て方が良かったということで。
俺は店員の前で、人目をはばからず泣いている金髪褐色ギャルに提案した。
すると。
「まじ!?」
俺の手をぎゅっと握るその子は、俺を見る。
目がでっか……金色? いや、カラコン?
まつ毛なっが……いや、これも化粧か。よく見ればローラにだって負けないほどの美少女の褐色ギャルが俺の手をぎゅっと握る。
「店員さん! 二人でいける?」
「え? はい。空いたのはテーブル席なので……問題ないですが」
「やった! じゃあいこ!! まじ、助かる! お腹すき過ぎて死んじゃうところだった!」
「え? ちょ?」
俺はギャルに無理やり連れ込まれた。
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