第24話 高校生活ー1
◇
あれから10年が経った。
10年……本当に色々あったな。俺は10年の思い出を脳裏に浮かべる。
「………………あれ? 修行しかしてなくね?」
膨大な魔力を制御するために、ただひたすらに修行をしていた記憶だけが蘇る。
修行自体は好きだし、体を動かせるのは前世のせいもあってか、楽しすぎていくらでもできちゃうのだが、さすがにちょっと悲しすぎる青春なので思い出すのはやめよう。
そんなこんなで東京へと上京し、俺は日本国立太陽学園へと入学する。
「ここが今日から僕……いや、俺の学び場……太陽学園か……でけぇ。この学校だけで俺の村よりでかくね?」
僕という一人称を首を振って否定する。
別に僕でもいいのだが、体が前世の精神に追いついてしまったので何となく気持ち悪くてやめた。
そんなことはどうでもいいのだが、ここは日本国立太陽学園……西の太陰学園と双極を為す魔術師を育成する学校だ。
そして
ならその教育に金をかけるのは当然だろう。巨大な学園は、田舎育ちの俺からすればとても輝いて見えた。
というか都会が全部輝いて見えた。
これで学費無料、学生寮も無料、食堂だって全部無料。
なんでも無料の特待生として迎えてくれたのだから、取ってよかった特級魔術官資格。
ちなみに認定は魔術局局長――貴人千歳さんが中学卒業と同時にしてくれた。
『まだまだ子供ですが……随分と大きくなりましたね』
そういって優しく頭を撫でてくれた千歳さんはやっぱり優しいおじさんだった。
ということで、俺は今日から東京暮らし。
俺は父さんと母さんと高校から上京すると約束していたのだ。
父さんと母さんは大好きだが、やはり男は一人暮らしを経て成長するのだ。あとやっぱり都会に憧れるのが若者の常というものだな。
「あ、あの…………」
「ん? なんですか?」
「「きゃぁぁぁーーイケメン!!」」
なぜか女生徒らしきグループに話しかけられて、叫ばれる。
なんか今朝から女性にひそひとと指をさされることが多い。これが東京か。
「ね、ねぇ、あの人……」
「転校生かな? いや、新入生?」
「美形過ぎない? それにスタイル良すぎ、背高-い。王子様みたい!」
「何かのモデルさん? 芸能人?」
「いや、でもあんなすごいイケメン見たことないけど……」
「彼女いるか聞いてみる?」
「バカ、私たちとは住む世界違うって」
こそこそと指さされている。
田舎者とでもバカにされているのだろうか。
我ながら制服は似合っていると自負していたのだが……まぁ母さんがずっとかっこいい、かっこいいって言ってくれてただけだが。
何となく視線が辛く、俺は駆け足で入学式が行われる体育館へと向かった。
「では、続きまして紫電静香さんによる新入生へのメッセージです」
「あ、静香お姉ちゃんだ」
形式的で伝統的な入学式が行われる。
パイプ椅子に座りながら待っていると、静香お姉ちゃんが登壇した。
この学園の卒業生であり、俺の7つ上だから大学卒業したはずだ。
既に特級魔術官でもあり、多くの魔術官を目指す学生にとって憧れにもなっている。相変わらず黒髪ロングで泣きぼくろがセクシーな目力の強い美人である
「まずは入学おめでとうございます。紫電静香です。この学園は、古くは平安時代に、時の大陰陽師――安倍晴明が設立しました。人が
よくとおる声で俺達に向けてメッセージを送ってくれる。
そして俺を見つけたようだ。手を振ったら睨まれた。ふざけたつもりはないんだけどなぁ……。
「魔術官として
いきなりのとてつもない厳しい言葉に、新入生は面食らった。
なんか俺も怒られている気分になってきた。でも知ってる。静香お姉ちゃんは厳しいことを言うが優しいのだと。
「ですが、それを恥じる必要もありません。あなたが勝てないなら誰かが倒します。我々魔術官の誰かが倒し、そして人類が勝利します。覚えておいてください。我々は一人ではない。世界中に同士がいて、ともに戦う仲間がいます。あなたが出来ないことは誰かができる。だから無理をする必要はない。あなたにはあなたがすべきことを。あなたにできることを精いっぱいやりなさい。そのための努力を惜しまないこと。それが本当の意味で戦うということです」
その言葉に面食らっていた生徒の全員が頷くようにまっすぐと静香お姉ちゃんを見る。
やっぱりこういうところはさすがだなぁ。カリスマ性だろうか。
「ですが、中には天賦の才を持つ者がいます。神に選ばれたとしか思えないようなそんな子が」
すると静香お姉ちゃんが俺だけを見た。
「先ほど私の考えを述べました。ですが、その枠に収まらない者へと送る言葉もあります。信じられない才を持ち、なのに驕ることなく研鑽を積み重ね、そして何より誰かを救いたいと強く考える優しい心も持つ者へ、月並みな言葉ですが、ノブレスオブリージュ……強者には強者の責任を、そして願わくば」
そしてキリっとした怖い顔の静香お姉ちゃんが、にこっと俺に微笑みかけた。
「その天衣無縫の雷で、この国をもう一度照らしてくれることを期待します」
「はい! 頑張ります!」
俺は思わず大きな声で、返事をしてしまった。
すると体育館中で笑いが起きる。俺は少し恥ずかしくなって……縮こまった。
変な目立ち方をしてしまった。
静香お姉ちゃんがクスクスと笑い、そして入学式はつつがなく終わった。
その日は授業もなく、午後。
俺は特級専用修練場へ向かった。
太陽学園には、多くの修練場と呼ばれる訓練施設がある。
いつも予約でいっぱいだが、特級専用修練場は、特級以上しか予約できないためガラガラだそうだ。
事前に説明書は読んでいたが、俺も今日初めて使うので、ちょっとワクワクだ。
最新鋭のテクノロジーを使った近未来的訓練施設! 魔術と科学が交差する!
「いつものメニューからやるか」
この10年、毎日欠かさなかったメニューから始める。
まずは、ストレッチ、そして型、雷槍の素振りといつものルーティン。これで1時間近く。
体が温まってきたので、ここでしかできない訓練メニューであれをやろう。
「…………よし! 新技開発するぞ!」
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