67「バレましたか?」+
ロボ達が危ないです。
とにかく急いでウギーさんを止めなきゃなんですが、身体強化していても追いつけません。
ウギーさんも速いです。
タロウとプックルは頂上の火口付近まで無事に行けたのか、ここからは見えません。
ロボは見えますが、岩場に手こずって思うように登れないようです。本当は駆け上がるようなルートではありませんから。
逆にウギーさんは邪魔な岩は叩き割って進んでいます。
このままではあっという間に追いつかれます。
「待ってよ狼さん! 痛いことなんかしないからさ!」
『嫌でござる! 目が怖いでござる!』
逃げ切るのを諦めたロボが振り返り、霊力砲を放ちました。
『ウワォォォン!』
直撃しました。
噴煙に包まれたウギーさんが、「カッコいい! 余計に欲しくなったよ!」なんてそんな事を言いながら晴れた煙から姿を見せましたが、やはり無傷ですね。
しかし足止めに成功です。
射程範囲内です。
まずは土の大壁、ウギーさんの目の前の土を持ち上げました。
「甘いよ!」
それを飛び越えるウギーさん目掛けて闇の棘。大壁の
「痛っ! やったなー!」
刺さった棘を棒で薙いで叩き折るウギーさんに向けて光の魔法、直光線を三つ四つと放ちます。
全て走りながらです。
直光線を魔力障壁で防ぎきったウギーさんを飛び越え、立ち塞がりました。
「追いつきましたね」
『ロボ、先に頂上へ』『承知でござる!』
ウギーさんに言い放ちつつ、精神感応でこっそり指示を与えます。
「ちぇっ――やっぱり先にヴァンを仕留めようかな」
「簡単にはさせませんよ」
はぁっ――! と声を上げ全身に魔力を漲らせます。
「へぇ、強そうだ。でも――次の礎になるにしては……?」
ウギーさんが左の掌をこちらに開き、その手の甲に右手の人差し指を当ててじっとしています。
なんでしょうか?
こちらを見てニヤリと笑ったウギーさん。
斜面の下へ振り返り、追いついてきたロップス殿にも同じ様に掌を向けじっとしています。
ロップス殿が警戒心も露わに速度を緩めて慎重に進みます。
僕とロップス殿でウギーさんを挟む形になった所でウギーさんが手を下ろしました。
「なるほどね。このトカゲ人間は論外。ヴァンにしたって礎になるには魔力の総量が足りないようだね」
――っ!
…………バレ――ましたか?
「何を言っているんです? 僕らは父の所まで行く旅の途中――」
「そこから誤魔化すの? ははっ、人族の勇者の寿命が近いのは分かってるってば。
十年も前から……?
いえ、今はそれどころでは。何としてもタロウの存在は誤魔化したいんですが……。
「考えてるね。でもダメだよ。もうぼく分かっちゃったもん」
「何のことです?」
「ヴァンもダメ、トカゲ人間もダメ、狼さんか山羊さんの可能性もあるけど……。ヴァンの仲間、もう一人いるんじゃない?」
沈黙せざるを得ません。
「その一人を隠す為にぼくを土で覆って誤魔化そうとしてたんだね」
完全に僕の思惑はバレていますね。
「なぁヴァン殿、ここで
「その通りですね」
ロップス殿の言う通り、ここで仕留めれば問題なしです。
「ははっ、それこそ簡単じゃないよ――――はぁぁっ!」
ウギーさんの魔力が噴き出し、その身体を覆って何か形作っていきます。
全身がふた回りは大きくなり、真っ黒な鎧を全身に纏ったかのようなその姿は、頭から指先の爪、竜に似た尾までもが真っ黒な獣の形です。
「一気に行くよ。早いところもう一人を見たいからね」
――速い!
いきなり突っ込んで来たウギーさんに対応できません、殴られて地面に叩きつけられました。
身体強化を最大限まで上げていなければ今ので終わっていましたね。
ロップス殿が刀を振り上げ斬りつけますが、カィンと硬質な音を上げて弾かれました。
「ただの刃ではダメか!」
襲い来る尾を刀で受け飛び退るロップス殿。
僕も早く立ち上がって参戦したいんですが、ただいま全身から煙を上げて回復中。さっきの一発で全身がガタガタです。
なんと言う破壊力でしょう。
身体強化の甘いロップス殿が喰らえばひとたまりもありません。
「おぉぉ! これならどうだ!」
ロップス殿が刀に魔力を籠めて打ち込みます。
「
さすがロップス殿、獣の鎧を切り裂いて見せました。
――が。
ロップス殿が真一文字に切り裂いた腹部が瞬く間に修復していきます。僕のような煙も出さず、何もなかったかのようにスゥっと閉じていきました。
「トカゲ人間もやるね。痛くも痒くもないけどさ」
ウギーさんがロップス殿との間合いを詰めて獣の爪を振り下ろし、刀で受けるロップス殿とギィンギィンと連続して爪と刀を合わせます。
「良い刀だね」
そう言いながらロップス殿の左腹部を尾で打ち付けました。
「ぐぁぁ!」
右に弾かれたロップス殿に、立て続けに襲いかかるウギーさん。上から頭を狙って振り下ろされた爪を
「すみません、お待たせしました」
「ヴァン殿! もう良いのか?」
「ええ、もう大丈夫。代わりましょう」
受けた爪を振り払い距離を取り、ロップス殿のお腹に癒しの魔法を使います。
「また最初っからか、やんなっちゃうね」
お互い態勢を整え――
『ヴァン殿!! タロウ殿が!! 溶岩に呑み込まれたでござる!!』
◇◆◇◆◇◆◇◆
67.5「タロウ:マグマ」
ウギーとかいう子、めっちゃ強そうやん。
ヴァンさんたち大丈夫っすかね。
『タロウ、ココ、暑イ。プックル、毛、長イ』
「そうすよねー。俺も暑くって辛いっす」
ほら、頂上にたどり着いたんは良いんやけどね、すぐそこから下覗いたら二十メートルくらい下? もうそこマグマやねん。
ん? マグマ? 溶岩?
まーどっちでも良いけど。
頂上の中央は
穴ん中、全部マグマ。
だからもう暑くって暑くって、これもう熱いってレベルっすわ。
神さまおれへんし、んー、何したら俺の魔力分かる様になるんか全然分からんね。
「プックル、明き神さま居てる?」
『サァ』
そすよねー。
こんな事しとっても何にもならへんね。
で、登って来た方をこっそり覗いたらさ、ウギーいう子が棒持って暴れてるやん。
あ、ヴァンさん達が抜かれたで。
ロボやばない?
あ、やっべ!
吹き矢吹き矢! 援護射撃っす!
――タロオ――
「プックル? なんすか?」
『プックル、喋ッテナイ』
そうすか? 呼ばれた気するんすけど。
あ、ロボどうなったすか?
「おお! ロボの霊力砲直撃! ロボやるっすね! でも効いてねー」
俺も吹き矢で援護したいんすけど、ヴァンさんの魔法がどんどん出るし打つタイミングあらへん。
お、なんかジッとしてるけど、もしかして3の改めてお友達から、になったんかな?
――タロオ――
やっぱ呼ばれてるっすよ!
けど、辺りを見回してもプックルしかおらんやん。
――タロオよ、聞け――
「誰っすか!?」
『タロウ、ドウカシタ?』
「誰かが俺の名前呼んでるみたいなんすよ」
『誰モ、イナイ』
お、ロボ到着っす!
『――タロウ殿! 後ろ! それなんでござるか!?』
え? 後ろ?
なんかめっちゃ熱いんすけど、振り向かんならん?
そーっと振り向いたら……
「のわぁぁ! マグマの柱!
って、嘘ーん、マジっすか?
「ぐぁぁぁ! あっつ――」
『ヴァン殿!! タロウ殿が!! 溶岩に呑み込まれたでござる!!』
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