52「タロウの才能②」
「お見それしました。ロボ、これからは戦力の一人として数えさせて頂きますね」
『任せて欲しいでござる!』
ブンブンと尻尾を振って喜ぶロボ。
ちゃんと釘を刺すのも忘れてはいけません。
「ただし、ロップス殿は相当に手加減していました。半分も力を出していないでしょう。それを忘れてはいけませんよ」
『承知でござる!』
それでも以前のロボとは大きく異なります。もう少し訓練すれば、充分に戦えるでしょう。
「私が鍛えよう。体術ベースに魔力、いや精霊力か、霊力砲などを混ぜて戦う先ほどの戦い方をより訓練しよう」
『はいでござる!』
さてと、ロボはこれで良しとして、なぜか凹んでいるタロウをなんとかしましょう。
「タロウ、先ほどの光の魔法を明かりに使う応用、さすがですね」
ロップス殿の緑がかった魔力に、タロウの青が混ざった魔力色はなんとも言えない美しい色味でした。
「混ざってたっすよね?」
「ええ、青と緑の混ざった美しい魔力色でした」
「なのになんで使えないんすかね、俺の魔力」
本当に不思議です。
他人の魔力がないと自分の魔力が使えないんですから。
「何度も言う様ですが、はっきり言って分かりません。ですが、タロウの魔力が混ざる様にはなりました。僕らの魔力を上手に使う方法を考えましょう。それならタロウも戦えるかも知れません」
「……いつまでも足引っ張ってすんません」
タロウなりにみんなの役に立ちたいんですね。
タロウには無理して貰わなくても、そこに居てくれるだけでみんな和みます。ムードメーカーとしてのタロウは非常に優秀だと思うんですけどね。
照れますし、調子に乗るでしょうから本人には言いませんが。
「足を引っ張られてなんていませんよ。タロウはタロウのままで良いんです」
「……なら良いんすけど」
いつもの元気がないですね。どうしましょうか。
「あ――、良いことを思いつきました」
「なんすか?」
「上手くいくか分かりませんが、練習してみますか?」
「やるっす! どんとこいっす!」
今日は僕の魔力はほとんど使っていませんので、まだまだ半分近く残っています。これを少し多めにタロウに移します。
「ちょっと多めっすね」
風の刃程度なら二十回は使える量です。
「そんでどうするんすか?」
「どうもしません」
少し沈黙。
「え?」
「そのまま保ったままでいて下さい」
「え? もう夜っすけど、いつまでっすか?」
「朝までやってみましょうか」
僕の魔力はひと晩眠ればほぼ全快しますから、余剰の魔力をタロウに移しても問題ありません。もちろん何事もなければですが。
「……俺、寝られないんすけど」
「寝て下さい。寝たままでも魔力循環できれば成功です。これが上手く行けば、いつでも僕の魔力を混ぜたタロウの魔力を使えます」
「面白い事を考えたな。今度は私の魔力も入れてやろう」
『プックルノモ』
『それがしのも!』
ロボの精霊力はダメなんじゃないでしょうか。
「……みんな期待してるっすね! やってみるっす!」
その晩はみんなが寝てからも、タロウの『あっ! しまっ――』とか『クソっ!』とか遅くまで聞こえていました。
おはようございます。
ヴァンです。
タロウはどうだったでしょうかね。
どうやら寝ているようですが、遅くまで頑張っていましたからね、起きるまで待ちましょうか。
朝食の準備が終わる頃にみんなが起きてきました。
タロウはひどい顔をしています。
「タロウ、目の下のクマがすごいぞ」
「……そっすか。明け方までなかなか寝られなかったんす」
練習初日ですからね。さすがのタロウといえども魔力は残っていないでしょう。
「タロウ、僕の魔力は残ってますか?」
「残ってる、と思うんすけど、なんかもう良く分かんないんす」
「確認しましょう。僕に魔力を移すイメージを抱いて下さい」
昨夜タロウに移した僕の魔力を回収します。
……!!
驚きました。残っています。
「タロウ、ありました! 風の刃一回分もありませんが、確かに僕の魔力です!」
「……そんなちょっとっすか。ダメっすね」
タロウってば、勘違いしていますね。
「何を言ってるんですか! 量の問題じゃありません! これは素晴らしい才能です!」
「……ほう? そこもうちょっと詳しくお願っす!」
「眠りながらの魔力循環など、普通はできるものではありません。僕が知る限りでは一人もいませんよ」
「ヴァン殿がやらせたクセに?」
「だからこその練習だったんですよ。タロウならいつか出来るかもと思ったんです。それをいきなり成功させるなんて、思ってもみませんでした」
タロウならひと月も練習すれば、もしかしたら出来るかも知れないと思ってはいました。
それがまさか、初日でやってみせましたか。驚きですね。
「本当は寝てないんじゃないのか?」
「……え? ……自分じゃ寝た気がしてたんすけど、もしかして……」
「いえ、明け方に確認しました。いつもどおりにイビキかいて眠っていました。僕が保証します」
「よっしゃぁ! ナイスっすヴァンさん!」
「疑ってすまん」
『すまんでござる』
『スマン』
「ロボもプックルも疑ってたんかーい!」
僕も見てなかったら疑ってましたね、きっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます