TANAKA bounenn fes 2024

月詠

ヤマ無しオチ無し意味無し


 はぁ。何、田中大忘年会? 俺はそれにでろって?

 なぁに旦那、その忘年会に参加すりゃあいいだけでさあ。

 タイトル回収してんじゃねえかよ。なんなんだよ。なんで俺がそれに参加しなきゃいけねえんだよ。

 大体にして何の目的があってそれを開いているんだよ。

 そりゃあだってアンタが田中だからだろう。

 だからそれに理由があるのかっつってんだ。

 勝ちゃあ1年分の厄が祓えますぜ。

 よっしゃきた。フラれた分もガルバでボられた分もクソみたいな残業続きの分も仕事で昇進しなかった分も猫のクソ踏んづけた分も全部消えるってんだな。

 乗り気になるの早すぎやしないですかねえ旦那。



 田 中 大 忘 年 会 



「──田中拓郎、前へ」


 俺はある日黒尽くめの男に誘われた。田中大忘年会ドリームデスマッチサバイバル2024年忘れダービー。意味が分からない。だがそれに勝つことが出来れば今年受けた厄の全てを祓うことが出来ると、やけに渋いいい声で言われたものだから参加せざるを得なかった。

 いいか。これは参加せざるを得なかったというだけで、決して参加しようと思っていたとかそういうことではない。

 だから俺がこの東京ドームではなく、田中大ドームとやらに集められているのもおかしなことではないし、周りにいる奴ら全員の名字が田中であることも何一つおかしくはない。


「田中吉蔵、前へ」


 そして俺は順調に勝ち上がり決勝戦に進出していた。これを勝てば全ての厄が取り払われる。そう、その年に起きたこと全てを忘れることが出来るのだ。

 相手はネクタイをつけたハゲ散らかしたおっさんだった。アイロンもかけていないようなよれよれのスーツを身に纏いすいませんすいませんと何かに対して常に謝り続けているアワレで可哀想なおっさんだ。ステータスゲージの年収なんて見てみろ350万だ。対する俺は380万。勝っている。社会的地位はどっこいどっこいだが他の全てが勝っていれば俺の勝利であるのだ。


「審判、早く始めてくれよ。こんなヤツが相手じゃあ俺がすぐに勝っちまうからよ!」


 審判──田中アンドゥドロワを急かす。

 田中アンドゥドロワはスキンヘッドにサングラス。いかにもヤのつくお人のような出で立ちだが今この場においては何も関係はない。

 この戦いは俺が勝つ。何がどうなっても俺が勝者であるという事実にゆるぎはない。


 田中アンドゥドロワは両者がリングについたのを確認してから右手を振り上げた。

 さぁ試合内容を早く言え。審判が口を開いた。


「毛量対決ゥゥゥゥゥゥ~~~~!!!!」


 ぱ~~~~ぷぷぷぷ、どんどんどんどん。

 下手くそなラッパと適当に鳴らされる太鼓。


「決着ぅぅぅぅぅ~~~~!!!」


 ──勝者! 田中拓郎!

 ──よって田中大忘年会2024の勝者は田中拓郎に決定ィィィィ!!!


 一瞬でついた決着。相手がハゲ散らかしていたのが救いであった。

 田中吉蔵は崩れ落ちていた。そして泣き叫んでいた。


「私がここで負けたら詐欺られて取り返せなくなった1000000000000000000000000000円がああああああ!」


 カンマも打たれておらず適当に打ち込んだものなのだから何円であるかなんて分からないのだが、少なくともソイツの人生は来年終わりを迎えることだろう。

 だがそんなものは関係ない。俺が勝った以上は俺が商品を受け取るべきなのだ。


「さあドラ◯ンボールよ!!! 俺の今年の厄を全て忘れさせてくれええええ!」


 その願い、聞き届けた。


------


「何すんのよこのクソボケ!」


 ビンタされた。

 時計を見ると2024年の1月に戻っていた。

 確かこの時は俺が適当なガールズバーに足を運んで酔った勢いで嬢のケツを揉んだ時だった。


「あ、あ、あんまりだああああああ!」


 今年の厄を忘れるというのは、今年の厄を無かったことにしてあとは自分でなんとかしてねということだった。



おわり。

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TANAKA bounenn fes 2024 月詠 @tukuyomi07

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