第76話 大剣ナナミ13号

 

 ナナミさんの話によると、さっきついに王都の権蔵爺さんの店の建築が終わったらしい。

 まだ、売り出す武器や防具の量産やら、従業員の教育とか色々あるらしいのだが、権蔵爺さんのお店の建築にしか興味が無かったナナミさんは、帰って来てしまったらしい。


 というか、権蔵爺さん、武器や防具の量産まではできると思うけど、そもそも従業員の教育とか、店の経営とか出来るのか?


 権蔵爺さんも、ナナミさん同様、モノづくりにしか興味なさそうだし。


 俺が、とても、心配そうな顔をしてると、それに気付いたのか、サクラ姫が補足してくれる。


「従業員の教育とか店の経営とかは、マール王家の御用商人に頼んでいますから、その辺は抜かりありません。

 王自ら頼んでいますから、商人も権蔵お爺様を騙すとか、そういう事はしないでしょう。そんな事したら、マール王国で商売が出来なくなってしまいますからね!」


 どうやら、王様は抜かり無くやってたようである。

 まあ、権蔵爺さんが、あのマール王都の貧民街の掘っ立て小屋で商売してたの見た事ある人なら、権蔵爺さんが本当に客商売できるか心配になるもんね。


 多分、王様は、権蔵爺さんに武器作りや防具作りに専念させて、商売の方は、他の人に任せる感じで考えていたのだろう。


 一応、権蔵爺さんは社長としてドン!と構えて、経理と販売は他の人が担当する感じだと思う。


 安心した所で、俺達は、ナナミさんに、明日から塔のダンジョンの攻略を手伝ってくれないか聞いてみる。


「我が主の頼みなら喜んで!」


 なんか知らんが、ナナミさんは片膝付いて、快くOKしてくれた。

 本当に、片膝付くのにどんな意味が有るのか、理解不能である。後、珍しくテンション高いのも。


 でもって、次の日。


 ナナミさんによって、サクラ姫のレイピアと、アマンダさんのバスターソードが新調されていた。


 まさかの徹夜。

 塔のダンジョンに、今から潜るというのに。


 確かに、昨日、サクラ姫やアマンダさんが武器の話をしていた。

 63階層の強くて速い魔物だと、中々、経絡秘孔をレイピアで突くのは難しいとか、バーサーカー化が気になって、本気になれないとか、サクラ姫とアマンダさんは言っていたのだ。


 そして、驚いてる俺達を置いてけぼりにして、ナナミさんは勝手に説明を始める。


「このレイピアは、アダマンタイトミスリル製。強度と魔力も通りやすくしている。尚且つ、粘り気を持たせてるので、絶対に折れない。

 そして、経絡秘孔をピンポイントで突くのは難しいという事で、先端から毒を発射出来るようにした。持ち手の中に毒を生成する魔道具を組み込んだので、毒を一々補充する必要もない」


「エッ?! 毒が出るの? このレイピア」


 流石に、サクラ姫も毒と聞いて驚いてる。


「誤突きすると危ないから、神経毒を仕込んでいる。突かれると、5分間痺れて動けなくなる。

 これで、一々経絡秘孔を突かなくても、サクラは戦える」


 ナナミさんは、無い胸を張ってドヤ顔。


「私、もう足でまといじゃ無くなるんだ……」


 なんか、サクラ姫が涙目になっている。

 サクラ姫は、経絡秘孔突きを覚えて戦えるようになったのだが、如何せん、63階層では、全く敵に経絡秘孔を突かせてもらえなくて、ただの護衛対象に戻ってしまっていたのである。


「うん。やったね!」


 ナナミさんは、ニヤリと笑いサムズアップする。


 いつもクールなナナミさんは、たまにニヤリとするんだよね。

 本当に何を考えてるのか、全く分からない。


「うん! ありがとう! 本当にありがとう! ナナミさん!」


 ナナミさんは、全力で感謝されて困ってオロオロしてるし。

 ただ、サクラ姫の話を聞いて、思わず作っちゃっただけで、感謝して貰おうとか、これっぽっちも思ってなさそうだったし。


「なんか、このバスターソード、物凄く軽い!」


 アマンダさんが、ナナミさんが作ったバスターソードをブンブン素振りして、なんか言っている。


 ナナミさんは、サクラ姫との変な空気が耐えられなくなって、助かったとばかりに、アマンダさんの為に打ったバスターソードの説明をし出す。


「その、大剣ナナミ13号は、使い手にはとても軽く感じ、戦う相手にはとても重く感じるギミックを組んである。

 アマンダは、疲れるとバーサーカー化しちゃうので、それを軽減する為に作ってみた。試しに僕に攻撃してみて。棍棒で受止めるから」


 アマンダさんは、ナナミさんに言われてバスターソードでナナミさんに襲い掛かる。


 ガキィーーーーーン!!


 強烈な金属音が辺り一体に響き渡る。

 アマンダさんの攻撃、物凄く重そう。


「うん。十一文字金剛権蔵棍棒と打ち合っても刃こぼれ無し。フフフフフ、ついにお爺に並び立てた」


 ナナミさんの話によると、十一文字金剛権蔵棍棒と、ナナミさんがアマンダさんの為に打った大剣君ナナミ13号は、全く同じ素材の合金で打った武器であるらしい。

 そんでもって、今迄は、ナナミさんが打った武器より、権蔵爺さんが打った武器の方が強度が上だったけど、今日初めて強度が並んだとか。


 ナナミさんは、余っ程嬉しかったのか、ニヘラ顔して、何故か、十一文字金剛権蔵棍棒に頬ずりしてるし。

 ちょっと、狂気過ぎて怖いのだけど。


 それにしても、大剣ナナミ13号だっけ?

 相変わらず、ナナミさんの命名のセンスは、壊滅的であった。


 まあ、権蔵さんも自分の作った武器に、権蔵と名前を入れてるから、爺さんと孫で似ていると言えば、似ているのだけどね。


 ーーー


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