第75話 マブダチ
俺達、『銀のカスタネット』は、ついに、塔のダンジョンの最高到達記録である66階層に到達した。
これで、66階層のフロアーボスを倒して、67階層に登れば、俺達『銀のカスタネット』が、塔のダンジョンの最高到達記録を塗り替える事となるのだが。
「流石に、ここまで来ると大変だね」
アマンダさんが、柄にも無く弱気な事を言ってくる。
「確かに、盾役が居ないと辛いですね」
サクラ姫まで。
前回、マールダンジョンの最高到達記録を達成した時は、Lv.55のナナミさんが居た。
俺達は、どうやら、相当ナナミさんに助けられていたようである。
盾役なのに、棍棒しか持ってないナナミさんに……
というか、本当は魔法使いであるナナミさんに……
まあ、もっと言うと、盾役や魔法使いより、建築が得意なナナミさんに……
もっともっと言うと、建築よりもっとすごい、移転魔道具や、インベントリの魔法具を作れるナナミさんに……
俺達は、頼りきっていたのだ。
だって、66階層に来るのも、どこでも扉を使ってるし、魔法の収納袋。今はポーチ型に変わってる魔法の収納ポーチにより、手ぶらでダンジョンに来てるからね。
殆どは、ナナミさんのお陰だったりするのだ。
「ナナミさんが居ないだけで、これだけ大変だとは思わなかった……」
サクラ姫もアマンダさんも相当強くなってるのに、ナナミさんの理不尽な強さには、到底敵わないようだ。
だって、ナナミさんって、どんな敵でも棍棒でぶっ飛ばしちゃうし、土魔法で辺り一面ひっくり返しちゃうし、なんかよく分からないけど、一々スケールがデカいのである。
金級上位の実力というのは、やはり伊達ではない。
実際は、プラチナ級の実力かもしれない。
ただ、面倒臭いので、プラチナに昇格する試験を受けてないという線も、ナナミさんなら考えられる。
だって、冒険者の等級に拘ってなさそうだし。
冒険者をしてたのも、権蔵爺さんの素材集めを手伝ってただけっぽいし。
実際、マールダンジョンでは、ミスリルが採取できる32階層までしか行ってないと言ってたし。
まあ、兎に角、今の俺達には盾役が足りないのだ。
だって、俺も、アマンダさんも、サクラ姫も全員、アタッカーだからね。
接近戦の攻撃は出来るけど、相手が強くて抑えられないと、本当に辛いのだ。
アマンダさんが、大剣バスターソードで、少しは敵を抑え事が出来るけど、それだけ。
サクラ姫は、相手が強くて隙が無くなると、本当に無力になってしまう。
それに疲れて来ると、スピードが落ちてしまうし、そもそもサクラ姫は防御力とHPなんて雀の涙程しかないのだ。
63階層の魔物のマトモな攻撃を一撃でも受けたら即死するぐらいに。
そんな時、ナナミさんが居てくれたら、どんだけ楽か。
ナナミさんなら、一人で一手に魔物達を抑える事が出来るから、その間に休憩出来るし、ナナミさんの理不尽な棍棒攻撃により、吹っ飛ばされて隙が出来た魔物を、俺達が仕留める事だってできる。
「私達も、レベルが上がって大分強くなったと思ってましたけど、やはりナナミさんは偉大な方でした。
流石は、トトの第2夫人になる方です」
どうやら、サクラ姫の中で、ナナミさんは第2夫人であったようだ。
まあ、ナナミさんは準男爵の爵位を持ってる正真正銘の貴族だからね。
そうなるとアマンダさんは、庶民だから第3夫人という事となる訳ね。
本人も妾という立場が気に入ってるようだし。第3夫人でも、快く受け入れてくれそうだし。
俺の嫁候補達の立ち位置が分かった所だが……どうしよう。
このまま塔のダンジョンの攻略を進めるのは、どう考えても危ない。
俺とアマンダさんだけなら、突き進んじゃうかもしれないけど、サクラ姫も居るのだ。
サクラ姫も強くなったのだが、如何せん。防御力が超低過ぎる。
俺一人じゃ、確実にサクラ姫を守り切れないし、サクラ姫に構ってばかりだと、アマンダさんのHP管理が疎かになり、アマンダさんがバーサーカー化してしまうかもしれない。
そうなったら、俺達は完全に終わり。
魔物だけではなく、アマンダさんの相手までしなくてはいけなくなるし、それもサクラ姫を守りながら……
俺は、良く考えた結果、結論を下す。
「これは、取り敢えず、撤退するしかないな」
「私も、そう判断します」
「仕方がないよね!」
サクラ姫とアマンダさんも、俺の意見を受け入れてくれた。
サクラ姫もアマンダさんも、自分のウィークポイントをしっかり理解出来ているのだ。
だから、ずっと冒険者をしているアマンダさんは、まだ生きていると言えるけど。
ソロで活動してた時から、自分がバーサーカー化しないように、自分を自制して冒険者活動して来た、大人の冒険者なのである。
てな訳で、マールダンジョンの31階層にある『銀のカスタネット』のパーティーハウスに帰ったのだが、そこには、
「ウンウン。リカ子のご飯は、やっぱり美味しい」
食卓で、普通にナナミさんが継母のご飯を食べていたのである。
因みに、リカ子というのは継母の名前らしい。
なんか知らんけど、ナナミさんは継母と意気投合したみたい。どうやらナナミさんは、継母と同じ歳だったらしく、それで……
それで、継母の事を名前のリカ子と呼ぶ事にしたらしい。
しかも、継母は、ナナミさんのマブダチになったらしく、継母もナナミさんにだけには敬語を使わなくなってるし、本当に、この短期間で何が起こった?
ナナミさんって、昨日まで王都に建設中の権蔵爺さんのお店で寝泊まりしてた筈なのに……
本当に、ナナミさんの生態は不思議である。
まあ、それがナナミさんと言えるのだけど。
ーーー
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