第70話 継母の告白(6)
一度、リーナと一緒に家に帰った後、今迄の経緯を全て、夫、カスタネット準男爵に説明して、私は、夫に、トトのお母さんに専念する事を宣言した。
夫は、ただ一言。
「そうか」
それだけで、終わってしまった。
元々、子供達の世話と教育は、夫に任されている。
夫としては、私がトトの母親をする事は当たり前の事かもしれない。
夫にも言質を取ったので、私は、しっかり食事と睡眠を取り、次の日から、トトが住むというマールダンジョン31階層にある『銀のカスタネット』のパーティーハウスに居座ったのである。
勿論、リーナが頼んでくれたのか、実家のヨナンの部屋から牢屋部屋に繋がる、どこでも扉の1万マールは必要だが、牢屋部屋の牢屋の鍵は、顔認証?技術によってフリーパスになっていたのだ。
それにしても、『銀のカスタネット』のパーティーハウスは、物凄い。
丁度品も、誰が作ったのかセンスが良い高そうな物が飾られてるし、部屋も物凄く多い。
これは腕がなる。
カスタネット準男爵家では封印してた、私の『家事』スキルを活かす時が、ついに来たのである!
私は、これでもかと家事をこなす。
すると、嬉しい事に、『家事』スキルのレベルがグングン上がっていくのだ。
楽しい。家事楽しい。家事をすればするほど、派生スキルは増えるし、家事の出来る事が増していくのだ。
最初は、元々得意だった料理と掃除が上手になるだけのざっくりしたスキルだったのだが、料理は、焼物、煮物、揚物、盛り付け、包丁捌き、時短料理やら、次々と派生スキルが湧くし、掃除も、洗濯、掃き掃除、拭き掃除、整理整頓、ベットメイクやら、本当に料理や掃除だけでも細かく派生スキルが湧いちゃうのである。
「楽しい! 楽しい! 家事楽しい!」
もう、ここは天国としか思えない。
カスタネット準男爵家では、正妻という立場上、家事は全く出来なかったが、ここでは思う存分、大好きな家事が出来るのだ。
丁度良い事に、トトの婚約者さん達は、誰も家事とか出来そうにないし。
トトも、私の料理を美味しい、美味しいと食べてくれるし。
私は、なんて幸せなのだろう。
そして、ついに、その時が来た。
その日は、いつものように、楽しくパーティーハウスの掃除をしていたのだ。
そこに、塔のダンジョンというマール王国北側、バツーダ帝国の国境付近。
トランペット辺境伯領の近くのダンジョンで、トトは、サクラ姫とアマンダさんと3人で冒険に行き、虎の魔物からドロップしたという虎肉を、お土産で持って帰ってくれたのである。
「これ、お土産。半分は実家に持っていっていいよ。
残りは、そうだな、今日の晩御飯にしてくれると有難いな!」
こんな事言われたら、腕が鳴る。
私の『家事』スキルの実力を、今こそ見せつける時。
そして、トトに、お母さんと認められるのだ。
思わず、お母さん、ご飯美味しかったよ! と、言わせてみせるのである。
取り敢えず、2種類の煮込み料理を作る事にする。
男は、煮込み料理に弱いというし、これでトトを私に惚れさせるのだ。て、違った……トトは、私の可愛い息子だった。
誰もが大好き、虎肉カレーと、虎筋煮込み。
これは、少し時間がかってしまうので、今日の夕食には出せないが、それでも大丈夫!
やはり、肉は焼いてこそ、価値があるのである!
肉を焼くなんて、誰が焼いても同じ?
そんな事は無い。
私は、『家事』スキルの派生スキルの焼物スキルだけではなく、ステーキ焼きスキルと、ソーススキルも持っているのだ!
これで、トトの大好きステーキの焼き加減に焼き上げ、そして、究極のステーキソースで、トトを料理でメロメロにする作戦である。
私は手ぐすねを巻いて、煮込み料理を作りながらトトを待ってると、何も知らない獲物である、お風呂上がりの私の可愛いトトちゃんが、虎肉カレーと、虎筋煮込みの美味しそうな匂いにつられてやって来たのである。
もう、今の段階でもトトは、私の料理に完全に胃袋は奪われてるのだけど、今日で確実に決めてやるのである。
そして、私は渾身の出来のステーキを、トトに出したのだ。愛情たっぷり究極のステーキを。
トトは、既に、ステーキの美味しいそうな匂いにやられているようだ。
もう、顔が、美味いステーキが食べれるとニヤケてるし。
そして、ついに私のステーキを口に入れる。
「うん! 上手い! 焼き加減完璧!」
嬉しい。トトに料理を褒めらて感動してしまう。
当たり前だが、トトの口にあったようだ。
もっともっとトトに、私の料理を食べて貰いたい。
一口目は、デミグラスソースを味わって貰ったのだが、次はニンニクソースをステーキソースをかけるようである。
「うめぇーー! やっぱりステーキは、ニンニクだよ!」
本当に当たり前だが、男の子には、ニンニクソースの破壊力は絶大だった。
だけれども、私はこれだけでは終わらない。
最後は、渾身の出来である玉ねぎソース。
この玉ねぎソースは、派生スキルであるソーススキルのレベルを上げていったら、レシピが解放されたステーキソースである。
そのレシピには、ある異世界で、ミヤ〇ソースと、アサ〇マソースという神のステーキソースの良い所どりをした、神さえ唸らす至高のソースとレシピに書かれていた特別なソースなのである。
この特別なステーキソースで、トトの胃袋と、トトのハートまで全て奪っちゃうのだ。
ここまで来ると、私の妄想も爆発してしまう。
鉄板に、肉からこぼれ落ちたステーキソースが掛かると、ジュワ~と、香ばしい匂いが辺りを覆う。
トトは、ゆっくりと、玉ねぎソースが乗ったレア肉を口に運ぶ。
私は祈る気持ちで、トトの様子を伺う。
そして、余っ程、美味しかったのか、私と目があったトトが、思わず、ポロッ!と、言ったのである。
「
と、
トトが、初めて、私の事をお
今迄、あの……とか、その……としか、私の事を呼んでくれなかったのに。
私は、感動で思わずウルっとしてしまう。
「ハイ! トトさん。ありがとうございます!」
私は、とても嬉しくて、満面の笑みを浮かべて、トトにありがとうと言う。
初めて、トトが私にお母さんと言ってくれたのだ。
私は、ついに、トトの本当のお母さんになれたのだ。
あまりに嬉し過ぎて、少し涙が瞳からこぼれ落ちてしまう。
だけれども、多分、トトには気づかれていないだろう。
だって、母親が、息子に夕食を出して泣くことなんか普通ないから。
私は、トトの普通の……
違う、特別なお母さんになりたいのだ。
ーーー
継母の告白編終了。面白かったら、フォロー、☆☆☆押してね!
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