第49話 常闇の魔女

 

 パーティーハウスを建てる気満々のナナミさんには、建築するのを待ってて貰って、俺達は、取り敢えず、ダンジョン攻略を始める事とする。


 話によると、ナナミさんは、素材採取以外には興味はなく、32階層までしか行った事がないらしい。


 31階層の整備を請け負ったのも、自分が素材が取れる32階層に行きやすくする為に請け負ったのであって、決してボランティアで請け負った訳ではない。


 まあ、結局の所、32階層で活動してるのはナナミさんだけで、殆ど誰も32階層には来ないのらしいんだけど。


 ナナミさん以外の他のA級冒険者は、もっと稼げる階層に行くし、そもそも鋼材って重いんだよね。


 ナナミさんみたいなドワーフで力持ちや、魔法の収納袋を持ってないと、結構キツイみたい。


 しかも、帰りは、足元が揺れて不安定な吊り橋で帰らないといけないので、誰も好んで鋼材メインの冒険者をやらないのだとか。


 だから、鋼材採取のクエストはナナミさんの独壇場。


 冒険者ギルドに出された鋼材採取のクエストは、全てナナミさんが請け負っているらしい。


 しかも、請け負ったクエストしか受けないのだとか。


 因みに、一番儲かりそうなミスリル採取クエストは滅多に来ないみたい。


 そもそもの認識が、ミスリルって、ミスリルゴーレムを倒さないとドロップできないと誰もが思ってるのだ。


 ミスリルゴーレム倒すには、最低でも、A級の魔法使いが5人以上でパーティーを組んで倒すのが普通で、しかも、倒しても数量しかドロップ出来ないと思われてる。


 ナナミさんみたいに、ミスリルゴーレムを倒さないで採取するという荒技など、誰も思いつかないし、アダマンタイトの武器を持ってないと出来ない芸当。


 しかも、剣なんかでミスリルゴーレムで戦うのは邪道で、普通の冒険者は、そんな事絶対にしない。

 だって、剣でミスリルゴーレムと戦うと、アダマンタイト製の剣でも、たまに歯かけしちゃうからね。


 てな訳で、ナナミさんは、殆どのミスリルを権蔵爺さんにしか卸してない。

 売れば、もっと金持ちになれるのに。


 そんな事を考えながら歩いてたら、いつの間にか、32階層のフロアーボス部屋に到着してた。

 今回は、俺がミスリルゴーレムを倒す事にする。


「うおりゃぁぁぁーー!!」


 スパン!


 結構、気合入れて斬ってみたのだが、拍子抜けでアッサリ、真っ二つに斬れてしまった。

 A級冒険者の魔法使い、5人掛かりで倒す魔物の筈なのに。


『握手』スキルの派生スキル。剣を握ると剣豪になれてしまうスキル。スゴ!!

 というか、権蔵爺さんが打った、十一文字権蔵が凄いのか?


 兎に角、サクサクマールダンジョンを攻略して行き、難無く40階層まで攻略。

 結論。30階層から39階層までの旨みは、30階層と32階層にしか無いと分かった。


 30階層は高く売れる魔物素材が取れて、32階層は金属素材が取れる。

 他の階層は、う~んと言った感じ。

 何故、30階層に転移魔法陣が有ったのか分かった。


 殆どのA級冒険者は、30階層で狩りをするからね。


 そして、40階層なのだが、ここも30階層と同じく森の階層。ここでも30階層と同じく、動物なら哺乳類系の魔物が出てくるので狩場には最適みたい。


 結構、転移魔法陣がある階層って、考えられていて、冒険者に人気の階層にあるみたい。

 決して、30階層や40階層などキリが良い数字に転移魔法陣を設置した訳ではないのだ。


 俺的には全ての階層に転移魔法陣を設置すればいいじゃんとか思うのだけど、転移魔法陣を設置するのは、もの凄くお金が掛るらしい。

 しかも、そんな転移魔法陣を設置できるのは、常闇の魔女と言われてる大物一人のみ。


 そもそも常闇の魔女は、この国の人でないし、出張費もバカ高いのだ。

 暫くは、マールダンジョンに転移魔法陣が増える事は無いとの事。


 そんな感じで、俺達は、その常闇の魔女が設置した、40階層にある転移魔法陣を使って、1階層に戻ったのだった。


「おっととトト君。今日はここでお別れ。僕は32階層に戻り、家の増築がしたい」


 ナナミさんが、俺達と別れる事となった。

 まあ、それはしょうがない。

 ナナミさんは、モノ作りが好きそうだし、本当は、ダンジョン攻略よりも、早く家の増築がしたそうだったし。


「そうか。そう根詰めて作業するなよ!

 決して、徹夜とかはしないように!

 明日の攻略に差し支えるからな!」


「ウン。後、これ!」


 俺は、ナナミさんに、魔法の収納袋を手渡される。


「これって?」


「あげる」


「あげるって、コレ、めちゃんこ高いんだろ?!」


「簡単に作れるから問題ない」


「そういう問題じゃ……」


「大丈夫! サクラのと、アマンダのもあるから」


 ナナミさんは、もう2つ魔法の収納袋を取り出し、2人にもプレゼントしたのだった。


「本当にいいの?」


「これだけで、お貴族様の御屋敷が買えちゃうよ!」


 流石にこれには、一国のお姫様であるサクラ姫も、ただの一般人のアマンダさんも驚いている。


「家族なら当たり前」


 ナナミさんは、事も無げに言った。


 もう、こうなったら、ナナミさんも俺の奥さんにするしかない。


 権蔵爺さんには、5000万もする十一文字権蔵を貰ってるし、ナナミさんからは、値段が付けられない神級のアーティファクトである魔法の収納袋を貰ってしまったのだ。


 まあ、この2人は、自分達が気に入った人物に、自分が作った物をプレゼントしちゃうという悪癖があるのだが、流石にこんな高い物を貰ってしまったら、恩返ししたくなってしまうもの。


 俺はもう、ナナミさんに自分を捧げるしかないのである。


「ああ。家族だからな」


 俺は、ナナミさんの頭を軽くポンポンする。


「ウン」


 ナナミさんは、なんかとても嬉しそう。

 本当に、ナナミさんが、俺の顔が好みで良かった。


 じゃなければ、アタマ、ポンポンしただけでは満足して貰えなかったと思うしね。


 ーーー


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