第48話 パーティーハウス

 

 俺達『銀のカスタネット』は、マールダンジョンに入る大義名分を得て、これから堂々とマールダンジョンの攻略が出来るようになった。


 俺って、冒険者になったら、世界中を旅してみたいという夢もあったけど、ダンジョンを攻略してみたいという夢もあったんだよね。


 ダンジョン攻略って、冒険者の花形だし、殆どの名を上げてる冒険者って、ダンジョン攻略メインで活動してる冒険者ばかりだからね。


 しかも、マールダンジョンって攻略不可能なダンジョンって言われていて、まだ、何階層あるかも分からないダンジョンなのだ。


 マールダンジョンにも、所謂、攻略組と言われている冒険者パーティーがいて、今も切磋琢磨してマールダンジョンを日々攻略しているし。


「俺は、このマールダンジョンを攻略したい!」


 俺は、31階層にあるナナミさんの別宅で、自分の野望をパーティーメンバーに披露する。


「私は、トトの第一夫人として、トトの意見に従うよ!」


 俺の話をソファーに座って聞いていたサクラ姫が立ち上がり、宣言する。

 もう、完全に『銀のカスタネット』の副リーダーの地位を得てるようである。


「私も賛成! 冒険者パーティーに入れたなら、絶対にダンジョン攻略したかったんだよね! ほら、私ってすぐバーサーカー化しちゃうから、攻略組に入れて貰えなかったんだよね……

 私は、もっともっと強くなりたい野望もあるし、冒険者として高みを目指したいから、マールダンジョン攻略は大賛成!!」


 アマンダは見た目通り、イケイケだから賛成のようだ。基本闘争大好き、戦うの大好きだからね。


「僕も、我が主に従う。旦那に従うのは嫁の義務。それに、お爺が認めたおっととトト君が、その手で、何を成し遂げるのか見てみたい」


 ナナミさんは、相変わらず、俺の呼び名が定まらない。

 まあ、ナナミさんというか、権蔵爺さんの血筋は、一旦、自分の認めた人物に対して、トコトン甘いので、俺の意見を尊重してくれるのだろう。


「それじゃあ、取り敢えずの目標は、『ドラゴンズアイ』が持ってる55階層到達記録を抜く事ね!」


 アマンダさんが、取り敢えずの俺達『銀のカスタネット』の目標を設定する。

 というか、『ドラゴンズアイ』?マール冒険者ギルドで聞いた事ない冒険者パーティ名なんだけど。


「あの?アマンダ、『ドラゴンズアイ』って、マール冒険者ギルドに居る冒険者パーティーなのか?」


 俺は、物知りのアマンダさんに質問する。


「『ドラゴンズアイ』は、正真正銘、マール冒険者ギルドに所属する冒険者パーティーよ!

 だけれども、ダンジョン攻略をメインにやってるから、殆ど、マール冒険者ギルドには来ないわね。クエストを受ける訳じゃないから。基本、自分のとこのギルドハウスに居るんじゃないかな?」


「アッ! なるほど、確かにクエストを探しに来ないなら、マール冒険者ギルドに毎日行かなくてもいいのか。別にダンジョンでドロップした素材や魔石なんかは、冒険者ギルドに売らなくてもいい訳だし!」


「『ドラゴンズアイ』のような、この国トップの冒険者パーティーともなると、お抱えの商会と組んでて、『ドラゴンズアイ』がダンジョン下層からドロップしたお宝なんかは、全て、そのお抱え商会が買い取る仕組みね!」


「本当のトップオブトップともなると、互助会組織の冒険者ギルドも必要なくなるという事か……」


 俺は、思わず納得してしまう。


「我が主よ。『銀のカスタネット』も、『ドラゴンズアイ』のようなギルドハウスを作ろう!」


 突然、ナナミさんが話だした。

 しかも、何故か前のめりに。


「だけど、パーティーハウスと言っても、王都に家を建てるのは、絶対に王様が認めないと思うんだけど。絶対に城に帰って来いって言うと思うし」


「大丈夫!パーティーハウスは、ここに建てる!」


「ここに建てるって、31階層にか?」


「ウン!私が使ってるこの家を拡張して、みんなが住めるパーティーハウスにする!」


「ナナミさんが、建ててくれるという事?」


「ウン! 私はドワーフ! 建築には自信がある!」


 ナナミさんは無い胸を張る。

 まあ、31階層のこの本来なら危ない階層に、1人で立派な吊り橋を掛けちゃうくらいだし、ナナミさんの別宅も普通の家より豪華だし、そりゃあ、建てれちゃうよね……


「凄い! ナナミさん!」


「トト君との愛の巣が出来る訳ね!」


 サクラ姫とアマンダさんも乗り気だ。

 というか、最近、サクラ姫が、アマンダさんやナナミさんの事を、さん付けで呼ぶのが気になる。本妻としての自覚か何かか?


 そんな事は、取り敢えず置いといて、今は、パーティーハウスの話。


「だけど、もう土地が無いと思うんだけど?」


 そう、この31階層は、湖と巨木エリア。

 基本、フロアーボス部屋以外、地面が無いのである。


 ナナミさんの別宅も、フロアーボス部屋から出っ張る形で拡張してるぐらいだから、これ以上横に拡張するのは構造上無理だと思うし。


「2階建てにするから大丈夫! それに上には幾らでも拡張出来る!」


 まさか、フロアーボス部屋を二階建てにするとは。確かに、この31階層には空がある。

 普通のダンジョンエリアには天井があるから、絶対に二階建てになど出来ないのだが、ここでは可能なのだ。


 しかも、巨木がたくさん生えてるので、材料も無限にある。


「じゃあ、建てて貰えるか?」


 俺は、『銀のカスタネット』の団長として、ナナミさんにお願いする。


「承知!」


 どこからともなく、ノコギリとトンカチを取りだしたナナミさんは、何故か、ノコギリをペロリと舐めて、ニヤリと笑った。


 ーーー


 面白かったら、フォロー、☆☆☆押してね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る