第16話 剣の柄を握ると剣豪になれる派生スキル

 

「ヨッシャ! 来たーー!!」


 俺はレベルが上がったので、ステータスを確認して感極まる。


 名前: トト・カスタネット

 年齢: 13歳

 職業: カスタネット子爵

 スキル: 握手Lv.39(次のレベルに必要なスキルポイント10000)

 派生スキル: 腕相撲が強くなるスキル等、その他……

 新派生スキル: 剣の柄を握ると剣豪になれるスキル

 HP: 150

 MP: 220

 スキルポイント:0


 ついに来た。いつかは攻撃的な派生スキルが生えて来ると思ってたのだ。

 俺の握手スキルって、握手する動作をすると発動するスキルなんだよね。

 鉛筆を持つと速記出来るスキルをゲットした時点で、道具を手で持つと、その道のプロになる派生スキルが生えるのではと予想してたのだ。


 もう、こうなると、手相占いなんてやってられない。

 念願の攻撃スキルをゲットしたのだ。

 もう、剣が買いたくて堪らなくなってしまっている。


 剣が扱えたら、夢だった冒険者になれる。

 俺は、一度、攻撃スキルを得られなくて冒険者を諦めた過去があるのだ。

 過去と言っても数ヶ月前なのだけど。

 だけれども、諦めてた夢が、また、俺の眠ってた心をフツフツと煮えたぎさせるのである。


 やっぱり、俺は、手相占い師より、冒険者になりたい。金儲けは好きだけど、冒険者でも一流冒険者になれば、ガッポリ金は稼げるのである。


 だけれども、問題もある。俺は、王様の命令で王都から出れないのだ。


 くっそー!! 冒険したいぜ


 なんか、もの凄くモヤモヤする。

 何とかして、王都から出る方法は……

 考えても、何も頭に浮かばない。


 だって、王都を出た時点で、国家反逆罪で処刑されてしまうかもしれないし。

 というか、処刑はされないか……

 俺が処刑されたら、サクラ姫のHPとMPの供給が出来なくなって死んでしまうし。


 まあ、地下牢で監禁されてしまうのが正解だろう。

 現在、王都内では、ある程度自由が約束されてるが、折角、攻撃派生スキルを手に入れたのに、暗い地下牢で監禁なんて有り得ない。


 俺が、サクラ姫を護り切れるほど、強くなれば、サクラ姫と冒険の旅に出掛けられるかもしれないが、そんなの可能かどうかも分からないし。


 やはり、人を護りながらの冒険なんて限界があるのだ。だったら、サクラ姫を修行させて、強くなってもらう?

 お姫様を修行させるって……俺、何考えちゃってるのだろう。


 もう、幾ら考えても良い考えなんて思い付かない。


 取り敢えず、今やれる事をやろう。


 そう! 俺は剣を買いに行くのだ!


 俺は、とっとと手相占いを切り上げて、武器屋に向かう。


「トト! 何処に行くの?!」


 サクラ姫も、慌てて、俺の後を付いてくる。


「レベルが上がって、攻撃的な派生スキルを得たから、武器屋に向かう!」


「嘘! どんな?」


「聞いて驚け!剣を握ると、剣豪になれる派生スキルだ!」


 俺は、鼻高々に自慢しちゃう。

 貴族の子供として生まれた男子なら、攻撃スキルを得られて、やっと1人前と認められるからね。


「やっぱり、私の騎士様になったから派生したの?」


「ん? そうなのか?」


 俺は、ちょっとだけ気になり、立ち止まって、サクラ姫に聞く。


「だって、スキルって、その筋の学者先生の話によると、実は血筋じゃなくて、その人に合ったスキルが顕現されるんじゃないかという説もあるんだよ!」


 なるほど。だから、貴族の出身の家の者達は、攻撃的スキルを得られて、農民の子供は農民系の。商売人の子供は、商売に役立つスキルが得られるのか?それって、やっぱり血筋じゃないのか?


 だけれども、俺の場合は母親は庶民だったけど、一応、貴族の息子。やはり、攻撃スキルを得られなければおかしい。

 その人にあったスキルを得られるなら、やっぱり貴族の子息である俺は、攻撃スキルを得るべきだったのだ。


「アッ!」


 俺は、ある事に気付いてしまう。


 俺って、よく考えたら継母に井戸掘りばかりさせられてたんだよね。

 腕力も無い子供だったから、本当に井戸を掘るのが大変だったのだ。


 だから、スコップをもって穴を掘るにも、しっかり握れるように、握力欲しいと切に願ってた。一回り大きなスコップが軽々持てて、全く疲れなかったらどんなに穴掘り楽だろうと思ってた。


「それでか……」


 俺が切に願ってたから、『握手』スキルが、俺に与えられたのだ。


 井戸掘りしてる時、俺は、攻撃的なスキルより、穴掘りが楽になるスキルが欲しいと、強く、強く、願ってしまっていたのである。


 で、発現したのが、井戸掘り全般に役立つ『握手』スキルだったのだ。


 穴の底から、土がたくさん入ったロープで括ったバケツを地上に引き上げるのに必要な握力を強くしたり、どんなに井戸掘りしても疲れないように人からHPを奪えるスキルを得たり、それから、癒し手の能力も、井戸掘りでマメだらけになった手を癒す為に発現したのだ。


『握手』スキルって、元々、井戸掘り特化されたスキルだったのである。


 とすると、『握手』スキルが発現したのは、俺に井戸掘りを命令した継母のお陰?


 イヤイヤ、そんな事は絶対に認めない。

 継母の所業は、単なる俺への嫌がらせだし。

 俺も、全く、継母のお陰だと思ってないし。


 これもそれも、俺が真面目に井戸掘りし続けたから得られたスキルであって、今回、剣を握れば剣豪になれる派生スキルが得られたのも、俺が、サクラ姫を助けたからであって、その功績を認められたから、サクラ姫の騎士に任命されて、結果的に、攻撃的な派生スキルが生えたと考えられる。


 ようするに、全部、真面目で善人の俺のお陰だよね!


 まあ、何でも真面目に取り組めば、慈悲深い女神様も、ちゃんと見ててくれて、その人にあったスキルを与えてくれるという事だろう。


 今更ながら、真面目な性格で良かったと思うトトであった。


 努力が報われる世界って、最高だよね!


 まあ、その努力というのは、子供1人だけで井戸を掘るとか、並大抵の努力では無いのだけど。


 ーーー


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