第15話 役立つ養父
サクラ姫の叔母さんである、マール王立学園の学園長と話も済み、晴れて、ニコル兄をマール王立学園に入学させる為の算段がついた。
一応、俺の養父に当たるフルート侯爵に相談したら、俺の代わりに人をやって、ニコル兄を王都に連れて来てくれる事となった。
ほら、俺って、王都から出るなと、王様からキツく言われてるし。
だからと言って、ニコル兄に手紙を送ったとしても、ニコル兄が無事、王都に来れるとは思わなかったのだ。
だって、ニコル兄は俺と違って働いていないし、お金も殆ど持ってないからね。
荷馬車に乗るお金も持ってない貴族子息なんて、カスタネット準男爵家ぐらいじゃないかと本当に思う。
これもそれも、カスタネット準男爵家が、マール王国の中でも極端な、長男至上主義な家なのが関係してる。まあ、お金が無いから、長男だけにしかお金が掛けれないとも言えるけど。
だけどさ。ニコル兄は、一応、カスタネット準男爵家の次男だよ。長男のカークが何かあった時の保険。もうちょっと、大事に扱っても、俺としては良いんじゃないかと思うんだよね。
まあ、井戸掘りばかりさせられた俺なんかよりは、大事に扱ってもらってると思うけど。
ただ、何もさせて貰えないし、お金を掛けて育てられてない。服も全てカークのお古だし、ただのカークのスペアとして、カスタネット準男爵家に幽閉されてる感じ。
因みに、カスタネット準男爵での俺の服は、ニコル兄のお古だったりする。
もうこの時点で穴が空いてたり、継ぎ接ぎだらけ。裁縫も上手くなるというもの。
もしかしたら、小さい時から裁縫とかよくやってたから、手先が器用になり『握手』スキルが発現したのかもしれない。
スキルって、その人物の特徴がでるって話もあるくらいだし。
まあ、兎に角、ニコル兄がカスタネット準男爵から出るのは、俺以上に難しいのである。
だって、長男カークのスペアだから。きっと父親のカスタネット準男爵も、継母も許さないと思うしね。
なので俺は、カスタネット準男爵家より地位が高い、養父のフルート侯爵に依頼したのだ。
流石の、頭が固いカスタネット準男爵も、マール王国の宰相でもあるフルート侯爵に命令されたら、従うしかないからね。
俺に、養父なんて必要だったのか?とか、ずっと思ってたのだが、やはり、貴族社会は力ある後ろ盾って大事なんだな。と、改めて思った。
もしかしたら、これから継母とか、長男カークとかが、俺に、ちょっかい出して来るかもしれないけど、フルート侯爵の名前を出したら恐れ多くて、俺にちょっかいなど出せなくなると思うし。
そんな事もありつつ、ニコル兄のマール王立学園編入作戦も粗方終わったので、俺は、最初の計画の通り、王都で手相占いを始める事にしたのだ。
俺って、元貧乏貴族の三男だからなのか、お金を稼ぐのが好きなんだよね。
父親であるカスタネット準男爵なんか、貴族が下賎な商人のような真似事なんかするもんじゃないという考えの人だったんだけど、家を出て行く三男の俺に対しては、基本、ノータッチ。
俺って、小遣い貰ってなかったから、お金というものに憧れてたんだよね。
初めて、手相占いで稼いでお金を手にした時、どんなに嬉しかったか。それ以来、俺はお金を稼ぐ事が大好きになってしまったのだ。
やはり、お金は自分の手で稼いでこそ価値がある。
お貴族様のように、領地の税収だけで生活するのは、カスタネット準男爵家のように限界が来るし、栄えてる革新的な貴族って、実は殆どの家が商売してるしね!
うちの親父のカスタネット準男爵は、本当に古いタイプのお貴族様なのであった。バリバリの長男至上主義者だし。
「トト! 凄いの! お客さんが、たくさん並んでるの!」
いつものように一緒に行動してるサクラ姫が、驚いて興奮してる。
自由市場で、手相占いを始めたら、3日もしない内に有名になって、長蛇の列が出来上がってしまったのだ。
まあ、俺って、元々、王都でも噂になってたぐらいの手相占い師だし、占い好きの人って、良く当たる占い師が噂になると、すぐに占いしに来るんだよね。
カスタネット準男爵領まで、俺の手相占いしに通ってた人が、最近、自由市場で、よく当たると有名になり始めてた俺の所にも、手相占いしに来たんだよね。
「えっ! 何で、先生が王都に居るの?!」
まあ、そうなるよね。
その人が、カスタネット準男爵領の有名な手相占い師が、王都に来たって広めてくれたみたい。
そのせいで、今の状況になってしまっているのだ。
俺としては、金も稼げるし、握手して『握手』スキルのレベルも上がるからウホウホなんだけど。
「オッシャ! 来たーー!!」
そして、そんなウホウホな俺に、ついに求めに求めていた『握手』スキルの派生スキルが出現したのだ。
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