第11話 王都で商売
「成程、そうですか……確かに私も『握手』スキルの可能性は感じます。父と相談してみましょう」
クレア姫に相談すると、すぐさま王様に話してくれて、なんと、俺が城下町で商売をしても良いとの命令が下されたのだった。
本当に、案外、言ってみるものである。
但し、王都から絶対に出ない事。護衛をまかない事。そして、サクラ姫を絶対に連れて行く事。
ん?サクラ姫を外に出して危なくないのか?
それより、不測の事態に備えて、いつ何時もサクラ姫を俺から離さないようにしてるのか?
その辺の所はよく分からない。唯一分かるのは、クレア姫が正義の人だという事。クレア姫は嘘が嫌いで、曲がった事が大嫌いなのだ。
なので、サクラ姫の命を救った、俺に対して恩を仇で返すような事はしないと断言できる。相当、王様と掛け合ってくれたみたいだし。
だけれども、サクラ姫を溺愛してる王様も簡単には譲らない。
王様は、俺が消えて居なくなる事を恐れている。無理もない。俺が居なくなるとサクラ姫が死んじゃうしね。
いつなんどき、サクラ姫の容態が悪化して、不測の事態が起こるとも限らないのである。
実際、サクラ姫の呪いは解けてないので、俺が、何かの拍子で戻らない事を、とても恐れているのだ。
しかも、王様は、俺とサクラ姫が結婚するのを望んでる節がある。
俺を、子爵にしたのも、サクラ姫と地位が釣り合うようにする為の布石のように思われるし。
俺とサクラの間に子供が生まれれれば、俺が絶対にサクラ姫を見捨てないとでも思っているのであろう。
王様は、サクラ姫を溺愛してるので、サクラ姫が幸せになる事(長生きする事)を望んでいるのだ。
そして、サクラ姫の事を一番に考えると、俺とずっと一緒に暮らすのが一番と考え、サクラ姫と俺が結婚するよう仕向けているように思われる。
ようするに、サクラ姫の命より大事な物など無いという考え。王族としての体裁なんて関係無い。サクラ姫の幸せだけを考えてるのだ。
色々なしがらみをとっぱらって、とっとと、俺を子爵にしてしまったし、普通は、こんなに簡単に爵位を与える事など出来ないと思うし。
本当に、この国の王様というか、王族はどうかしている。
まあ、そんな話は置いといて、俺は、取り敢えず、下見として王都の城下町をぶらつく事にしてみた。
勿論、サクラ姫も付いてくるし、クレア姫まで付いてくる。
サクラ姫もクレア姫も、王族とバレないように、目立ち過ぎる王族の証である銀髪を、魔法で茶髪にして、庶民の服に着替えている。
2人とも、随分、アグレッシブな王族だ。
護衛も付かず離れず30人位は、変装して潜んでるように思われる。
まあ、王族2人がお忍びで町に遊びに出れば、これくらいは付いてくるよね。
俺は王都に連れて来られた時、ずっと馬車の中に閉じ込められてたので、王都の様子は何も知らない。というか、今回が初めての王都。
王都は、想像以上に大きく、準男爵家にある町の100倍は大きく感じる。
まあ、王都と準男爵のヘボい町を比べるのはどうかと思うけど、兎に角、高い建物も多い。
マール王国の王都は城塞都市で、城を中心に丸い城塞に覆われている。町の中心ほど地位が高い人が住み、城壁の端に行くほど貧乏人が住んでるといった感じ。
城を中心として、十時に大通りがあり、大通りの道沿いには、大棚の商店や宿屋が立ち並ぶ。
俺達は、ぶらり王都見学しながら、お目当ての自由市場の下見をする事にする。
「結構な人だな」
「ここは、1日の使用料を払えば誰でも商売できる広場になってます。因みに、1畳分の区画で500マール。2畳分なら1500マールになりますね!1番大きな区画は8畳分の区画で3万マールと割高になっちゃうのですが、その分、人通りが良い場所に振り分けられる感じです」
クレア姫が、俺の為に説明してくれる。
なるほど、金が無い人には安く場所を提供して、金が有る人には広くて好立地な場所を提供するという事ね。
話によると、好立地の敷地の殆どは、王都に支店のない地方に本店がある商店などが、常時借りてたりしているそうだ。
というか、人が商売してると、体がウズウズしてくる。
「あの……クレア姫じゃなくて、クレア、ちょっとだけ商売してみていいかな?」
俺は、町の中では防犯上、クレア姫と呼んではイケない事を思い出して、言い直す。
「勿論! どうぞ」
俺は、確認を取ると、すぐに自由市場の受付けに行って、一番安い500マールの敷地を借りる。
「なんか、思ったより人多いな」
自由市場の端の方なので人が少ないかと思ったが、案外、人でごった返していた。
近くの農村の人が、新鮮な野菜を安く売ってたりするので、それを目当てに人が集まってるようである。
でもって、割り与えられた敷地に着くと、どこからともなく親切な人が現れて、使って下さいとテーブルと椅子を置いていく。
まあ、本当は、親切な人というより、クレア姫とサクラ姫の護衛の人なのだが、使ってくれと言うなら、有り難く使っちゃうよね。
「トト様。ここで、手相占いを始めるのですね」
クレア姫が興味津々に、俺に尋ねてくる。
「う~ん……どうだろう。いきなり手相占いを始めても人が集まらないと思うので、腕相撲でもやってみるか!」
「腕相撲ですか?」
「うん。参加料500マールで、俺に買ったら1万マールあげる感じで!」
俺は、こんな事もあろうかと、持ってきていた紙に、スラスラと、
【腕相撲で勝ったら1万マール!参加料500マール!誰でも参加可!】
と、馴れた手つきで書き、テーブルのサイドの部分に張って、椅子を対面にセットして準備を始める。
「あの……申し訳ないですが……その、トト様は、あまり腕相撲が強そうには見えないのですが……」
クレア姫は、困惑の表情。
まあ、普通、そうなるよね。確かに、俺、腕相撲強そうになんか見えないし。
だけれども、俺には、『握手』スキルの派生スキルが有るのだ。
「まあ、見てなって。最終的には驚く結果になる筈だから!」
俺は、自信満々に、クレア姫に言い放ったのだった。
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