第9話 王様の強権
クレア姫と王様と王妃が、取り敢えず喜んだ後、暫くすると、サクラ姫が全く目を覚まさない事に痺れを切らしたクレア姫が、俺に詰め寄ってきた。
「トト様! サクラの病気は治ったのですよね?なのに、どうしてサクラは目を覚まさないのですか!」
何故に、俺は怒られているのだろう。
一言も、サクラ姫が治ったと言ってないのだけど。
「ええとですね。私は一言もサクラ姫の呪いが解けたとは言ってません」
俺は、強く否定しておく。
自分達が勝手に勘違いして喜んでいただけだと解らせとかないと、後で、何を言われるか解んないし。
「えっ?! サクラは呪いを掛けられたのですか?」
俺の口から呪いと聞いて、クレア姫は驚いている。
「ですね。サクラ姫は、バツーダ帝国宮廷魔術師ヨセフ・アッカマンに呪いを掛けられてます。
そして、その呪いを解くには、アッカマンを殺すか、女神が住んでいるという天空庭園に咲く、名も無き花の朝露から作りだした女神のエリクサーでのみ、サクラ姫の呪いは解呪されるとの事です」
「バツーダ帝国のアッカマンだと!」
王妃と二人で俺の話を聞いてた王様が、怒り心頭でブルブル震えている。
「貴方……」
王妃も、不安そうな顔をして、王様に寄り添っている。
まあ、そうなるよね。
隣国のバツーダ帝国が、今回の事件の黒幕だったのだ。
しかも、俺がもう少しサクラ姫の元に来るのが遅れてたら、サクラ姫は確実に死んでいたのである。
「バツーダ帝国……許せんぞ……」
王様、怖い。怒り過ぎて、なんかヤバいオーラが出てるし。顔も真っ赤にさせて!血管切れそうだし。
「それでは、サクラは、まだ呪いが解けてないから目を覚まさないという事ですか?」
クレア姫が、不安そうな顔をして、俺に聞いてくる。
というか、俺だって解んないんだけど。HPは回復させたから、普通は目を覚ますと思うんだけど。
アッ! そう言えばMPも少なかった気がする。もしかして、MP欠乏症で目を覚まさないのか?
「ちょっといいですか?」
俺は、クレア姫と王様と王妃様に断ってから、再びサクラ姫の手を握ってみる。
名前: サクラ・フォン・マール
年齢: 9歳
職業: マール王国次女
状態: 呪い極大 MP欠乏
HP: 35
MP: 0.4
ゲッ!ヤッパリ、MP欠乏って書いてある。
しかも、さっき見た時より、MPが減ってるし。
トトは、急いで、自分のMPをサクラ姫に分け与える。
すると、
少しだけ青白かったサクラ姫の血色が治り、そして、サクラ姫は目を覚ましたのであった。
良かった……
俺は、心の中で安堵する。
このまま目を覚まさなかったら、どうしようかと思ってたし。
「私は死んでしまったの?アナタは神様ですか?」
手を握ったままだったサクラ姫が、朦朧としてた意識が完全に回復したのか、俺に質問してくる。
というか、サクラ姫は、どうやら勘違いしているようだ。
無理もない、つい先程まで頬は削げ落ち、体も痩せて皮と骨だけになり、髪も抜け落ち、しかも魔力欠乏症で苦しんでいたのだ。
その苦しみが、綺麗サッパリ消えてたら、死んで天国に行ったと考えてもおかしくない事だ。
「いや違うよ。俺は神様なんかじゃない。ただの田舎貴族の三男坊さ!」
俺は、しっかりと否定しておく。
勘違いされて、変な噂が拡がってしまったら嫌だし。これ以上目立ってしまうと、本当にお偉いさんに拉致監禁されて、食い物にされてしまうかもしれないし。
「サクラ!」
サクラ姫が目が覚めたのに気付くと、再び、俺を押し退け、クレア姫と王様と王妃様が、サクラ姫のベッドに駆け寄り、「良かった」「良かった」と、涙を流す。
そして、再び、20分後。
やっとこさ、平静を取り戻したクレア姫と王様、そして王妃様が俺に感謝の言葉を掛けてきた。
「トト様が、アッカマンの呪いから、サクラを治してくれたんですね!」
「カスタネット準男爵家の三男トトよ。本当にありがとう。サクラの父として感謝をする」
「トトさん。本当にありがとうございます」
やはり、また、勘違いされている。
俺はただ、一時的に回復させただけで、アッカマンの呪いは解いていないのだ。
呪いを解くには、アッカマンを殺害するか、女神のエリクサーが必要と言ったのに。
「だから違いますから! 私は一時的に治しただけで、まだ、アッカマンの呪いは解けていないです!
再び、1ヶ月もしたら、また、今日と同じ状態に戻ってしまいますから!」
「そんな……」
クレア姫は、再び涙を流す。
「毎回勘違いされちゃうので、ちょっと、詳しく説明すると、アッカマンの呪いは、クレア姫から徐々にHPとMPを奪っていく呪いです。
そして、呪いなので、どうやら回復魔法やポーションの類は、呪いが弾いてしまい、治す事が出来ないようです」
「そしたら、どうやってトト様は、サクラを回復させたのですか?」
「ええと……これはあまり言いたくなかったのですが、私には、自分のHPやMPを他人に与える能力があるのです。それを使い、一時的にサクラ姫のHPとMPを少しだけ回復させただけなのです」
「トト様のHPとMPを分け与えて下さったのですか?!」
ちょっと、クレア姫が驚いている。
「どうやら私の『握手』スキルは、魔法でもポーションでも無いので、アッカマンの呪いを回避できたと考えられますね」
俺は、自分の考察を説明する。
「そうだったんですね!本当に、トト様! ありがとうございます!」
クレア姫が感動の面持ちで、両手で握手され感謝の気持ちを伝えてきた。
多分、俺のHPとMPを分け与えたという所に、感動してるようである。なんか、クレア姫って正義の人みたいだから、そういう無償の愛みたいなの好きっぽいから。
「成程のう。そしたら、1ヶ月でまたサクラが、今迄の状態に戻ってしまうとするなら、1週間に1回は、お主にサクラを回復して貰わないければならないという事じゃな」
王様が、俺の事を鋭い目をして凝視してる。
ちょっと、何これ……何か、嫌な予感がする。ヤッパリ、目立ち過ぎちゃった。
だけれども、俺が『握手』スキルの能力を最大限に使わなければ、サクラ姫は助からなかったので、仕方が無い事だったのだけど。
「カスタネット準男爵三男トトと言ったな。今日からお主は、城に住む事を命令する!」
ええぇぇぇぇぇーー! 嘘でしょ!
俺、城なんかに住みたくないんだけど。
やっと、金も稼げるようになって、カスタネット準男爵家から独立して自由になれると思ってたのに。
というか、コレって、所謂、軟禁と一緒の事だよね!
トトは、サクラ姫を助けてしまったせいで、一番恐れていた支配者による束縛。城での軟禁生活が確定してしまったのだった。
ーーー
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