第2話 スキル覚醒

 

『今日からたくさん握手しなきゃ! 』


 もう、トトは、居ても立っても居られない。人とたくさん握手して、レベルを上げて、もっと開示される情報を増やしたいのである。興奮するなってのが、無理な話。


 握手するだけで簡単にレベルが上がる『握手』スキルに、物凄い可能性を感じ、もう一度、何度も、何度も、無駄に御者と握手してみたのは、しょうが無い話。


 だけれども、同じ人と続けざまに握手しても、全くカウントに入らないと知るのは、そんなに時間が掛からない事だった。


 俺は、その日の内に、屋敷に居る女性以外の庭師やら、奉公人と握手しまくったからね。

 その数20人くらいだけど、100回以上握手したのに、レベルが上がらなかったから。


『何で、レベルが上がらない?もしかして、同じ人と握手してもカウントされないのか?』


 色々考察してみた結果。結局、握手は同じ人と握手されてもカウントされる。ただし、同じ人とは1日1回しか握手とカウントされないので、同じ人と、1日に何度も握手しても仕方が無い事が分かった。


 なので、毎日、握手してくれる使用人と毎日1回握手してから、街に繰り出し、知らない人達と握手しまくる生活を何日か続けた結果。

 俺は、握手スキルがLv.10になったのだ。


 その結果、名前、職業、年齢、スキル、種族、性別、趣味、嫌いなもの、好きな物、HPとかMPとかスキルポイントとかのステータスまで分かるようになった。


 もうコレって、完全にレアスキルの鑑定スキルだよね。まあ、普通の鑑定スキルと違って、手を握らないと全く分からないのだけど。


 だけれども、俺は、握手スキルの可能性を見出した。普通の戦闘スキルとかは、魔物を倒して経験値を得るとスキルが上がるのだが、俺の場合は人と握手するだけで、経験値というか、スキルポイントが上がる。


 因みに、自分のステータスを見る場合は、自分の右手と左手で握手すると見える事に気づいた。


 そしてコレが、俺の今のステータス。


 名前: トト・カスタネット

 年齢: 13歳

 職業: カスタネット準男爵家三男

 スキル: 握手Lv.10(次のレベルに必要なスキルポイント200)

 HP: 80

 MP: 120

 スキルポイント:114


「ウッヒョー! 俺、スゲー!!」


 こんなの見ると、興奮しちゃうよね。

 最初は、名前しか分からなかったのに。


 他にも、好きな物とか、趣味とかも見えるけど、そこは個人情報なので、内緒。


 握手するとスキルポイントが1つ上がる。

 それから、何回握手すればスキルポイントが貯まって、レベルアップ出来るかまで知れちゃうのだ。これは、普通の鑑定スキルでは無い機能。


 でもって、この握手スキルで開示されるステータスを利用して、商売できるかもしれないと思って、早速、商売を初める事にした。


 何だと思う。


 それは、手相占い。手相占いなら、自然に人と手が握れる。

 客が勝手に、俺と手を握りに来てくれるし、スキルポイントも稼げるし、お金も稼げるし、俺って、本当に頭がいい。


 実を言うと、最近、人と握手するのが辛くなってきてたのだ。

 毎日、同じ人に、「握手しよ!」とか、やってたので、カスタネット準男爵家の三男は、しょぼいスキルを得て、自暴自棄になり、ヤバい奴になってしまったと思われてそうだったし。

 俺が一応、街を統べる領主の息子だから、握手してくれてたけど、普通、同じ人と毎日、握手するものじゃないしね。


 でもって、路肩に椅子を持ってきて商売始めたら、すぐに、露天商のヤクザ屋さんが来て、みかじめ料を請求してきたのだが、

 何で、カスタネット準男爵領の領主の息子が、自分の父親が統治する街で、みかじめ料払わなきゃいけないのか聞いてみたら、ヤクザ屋さんは、「カスタネット家のお坊ちゃんでしたか。それはそれは」とか、何とか言って、直ぐに居なくなってしまった。


 その日ばかりは、本当に、カスタネット準男爵家の子供で良かったと思った。流石に、ヤクザ屋さんは怖いしね。


 一応、手相占いの値段は、高くもなく、安くもない1500マールに決めた。


 マールとは、この国、マール王国のお金の単位で、パンが一つで150マールする。

 簡単に言うと、パン10個分の値段で手相占いする感じ。


 最初はお試しとして、その辺のオバチャンを何人か捕まえて、タダで占いしてやったら、直ぐに、よく当たると評判になり、若い女の人なんかが、占いに来てくれるようになった。


 本当に、オバチャンの情報発信能力というか、噂話の効果は凄い。


 まあ、手相占いというより、握手して分かった名前やら、年齢やら、好きな事や嫌いな事など、完全に分かってる事も含めて、適当に相手の顔色を見つつ、どっちとも取れるような話を、相手に合わせて話してるだけなんだけど……女の子達は信じちゃうんだよね……


 毎日、少なくとも30人位は、手相占いするから、1日に4万5000マール位は、確実に稼げちゃう。


 ここまで来ると、俺はもう、庭の井戸なんか掘らないし、別に継母に、井戸掘らないからって、晩飯抜きにされたとしても気にしない。どうせ、成人したら出て行く家だし、外で外食すれば良いだけだしね。


 そんなこんなで、俺は、齢13歳にして、家に縛られない経済的自由を手に入れてしまった。


 スキル覚醒、ウッヒョー!だよね!


 ーーー


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