トップスター、ユキ

今、日本で一際輝く男性モデル。

もはやモデルという枠を飛び越え、タレント、俳優にまで手を広げている。

俳優としても評価され、あっという間に人気俳優の座を手に入れた。

日本中で知らない者はほとんどいないだろう。


おしゃれなパーマを当てられた黒髪。

計算されつくしたウェーブの前髪からは、妖美な瞳がのぞく。


薄い唇で言葉を紡ぐさまが、妙に色っぽい。


トーク番組に出た彼のアップばかりが放送され、世間の女性の思惑通りとなった。


そんな彼が、世間を大きく賑わせたいきなりの結婚記者会見。


結果的に彼の人気をさらに跳ね上げることになったその会見。

一途で素敵だと世の女性を伝説のように盛り上がらせた。


いつもきりっとした印象の彼が、その場では思い出すようにふわりと笑い、お茶の間の女性は釘づけになってテレビを見た。


相手の女性の全ての情報は謎。

ただ、彼と同じ高校だった事だけが明かされたが、彼が「僕だけの子なんで探さないで下さいね」とお願いすると、報道陣まで顔を赤らめる始末になった。


最後に聞かれた質問になぜか彼は困ったように笑って、返事をするのを一瞬ためらった。

その何でもない質問。


「ユキさんは、彼女になんて呼ばれてるんですか?」


「……恥ずかしいので、内緒です」



それだけで。



ただ、それだけで。


彼が彼女の全てを愛しているように聞こえた。



お願いだから、頼むから

【完】

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