長い片想いと両想い【完】

♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°

君と同じキャラメル色の髪が

幸せの形の気がして

仕方ない。

詩織

♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°


何度も角度を変えて重なる唇に、呼吸がしづらくなって口を少し開けて空気を取り込もうとする。

それなのに、その開いた口を割って、舌が口内を侵食する。


「んっ………んん……」


どうしても漏れてしまう声に、巧が片手を背中に、もう片手は私の顎を掴みながらキスを続ける。


「しお。好きだよ」


そう言いながら、巧の片手は背中を行ったり来たりしている。

一度唇を離されたと思ったら、体がふわっと浮いてベッドにまでさっと運ばれた。


「ごめん大事にしたい気持ちはあるんだけど、俺何年も我慢してきたからもういっぱいいっぱいかも」


そう言って、辛そうに私の顔を眺める巧の頬に手を這わす。

それをくすぐったそうに目を細めた巧は、私のおでこをゆるゆるとさする。


「巧ならいいよ」

「でも、しおが嫌なら何年待ってもいいんだ。止めるなら止めて」


それに緩く首を横に振ると、巧はぽすっと私の首元へ力が抜けたように倒れこんだ。

その体重の重みが嬉しくて、背中に手を回してピッタリとくっついた状態になる。


「……ううん。いいの。巧とこうなりたいってずっと思ってたから」


本当に思ってたの。

他の女の子と喋ってるのを見るたびに。

マルゴで横顔を見つめるたびに。

バイクで後ろに乗るたびに。


巧を見るたびにこの人が私のものになってくれたらいいのにって、泣きたいくらい思ってた。

巧が私の彼氏になってくれたら幸せになれるのにって、夢物語のように思ってた。

でも、それが叶ったらやっぱり思った通り幸せになれた。


こんなに焦がれる人は一生現れない。

私の目の前に今巧がいるのは、決して当たり前のことじゃない。

私は一生分の奇跡を巧に使ったの。

この先、一生じゃんけんに勝てなくてもいい。

宝くじに当たらなくてもいい。

運のいい事は1つもなくたっていい。

だって、それだけの運をきっと巧に使ったから。


「愛してるよ、巧」

「俺も詩織だけを愛してる」


そのまま、巧と甘い口づけを交わした。

静かな部屋には、私たちの息遣いと唇の合わさる音ばかりが聞こえてくる。

それに顔を赤くする私なんてお構いなしに、巧の手は私の首を滑って行く。


「しお。………詩織」


キスを交わす度に、何度も名前を呼ぶ巧。

それに応えるように、巧の顔を見るけど、間近で見る巧は本当に綺麗で。

どこにも無駄なものがない綺麗な美しい顔は間近で見る事ができない。


顔を逸らそうとする私の顎を捕まえて、逃がさないというようにキスを繰り返される。

服の上から胸に触れられて、体がビクンと揺れる。


「んぅ……あっ……やぁ……っ」


キスの合間にどうしても声が漏れる。

必死にこらえようとするけど、零れる声にまた羞恥が高まる。


「誰にも聞こえないから声出して。俺に聞かせて」


そう言われると、さらに恥ずかしくて声を抑えようとする私の気持ちを見抜いているのか、ブラのホックを器用に外して直に触ってくる。


「やっ……あっあっ……んんっ…」


さっきよりも大きな声が漏れたせいで、もう観念して巧に体を委ねる。


「しおちゃん」

「なにぃ?」

「着やせするタイプ?」

「えぇ? なに?」

「胸おっきいねって言ってんの」


顔がかぁっと赤くなるのを巧が見て、けらけらと笑う。

巧の肩をパシンと叩いて抵抗するけど、そこを念入りに愛撫されて力が入らない。


胸、お腹、足の指、背中。

体の至る所を、たっぷり時間をかけて愛されて、とろんとしながらも巧の行動についていった。

それでも、時折降ってくるキスを懸命に受け止める。


「しお可愛いよ。まじで可愛い」

「巧……ドキドキしてどうしよう。恥ずかしい」

「しおは綺麗だよ。隠さなくていいし、ずっと俺を見てて」


そう言いながら、胸を隠し続ける手を優しく剥がして、その手を巧の首に回させる。


上半身裸の巧は、細めなのに筋肉が綺麗についていて、腹筋の割れているその姿は彫刻のように綺麗。

腕も胸もお腹もきゅっと引き締まっていて、女の子と全く違う体が新鮮でじっと見てしまう。


「何じっと見てんの? あんまり見られたら恥ずかしいんだけど」


巧の顔を見ずに体ばっかり見ている私に、巧が文句を言ってくる。

それにハッとして巧の顔を見ると、バツの悪そうな顔で私を見ていた。


「あっごめん。そういうつもりじゃなくて……えっと巧がかっこよくて……つい」

「なにそれ。誘ってる?」

「え……? えぇ!? いや、そんなつもりじゃないよ?」

「ごめんごめんついからかっちゃった。でも、そろそろいい?」

「え?」

「早くしおが欲しい。俺にちょうだい……?」

「……うん」


甘く見つめてくる巧に、こくっと頷いて首に回している両手に力を込める。

顔を近づけてキスを繰り返しながら、膝を抱えられてとうとう入ってくるのが分かる。


「詩織愛してるよ。力抜いて、俺に任せて」

「う、……うん」


すごく痛いって聞くけど、巧に任せよう。

巧なら大丈夫。

痛くても、最大限私を大切に愛してくれるから。


「んんっ! ……あっあっ………あぁっ!!!!」

「……っん……」


巧が中にいるのが分かる。

それに涙が溢れてぽろぽろとこめかみに向かって流れだす。

巧が少し息を荒くさせながら、親指で優しく拭ってくれる。


「俺のものだから他の誰にも触らせないでね」


そんな事を囁きながら、もっと深く繋がろうとお互い体を寄せ合う。

抱き合うようにして重なった体は熱くて、巧のきつそうにしている顔に胸が鷲掴みにされてキュンと心臓が音を立てる。


「大好き、巧。大好き」

「俺も大好き、詩織」


そのまま深く長く愛し合った。

行為を終えて、2人で生まれたままの姿でベッドに横たわる。


「もし涼と春香が結婚したら、川崎家と柾木家が親戚になるわけじゃん」

「ん? そうだね。春香が私のお姉ちゃんになるんだよ?」

「そうだな。それで俺ら幼なじみ5人全員親戚になるんだな」

「え? あっ、そっか。巧と私たちは元々いとこだしね」

「不思議な感じだよな」


本当に不思議な感じ。

もしお兄ちゃんと春香が結婚したら、春香がお姉ちゃんになって、ナツくんがお兄ちゃんになる。

私には兄弟が増える。


「しおは俺の何になってくれんの?」

「え? お嫁さん………がいいな」

「じゃあ仕方ないからお嫁さんにしてあげるよ」

「仕方ないって何よ。もうっ」

「うそうそ。しお以外考えられないよ」


片想いの時は片想いでしか得られない幸せもあった。

手が触れるだけでドキドキしたり、その日に届いた何ともないメッセージを何度も見返したり。

そんな何ともない事が一日の大半を独占していて。

それはきっと片想いの幸せ。


甘酸っぱくて、愛しくて、辛くて、孤独で。

きっとみんな、そんな片想い。

両想いになって初めて知った一面に幸せを感じたり。

両想いになったらなったで、願望は尽きないし、辛いと思う事もきっとある。


でも、その分幸せもたくさん増えた。

諦めないでずっと想い続けてきて本当に良かったと思う。

どんなに努力しても、どんなに思い続けても、叶わない時もある。

どんなに好きでも、どんなに頑張っても、叶わない恋がきっとある。


でも、思い続けないと絶対に叶わない。

諦めちゃうと、叶ったかもしれないものも叶わなくなる。

何でも諦めない事が大切で、その先に待っているものが何なのかそれは状況によって違うけれど。


でも、それでも思い続ける事にきっと意味がある。

片想いにはきっと意味がある。

私はずっと巧を想い続けてきて良かったよ。


巧もそうだよね?


「ね?」

「ん?」

「んーん」

「えぇ?」

「ちゅっ」

「……っ」



【完】

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