恋の相談役ナオさん
♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°
こうなる事は
ずっと前から
知っていたんだ。
夏樹
♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°
ずっと私を小さい時から可愛がってくれて、たまに家に来て育ててくれた人。
今でもマンションで会えば喋ったりもする。
でも、何がすごいって見た目がすごいの。
パパと同い年だから、もう39歳なのにすっごくキュートでかっこよくて。
街中の色んな人からの注目の的なナオさん。
今では巧のパパの黒竜会の幹部をしながら、メタリックベアさんのデザイナーさんですごく有名な人なの。
本人は不本意らしいけど。
「詩織どうした? 何泣いてんの」
ナオさんが優しく聞いてくれる。
「えっと……ちょっと。ごめんなさい」
「俺に話してごらん」
ナオさんが甘い声で優しく言うから、こくっと頷いてしまう。
私にとったらお兄さん的存在で、いつだって絶対的味方の優しいナオさん。
「巧にね、キスされたの。ファーストキスだったの」
「うん。それで?」
さらさらと流れるように話すその声は、冷え切った心を溶かしていくような、ホッとした気持ちになる。
「悪いことしたって……。 そんなつもりじゃなかったって言われたの。すっごく嬉しかったのに……巧に後悔されて、悲しくて。大嫌いって言って逃げてきちゃったの」
私の手をぎゅっと握りながら、黙って聞いていたナオさんは、聞き終えた後私の頭をぽんぽんと叩くように撫でた。
男の人の中では背が割と低いナオさんだけど、背の低い私からは見上げる事になる。
「辛かったな。詩織はずっと巧が好きだもんな。状況はよく分かんないけど、どうせ詩織嬉しくて泣いちゃったんだろ? だから巧が悪いことしたって思ったんじゃない?」
「え?」
「1つだけ詩織に嬉しいこと言ってあげるよ。男が自分から無理やりキスするのは、好きじゃなかったらしないよ」
好きじゃなかったらしない?
でも、だって……。
「………………」
頭の中に色んな考えがぐるぐると回って、うまく言葉を出す事ができない。
「今のは俺の経験談だけどね。でも、どんな奴でもきっとそうだよ」
私の頭を撫でながら、頬を軽くつまんでみせると、儚げにふふっと笑ってみせた。
「そうなのかな……。巧が私を好きなんてありえない。叶わない恋してるって言ってたし……。でも、そうなるとあの時のキスは何だったんだろ」
いくらナオさんでもあまりにも信じがたい出来事すぎて、にわかに信じる事ができない。
「ははっ、まぁ悩むなら悩んだらいいけど、俺初恋は叶わなかったから、詩織にはうまくいってほしいんだよ。頑張れな、詩織」
あまりにも美貌の溢れた綺麗なナオさんに、微笑まれて思わず釣られてにこっとしてしまう。
「あの1つだけ聞いてもいい?」
「うん。何でも」
「ナオさんは、その無理やりキスした人の事すごく好きだったの?」
私が聞くと、困ったように笑ってしまった。
聞いちゃいけなかった?
でも、なんかそこで好きだったって言ってくれれば、少し自信を持てそうな気がして。
今からマルゴに戻る勇気が持てそうな気がして。
「好きだったよ、すごく。詩織に似てすっごく可愛い子。想いの形は変わったけど俺はその人の事が今でも大事だ」
そうなんだ……。
そんなに好きな人だったんだ。
じゃあ、少しは巧の事信じてみてもいいのかな。
何年も巧は私の事妹としか想ってないって思ってたし、最近叶わない恋をしてるって聞いたし、私に望みがあるとは思えない。
でも、もうこうなってしまった以上、告白する事で壊れるかもしれないと不安がっていた幼なじみという関係もすでに壊れそうだ。
どうせ壊れてしまうのなら、私は今伝えなきゃいけないのかもしれない。
この想いを消化してあげなきゃいけないのかもしれない。
今、ナオさんと会わせてくれたのもそうしろって言ってくれているのかな。
「ナオさん! ありがとう。あの……巧に今から会いに行ってきます」
決意したものも、どうしようもなく不安で、心が折れそうになる。
「そっか頑張れ。応援してるよ」
そう言って、ナオさんが鞄の中から、今大人気のメタリックベアの非売品をくれた。
ハートのクッションを抱えた可愛いメタリックベアの小さなぬいぐるみ。
ナオさんにありがとうとお礼を言って、階段を駆け降りた。
巧に私の気持ちを伝えなきゃ。
ナオさんが私の背中を強く押してくれた。
本当は玉砕覚悟で告白する勇気はないんだ。
そんな根性もないし、巧との幼なじみの関係に戻れたらいいのにとか思ってしまってるんだけど。
でも、やっぱりどうしようもないくらい巧が好きだから。
このまま、終わりたくないとは思う。
鈍感な巧に私の気持ちを見せて、今まで知らなかったでしょばーか!って言ってやりたいなんて少し馬鹿な事を思ったりもする。
私性格悪いかな。
だって、何だか巧が好きで、好きで、きっと振られたとしても好きだから。
だから、巧に気持ちを伝えるんだ。
勇気の出ない私に、その絶好のチャンスを、神様が用意してくれたのかもしれない。
私が好きって言ったら、なんて言うのかな。
困るのか、笑うのか、びっくりするのか。
ありがとうって言ってくれればいいな。
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