川崎兄妹以外の思い

♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°

クールな君が零す

慣れない甘い言葉は

耳を、心を、涙腺をくすぐる。

春香

♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°


「涼。俺からアドバイスあげるよ」

「あ? なんだよ」

「一日一回は愛してるって言ってあげると揉めないよ」


ナツくん……。

それは……。


「俺はお前みたいなのとは違うんだよ、ぼけ!」


ほら、やっぱり。

みんなで大声を出して笑い合う。

みんなそれぞれ、愛の形があっていいと思う。

お兄ちゃんたちは、ちゃんとお互い好き合ってる。


2人に近寄れなくて、ずっと立ちっぱなしだった私とナツくん。

ナツくんに手を引っ張られて、ソファに座る。

お兄ちゃんは春香の隣に移動して、2人がけのソファに2人ずつ座る状態になる。

コンビニのお菓子を食べながら、さっきとは違ってなごやかなムードになる。

やっぱり、お兄ちゃんは肉まんを食べてるし、春香はアイスを食べてる。


いきなり、ナツくんがぽつりと口を開いた。


「それにしても俺も、涼が詩織の事好きなんだろうって思ってた」

「あぁ!? お前もかよ! 兄妹だぞ!」


お兄ちゃんが素早く反応して、噛みかかって言っている。

うーんみんなそう思うほど、お兄ちゃん私にべったりに見えるのかなぁ。

意外に突き放すところあるし、すぐ馬鹿にするし、私置いて春香といなくなったりするし、そんな事ないのになぁ。


「多分、巧は今でもそう思ってるよ」


え?

ここで、巧が出てくる?


「巧も思ってるって、お前ら3人とも疑ってたのかよ。はぁ……俺意外にシスコンなのかな」

「「いやいや、意外じゃないから」」


わおっナツくんと春香が奇跡のハモリを見せる。

確かに、普通の兄妹よりは仲がいいと思うけど、巧まで誤解してたなんて。


「巧にも誤解だって言ってやらなきゃ。俺はとりあえず、詩織へのライバルが減って嬉しいけど」


ナツくんが私の顔をにっこり笑って見ながら話しかけてくる。


「おい、そこ。勝手に俺の大事な妹を口説いてんじゃねぇよ」

「シスコンは黙って」

「あぁ!? なんだ、ナツキ。喧嘩売ってんのか、こら」


それを見て、春香と私が大笑いするから、お兄ちゃんたちも釣られて笑いだす。


「詩織、今日も可愛いねー好きだよ」

「ありがとう、ナツくん。でもちょっと、恥ずかしいよ」

「そう?」


そんな様子を、お兄ちゃんが白い目で見ている。


「俺やっぱ、これはどう考えても無理だ……」

「えぇー1回くらい私も涼ちんに言われたいー!」

「……………10年くらい待て」

「10年って!! 遅すぎるよ!」


4人で冗談ばっか言い合って、わいわいやっていると、ガチャリと扉の開く音が聞こえた。

みんなで一斉に振り返ると、案の定巧がいた。


「なにこの和やか~な雰囲気。俺入っちゃまずい感じ?」

「うん。巧は帰っていいよ」

「ナツ兄は黙りなさい」


巧はナツくんにそんな事を言われていても、くすくす笑いながら普通に靴を脱いで上がってくる。


「巧、なんで来たんだよ。まだ18時だぞ」

「なんでって、お前とナツがいつになっても銀竜に来ないから迎えに来たんだよ、総長が直々に」


巧が呆れたような声で話しだす。


「あぁ、そういえば今日幹部会議だったか」

「ナツ忘れないで~」


巧が泣きまねをしながら、ナツくんをぽかんと小突いている。


「なんだ、春香。泣いたのか? 涼に泣かされたか?」


巧は、春香が泣いていたのに気付いたみたいで、赤くなってしまった目のふちをなぞるように親指でなぞると、その手をパシンとお兄ちゃんに払われた。


「びっくりした。涼どうしたの」


巧が、いきなりのお兄ちゃんのヤキモチ行動にびっくりした反応をしている。

いつもなら、そんな事しないもんねぇ。


「いや、今までは黙ってるのが男だと思ってたけど、行動で示さねぇと伝わんねぇから、黙ってるのはやめることにした」


お兄ちゃん今までこっそりヤキモチとか妬いてたんだね。

まぁ、巧のスキンシップは無意識に女の子を口説いてるようにも見えるから当然かもしれないけど。


「なにそれ。どういうこと?」


状況を掴めないのか、巧が動揺した様子を見せている。


「なんか、涼は詩織が好きなんじゃなくて、春香が大好きだったらしいよ」


ナツくんが巧をじっと見ながら、にこっと笑って告げる。

そっか、巧も勘違いしてたんだもんね。


「え? …………うそ」

「お前、うそ……って嘘じゃねぇよ。お前ら揃って馬鹿じゃねぇか? 兄妹だぞ?」


巧が手をだらんと垂らして、ぼーっとお兄ちゃんを見ている。

そんなに衝撃だったのかなぁ。


「え? え? 嘘だろ? 俺ずっと、涼はしおの事を女の子として好きなんだと思って来たんだけど」

「だから、違うって言ってんだろが。シスコンでもなんでも言え!」


巧が腑抜けたような顔で、誰を見ているのか分からない視線で、ただ立ちつくしている。


「………俺、帰るわ」

「え? 巧帰るの? せっかく来たんだからお話しようよっ」

「ごめん、しお。ちょっと用事思い出した」


用事なんてできてないくせに。

でも、一度言いだした巧は絶対に変わらないから、そのまま黙って巧を見送る。

ガシャンと音を立てて閉まった扉を、みんな無言で見つめた。


「どうしたんだろうね、巧」


春香も疑問に思っているみたいで、ぽつりと言葉を零す。


「さぁ? あいつ何考えてるか分かんねぇから、考えても無駄だ」


お兄ちゃんが呆れたように話しだし、普通にまた肉まんを食べ出した。


「涼。俺ら、そろそろ幹部会議行かなきゃやばくない? 巧に叱られるよ」

「ああ、そうだな。行くか」


ナツくんとお兄ちゃんが立ち上がって、準備をし出す。


「おい、お前ら。ここで大人しく遊んどけよ。9時になったらまた戻ってくるから」

「「はーい」」


お兄ちゃんとナツくんに手を振って、お見送りする。

2人はバイクのヘルメットを持って出て行ってしまって、春香と2人になった。

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