涼ちんのばかやろう
♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°
君がそんなに
傷付いていると知らずに
俺はどうしようもない。
涼
♡- - - - - - - - - - -ഒ˖°
学校は、その日一日中巧の話で持ちきりだったけど、クラスの子たちは私に普通に話しかけてくれるようになった。
きっと、芳川さんたちに圧力をかけられていたりしたんだろう。
それが嬉しくて、久しぶりに学校で本物の笑顔を作れた私は、春香とクラスの女の子たちと仲良く喋る事ができた。
放課後には、また当たり前のようにお兄ちゃんとナツくんが迎えに来てくれた。
お兄ちゃんとナツくんと毎日登下校していても、みんなから反感を買わないのはやっぱり私と春香のお兄ちゃんだからだろうなぁ。
そりゃお兄ちゃんと登下校しようが、ヤキモチは妬かれないかぁ。
巧はまた別だもんね。
幼なじみって位置はヤキモチは妬かれるのに、恋愛の対象にはなりにくい、厄介な位置だとつくづく思う。
それでも、それにもう文句を言っていても仕方ない。
兄弟と同じように、幼なじみも今更変える事のできないものなんだ。
そんな事を放課後に迎えにきたお兄ちゃんたちを見ながら、ぼーっと考える。
「詩織! 帰るぞ」
お兄ちゃんがいつも通り、私の机の前まで来て鞄を持ってくれる。
「うん。すぐ行く」
「お前今日は何もなかったか?」
「うん。大丈夫」
「昨日の事で風邪はひいてないのか」
「うん。ひいてない」
「今日はもう他の奴にいじめられなかったか」
「うん。いじめられてないよ」
「そうか。よし帰ろうな」
「うん。帰ろっ」
お兄ちゃんは過保護すぎる。
周りの人たちも少し唖然とした様子でお兄ちゃんを見ている。
普段はクールで、気を許さない人にはほとんど喋らないお兄ちゃんが、こんなに世話を焼くのは私だけだから。
今日は昨日の事もあって、余計に過保護になってるけど。
春香もナツくんも少し離れたところから私たちの様子をじっと見ていた。
「詩織、今日は大丈夫だった?」
ナツくんにも同じことを聞かれる。
それに何度も大丈夫だったよと告げて、4人で一緒に帰る。
いつも通り、2人組み2列の隊形は崩さない。
「涼ちん。今日、体育でバレーしたんだよーもう私大活躍!」
春香がお兄ちゃんと前を歩きながら、話しかけている。
「バレーしたのか。春香は運動神経いいからなぁ」
「でしょー私アタッカーだったしねぇ。涼ちんは……」
「おい! 詩織。お前突き指とかしなかったのか?」
お兄ちゃんが春香との会話で思い出したように、私に振り返って聞いてくる。
今、春香と話してたんだから、わざわざ心配してくれなくてもいいのに。
「うん大丈夫だったよ」
「そうか、お前鈍くさいからな。で、春香何か言ったか」
お兄ちゃんが私から目を離して、春香に視線を戻して話の続きを促す。
「もういいよ」
「そうか」
お兄ちゃんと春香ってどうなんだろう。
あんまり、ラブラブ~! って雰囲気はないよね。
まぁ、春香はお兄ちゃんに割とべったりだけど、お兄ちゃんはどっちっていうとドライな人だし。
あの感じでうまくいってるなら、いいんだけど。
ナツくんとコンビニに寄って、お菓子を買ってからマルゴに着く。
いつもコンビニに寄って買いだしをするのは私とナツくんだけで、お兄ちゃんと春香はいつも先にマルゴに戻っている。
2人はお菓子とかにあんまり執着ないからなぁ。
マルゴでの甘党は私だけだし、ナツくんはいつもそれに付き合ってくれてるけど。
「ナツくんは今日は銀竜行くの?」
「うん一応顔出しとくよ。多分巧もいるだろうしね」
「そっかぁ。巧にまたお礼言わなきゃなぁ。てか、巧って銀竜の時はあんな感じなの?」
「あんな感じって? 俺見てないけど」
「もういいから。教室まで見に来てたの見たもん」
「あっバレてた? 詩織が心配すぎてね。巧はいつもドライだけど、抗争の時なんかは鬼のようだよ」
「へぇーそんなの初めて知ったぁ。巧に聞いても教えてくれないし」
「巧はいつも楽しむように喧嘩してるよ。この辺でも銀竜の川崎巧って言ったらそりゃもう敵に回したくない存在だよ」
「えぇー……想像つかないなぁ。ナツくんも喧嘩なんてするのぉ?」
「ん? するよー。でも、俺は巧ほどは強くないけどねぇ」
ナツくんと話しながら、マルゴにたどりつく。
鍵のかかっていない扉を開いてくれるナツくんにありがとうと言って、中に入る。
「涼ちんのばか!!!!!」
「あ? 何機嫌損ねてんだよ」
春香とお兄ちゃんなんかもめてる?
しかも、春香泣いてる?
「え? 春香!? どうしたの?」
泣いている春香に、ただ事じゃないと思い駆け寄って行く。
ナツくんはただ、たらたらと後ろから着いてくるだけで何も言葉を出そうとしない。
それなのに、私の手を後ろから掴んで春香の元に行かせてくれない。
「なに!? ナツくん」
ナツくんを振り返って、文句を言う。
「今行っちゃだめ」
ナツくんがあまりにも真剣な顔で言うから、それにこくっと頷いて春香とお兄ちゃんを見守る。
2人は向かい合ってソファに座っていて、春香が泣いているのをお兄ちゃんがなだめるように頭を撫でている。
「どうした春香」
「いつもいつもいつも! 詩織ばっか!! もう疲れた……。本当は詩織の事が好きなんでしょ!! 何度聞いても、妹だからそんなわけないって言うけど、本当は女の子として好きなくせに!!」
春香がキッとお兄ちゃんを睨んで、泣きながら怒鳴りつける。
え? え? え?
春香が話した内容についていけない。
ナツくんはさっき私の掴んだ手をさらにぎゅっと握りしめて、私を少しナツくんのそばに引き寄せる。
きっと、心配してくれているんだろう。
お兄ちゃんが私を好き?
好きって恋愛の意味でって事?
本当の兄妹なのに?
そんなの……そんなの……ありえるはずないじゃない。
私たち、兄妹なんだよ?
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