第11話 バッドエンドに直行中?
なに?
やばいやばい。情報量が多いよ。
愛の力で、呪われた龍から世界を救うって、いきなりそんなファンタジーな設定ぶちまけられても、自分みたいな常識人には理解が追いつかないよ。
あ、そういえば自分、異世界転移者の言語を理解する異世界転生者なんていうファンタジー存在だったわ。
日常が地味すぎて実感なかった。
失敬、失敬……じゃなくて!
えー? これってかなりやばい状況じゃないか?
リナちゃんが、王道ニチアサ女児向けヒロインみたいなきっかけで、この世界の女神様とやらに引っ掛けられて、ここに来たのは知っていたけど。それ、こっちの男とくっつけなんていう命令も込みだったの? それはあかんでしょ。
イケメンに囲まれて、乙女ゲームみたいなことになってるなぁとは思っていたけど、そういうゲームは自由意志でやるから楽しめるんだよ。
世界まるごとの命運なんていう沢山の人のリアルな生活を背負った強制恋愛って、政略結婚も真っ青な崖っぷち指令じゃん。無理、無理、無理。
中学生の女の子にやらせちゃダメ。
しかも何? リナちゃん、君、ハリウッドスターはカッコいいと思えない系なの? ああ、洋画見ないから馴染みがないのか。そっかあ。
顔が濃いのも、体毛が濃いのも、体臭が濃いのも嫌だって、さっきから勢いで物凄い扱き下ろし方してるけど、ソレあの楚々とした銀髪の神官さんとかも?
え? 夕方に会うと伸びた髭でアゴが白っぽくなってる? そ、そうなんだ……。
でも、この世界、深ゾリの二枚刃とかないし、男ってそういう生き物だから。腕毛とか胸毛とか腹毛とか指毛とかも、そりゃあ少女漫画じゃないので、あるよ。この世界の人って、西洋系人種に近いから平均的な日本人より体毛も体臭も濃いめなんだよね。
お風呂文化が違うから余計に気になるのかも。体臭に関する感覚が違うというか、日本人ほど清潔志向じゃないというか。上流貴族は男でも香水つけるし。
うーん。中学生ぐらいだと”男臭い”のって苦手な子が多そうだもんな。生理的にダメな相手と恋愛は、それは無理だ。キラキラの王子様が”臭い男”に分類されている時点でアウトだ。
とすると、なにか?
呪われた龍とやらに打つ手なし?
ミッションアンコンプリートでバッドエンド?
嘘やん!!
そんな胸にすがりついて泣かれても、どーせーっちゅうねん。
あ、臭くないかな? 騎士団に作ったシャワーに毎日タダで入る権利は確保しているから、自分では清潔にしているつもりなんだけど。
何も言われないところを見るとセーフ?
『あなたが一番いい』
えええええ?! それはアウト!
たしかに、嫌な男どもは全員ポイしなさいと言ったけどさ。あ、他の男避けの安牌な盾になってってことかな?
だとしたら自分はめーいっぱい不適切な人選だよ! 権力も武力も、力と称するものはことごとく無いから役に立たないって。
「(私はあなたを)選ぶ」
すがりついたまま、こちらの目を見てそう言ったリナちゃんの発音も活用形も正しかったけれど、それは正しくない選択だ。そっと両肩に手を置いて一歩身を引いてから、両手の人差し指を交差させて、小さなバッテンを作る。
「(あなたは私を)選べない」
だって、明らかに女神様が用意した候補じゃないから。
「私とは無理だよ。わかるよね」
それに、たとえ無理を押したとしても、私とでは世界は救えないから、絶対にお別れさせられる未来しかないじゃないか。それはつら過ぎる。
「どうすればいいの」
「どうしていいかわからない」
強い風がどうっと吹いて、滝の飛沫が舞い上がり、脇の松明の火が大きく揺らいだ。
「ならば我が妻になるか? 異界の娘よ」
現れたのは、黒尽くめの服装の黒髪の男だったが、明らかに人外の雰囲気だった。
なんか妙なのキタ?!
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