第8話 一歩を踏み出す勇気
夢を見つけた彼女にとって、それは希望であると同時に新たな挑戦でもあった。「誰かの力になりたい」という想いを抱きながらも、どうすればその夢に近づけるのか、彼女にはまだ明確な答えが見えていなかった。
そんな中で迎えたのが、中学校最後の進路相談だった。担任の先生に「将来の夢」を問われたとき、彼女は緊張しながらも正直に答えた。
「私は、同じようにチック症やいじめで悩んでいる人たちを助けたいんです。」
先生は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔でこう言った。
「それは素晴らしい夢だね。でも、そのためにはたくさんのことを学ぶ必要があるよ。」
先生の言葉に彼女は少し緊張したが、「学ぶ」という言葉に不思議と心が動いた。これまでの彼女は、自分を守るために縮こまるばかりで、「学ぶ」ことを楽しんだ経験がほとんどなかった。それでも、「誰かの力になるためなら、やってみたい」と思えたのだ。
進路を考える中で、彼女はカウンセラーや福祉の道に進むには専門的な知識が必要であることを知った。そこで、地域にある福祉系の高校への進学を目指すことに決めた。
その決断には大きな勇気が必要だった。新しい学校、新しい環境、そしてまた新しい人間関係を築かなければならない。彼女は不安に押しつぶされそうになりながらも、自分にこう言い聞かせた。
「これも一歩を踏み出すための試練なんだ。」
入学試験の日、彼女は朝から緊張で声が震えていた。面接中に思わず声が漏れる場面もあったが、それでも一生懸命に言葉を紡いだ。
「私は、自分の経験を活かして、誰かの役に立てる人になりたいです。」
結果は合格だった。彼女は喜びとともに、これから始まる新しい挑戦に胸を高鳴らせた。そして、入学式の日、真新しい制服を着た彼女は心の中でこうつぶやいた。
「私はここから変わる。私の経験が、誰かの未来を照らす力になる。」
それは、彼女が自分自身を受け入れ、前に進むための大きな一歩だった。
※次回、第9話では、新しい環境で彼女が直面する新たな課題と、それを乗り越える過程を描きます。
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