第7話 新しい夢の始まり
彼女がチック症を受け入れ、共感という力を学び始めた頃、心の中に一つの小さな「夢」が生まれ始めた。それは、同じように苦しんでいる誰かの力になりたいという願いだった。
きっかけは、保健室で出会った1人の後輩だった。彼女が昼休みに保健室で休んでいたとき、泣きながら入ってきた小柄な女の子がいた。先生が「少しここで休んでいきなさい」と促すと、彼女は隅のベッドに座り込んだ。
気になった彼女が声をかけると、その女の子は小さな声でこう話した。
「私、クラスで全然うまくいかなくて……。みんなと違うって言われるのが怖いんです。」
その言葉に彼女はかつての自分を思い出した。誰にも打ち明けられず、一人で苦しんでいたあの頃の自分。それが、目の前に座っているこの女の子の姿と重なった。
「私もね、ずっとそうだったよ。」
彼女はそう言って、自分のチック症のことや、周囲との関係に苦しんできた日々について話した。最初は泣いていたその子も、少しずつ涙をぬぐい、話を聞き始めた。
「でもね、私はそれを受け入れることで楽になったんだ。みんなと違っていい。それが私なんだから。」
その言葉に、女の子は初めて小さく微笑んだ。そして、「ありがとう」とつぶやいた。
その瞬間、彼女ははっきりと感じた。「自分が経験した苦しみは、無駄ではなかった」と。誰かの支えになれることで、自分が少しずつ前に進める感覚を覚えたのだ。
それから彼女は、自分の将来について考え始めた。学校を卒業した後、同じようにチック症やいじめに悩む子どもたちの力になれる仕事をしたいと考えるようになった。「カウンセラー」「福祉の仕事」「教師」など、具体的な道はまだ決まっていなかったが、自分の経験を活かして誰かの助けになりたいという気持ちが彼女の中で強く育っていった。
学校では少しずつ「夢を持つこと」について話し合う機会が増えていた。周りの子たちが「プロ野球選手になりたい」「デザイナーになりたい」と話す中で、彼女も小さな声でこう言った。
「私は、誰かの力になれる人になりたい。」
その言葉に教室は少し静まり返ったが、隣に座っていた転校生の男の子がニコッと笑ってこう言った。
「それ、すごくいい夢だね。」
彼女はその言葉に背中を押されるような気持ちになった。そして、その日から「夢を持つ」ということが、彼女の新しい力になった。
※次回、第8話では、彼女がその夢に向かって一歩を踏み出す過程を描きます。
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