第2話 佑奈の正体

 佑奈ゆうなを昇降口から連れ出すことに、なんとか成功した僕。そうして僕たちは校舎裏へと来ていた。


佑奈ゆうな、とりあえず聞きたいんだけど・・・。って、なに?」


「・・・あのね、しょうくん。実はワタシ、霊能力者なの」


 霊能力? 突然なにを言い出すのだろうか・・・。


「このチカラは、世界を守るために必要なの。だからしょうくんとは、ヤりまくれないの!」


 いや、別に、僕はヤりまくるつもりは───、なくはないか・・・。いやいや、そうじゃなくて!


「霊能力者って、どういうこと!? それに、世界を守るって───」


「ワタシは、悪の組織と戦ってるの!」


 悪の組織? なんだか色々な単語が出てくるな。


「悪の組織は、とても恐ろしいの。世界を征服して、制服社会を作ろうとしてるのよ!」


 制服社会? なに、それ?


「世界が制服社会になると、老若にゃん・・・。老なく・・・。老若にゃんの・・・。老らく・・・。───ふぅ・・・。老人も、子供も、男性も、女性も、みんなみんな、制服しか着られなくなるの!」


 老若男女って、言えなかったのか。可愛いな。


「そんな社会、イヤだよね? 寝るときも、お風呂に入るときも、制服を着てなくちゃいけないんだよ?」


 まぁ、イヤだけど・・・。そんなことをして、悪の組織になんのメリットが?


「ワタシはイヤ! 制服プレイしか出来ないなんて、そんなのイヤだよ!」


 ・・・佑奈ゆうなは制服プレイがキライなのか、覚えておこう。


「あ、勘違いしないでね! 制服プレイはしてみたいけど、それだけになるのがイヤなだけだから!」


 なるほど、そういうことか。


「ワタシは、しょうくんの生まれたままの姿が見たいの! あんなトコやそんなトコをジックリと舐め回すように見たいの! なんなら、舐め回したいの!」


 あ、そう・・・。


「・・・ってことだから、ワタシはチカラを失うワケにはいかないの!」


 いやいや、今の話の流れだと・・・、僕を丸裸にしたいから悪の組織と戦ってる───ってことになるけど・・・。それでイイのか?


「だから、しょうくんとは、お別れ・・・なの」


 俯いて、両手で顔を覆った佑奈ゆうな。話の内容はチンプンカンプンだが、とにかく落ち込んでいるようだ。そんな彼女のことを、僕は精一杯、慰める。


「別れる必要なんて、ない! 体が繋がらなくても、心が繋がっていれば───」


「だから、それだと我慢できないの! ワタシはしょうくんと、ヤりまくりたいんだから!」


 あ、そういえば、そんなことを言ってたな・・・。


「じゃ、じゃあ! 悪の組織のことは、警察とか、自衛隊とか、国連とかに任せて───」


「それは無理だよ! このことは───チカラとか、霊能力とか、悪の組織とか、制服社会のことは、公言しちゃいけないことになってるから!」


「・・・え? そうなの? でも僕、聞いちゃったけど・・・?」


「うん・・・。だから近いうちに、ウチの一族の誰かが・・・、しょうくんのことを、殺しに来ると思う」


 なんですとぉ!?


「え? え? 僕、どうしたら・・・」


「大丈夫だよ、しょうくん。今の話はウチの一族なら知ってることだから・・・」


 いやいや。でも僕は佑奈ゆうなの一族じゃないんだけど・・・。


「だから、ね・・・。しょうくん、ウチに婿入り、しない?」


 え? そ、それって・・・、プロポーズ!?


しょうくんがウチに婿入りすれば、殺されることはないから」


佑奈ゆうな・・・」


しょうくん・・・」


 そして僕たちは見つめ合い、唇を・・・。


 いやいや、ちょっと待て。


「あのさ、佑奈ゆうな。僕たち、別れなきゃいけないんじゃ?」


「うん、そうだけど。でもね、しょうくんは【婚約者(仮)】ってことになるから。ワタシが悪の組織を倒したら、そのときは結婚、しよ?」


「うん。・・・あれ? それって、いつ?」


「十年後くらい、かな?」


「そんなに待てないよ!」


「どうして!? ワタシのこと、好きじゃないの!?」


 好きだよ、好きに決まってるよ。だけど・・・。


「十年後くらい───ってことは、そのとき僕たちは二十五歳くらいだよね?」


「うん。そうだけど・・・」


「だったら、さぁ・・・。その歳になって・・・、い、今の制服を着るのは、ちょっとキツくないかな?」


「今の制服? それって、もしかして、この制服のこと?」


 佑奈ゆうなは自身が着ている制服を触りつつ、僕の目をジッと見る。


「う、うん・・・」


「この制服で、したいの?」


「えっと、その・・・」


「大丈夫だよ! ワタシ、今のスタイルを維持するから!」


 いや、体型の話じゃなくて・・・。


「あ! もしかして・・・、年齢的に?」


「うん・・・」


 流石に二十五歳くらいで高校の制服を着て、というのは、中々にキツいと思う。だから僕は、高校生のうちに制服プレイをしたいのだ。


「そんなに、この制服でしたいの?」


「それは、まぁ・・・」


「ハッ! も、もしかして・・・。しょうくん・・・、悪の組織の一員なの!?」


 どうして、そうなるの?


「そうか、そうなのね・・・。真っ向勝負では勝てないからって、悪の組織は色仕掛けで挑んできたのね・・・」


 いやいや、違うよ? 僕は悪の組織じゃないよ?


「そんな・・・。こんなの、こんなのって・・・。まるで、ロミオとジュリエットじゃないの!」


 そんなにイイモノかな? いや、ロミオとジュリエットの境遇は決してイイモノではないけど。


「それって・・・、スッゴく萌えるわ!」


 萌えちゃったよ。


「あぁ、しょうくん。どうしてアナタは、翔くんなの?」


 セリフまで言っちゃったよ。


「ハッ! も、もしも今、しょうくんが襲い掛かってきて、ワタシを押し倒して、最後までヤっちゃったら・・・。ワタシのチカラは失われて、制服社会が訪れちゃう・・・。ど、どうしよう・・・」


 流石に、それはないよ? だってココ、学校だし・・・。しかも、屋外だし・・・。



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