第5話 ギルド

 異世界の定番と言えばギルドの存在だろう。冒険者ギルドのSランクとかいうやつに少し憧れるものだ。


「ギルドってあるの」


 街の中を散策しながらフィディに聞いてみた。


「あります。レゼ様はどのギルドに用があるのですか」


「冒険者ギルド」


「冒険者ギルドですか。あれはまともに職に就くことの出来ないような荒くれ者がなる職業ですよ。レゼ様が期待しているようなものではないんじゃないですか。それよりも服を変えましょう。その布ではやはりレゼ様には足りません」


 と言われ、冒険者ギルドよりも先に服屋に行くことになった。到着した服屋には色々な服がおいていた。


 そこでのことはあまり思い出したくない。店員とフィディの着せ替え人形にされたからだ。確かに今の僕の顔はいい。間違いない。最初の数着は僕だって楽しかった。いろんな姿の自分に会えたのだ。それにまだ、この顔が自分という印象が弱いためかわいい子のファッションショーを見ているような気分になれたからだ。だがそれがもし一時間、2時間3時間と続いたらどう思うだろうか。


 勿論僕がやめてといったらやめてくれただろうが、ものすごく目をキラキラさせながら1着1着に違う感想でほめてくれるフィディの様子を見ると、言うことはできなかった。これでも彼女のことはかなり気に入っているのだ。


 結局服を5着ほど買い込むことになった。また金がないと思ったが、どうやらフィディがネラルから奪ってきていたようで、普通に支払ってくれた。


 暗くなってきてしまったためそのまま宿に泊まることにした。奪った金はそこそこあったようなのでランクの高い宿にした。もちろんシングルである。かわいいかわいいフィディと抱き合いながら寝ている。最初は遠慮しているような雰囲気をだしていたフィディも心の底では一緒に寝たい。ダブルじゃなくてシングルで。同じベッドがいいと思っているのは丸わかりである。


 もしここで僕が男の体持っていたのならを、僕も断ったかもしれない。不純異性交流だったからだ。でも今の僕は女の体であるのだから、普通のことだろう。


 目が覚めると、フィディは僕よりも先に起きていたようだ。


「ああ、レゼ様。はあはあはあ、レザ様」


 僕より先に起きていたフィディは僕に思いっきり抱き着きながら僕の胸の中で匂いを堪能している最中だったようだ。逃げられないように抱き着きながら声をかけてあげた。


「ずいぶんと早起きだね」


「ひゃい」


 びっくりしたのか変な声が聞こえてきた。必死に逃げ出そうとしているが、僕ががっちりと抱きしめているから逃げ出すことはできない。もぞもぞと動いてから観念したように謝ってきた。


「ごめんなさい」


「どうして謝るんだい。僕とフィディの中じゃないか。匂い位言ってくれればいくらでもかがせてあげるからね」


「いいんですか」


 目を輝かせていた。これはかわいいととらえるべきか気持ち悪いととらえるべきかでしばらく悩む羽目になってしまった。



 そんなことを朝からやりながら、僕は念願の冒険者ギルドにやってきた。外から見た建物はそこまで汚いという感じではなかった。


 中に入ると、その印象は180度変わった。粗悪そうな男たちが愉快そうに酒を飲みながらだべっていた。クエストボードらしき場所はもうボロボロ。外観が保てていたのは奇跡じゃないかと思わせるようなものである。


 そんな場所に僕のような美少女が行けばどうなるか。もちろんあまり愉快ではない視線を向けられることになる。何人かが立ち上がって近づいてこようとしているのが見える。これもお約束的な展開だろうが、ちょっと遠慮しようかと思う。普通に魔力を出した。


「おええええ」


 吐き出すものが出てきて嫌な臭いもしだしてしまったためそのままギルドは出ていくことにした。


「あまりいいとこじゃなかったな」


「当り前です。ギルドはいくつもありますけど特に冒険者ギルドと傭兵ギルドの民度は最悪ですからね。レゼ様のような美しい方がのこのことやってくればそれはもう格好の餌だと思われてしまうでしょう」


「街って他に見る場所あるの」


 僕は正直、街に空き始めていた。特に何かあるというわけでもないし冒険者は実際に見るとあまり気持ちのいいものではなかったし、最悪だ。


 そんなことを考えながら歩いていると何やら街が騒がしい。適当な出店のおっちゃんに何があったのか聞いてみることにした。


「なんだか騒がしいけど何かあったの」


「ああ、なんでも街を治めてた騎士のうちの一人が殺されちまったらしい」


 串焼きを受け取りながら聞いた。きっと昨日殺した騎士のことだろう。まだ仲間がいたらしい。ちょうどいいから残りも殺してこの街を乗っ取るというのも面白そうだ。


 確か、魔女には支配地があるらしいから僕の始まりの地をここにしてもいいだろう。正直あまりいい場所という印象はないのだけど、まあ、そこは僕の頑張り次第でいい街にしていくとしよう。

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