第4話 グバララ
しばらく歩き続けていると、町が見えてきた。門の前には列ができていた。
「長いな。並ぶのめんどくさい」
「どかしますか。レゼ様が人間たちと同じように並ぶ必要なんてありませんから」
「いや、並ぼう。」
「わかりました」
わざわざどかすまでもない。というかこういうのもちょっと異世界っぽくていいかもと思っていたのだ。どうせ列に並ばないという感じの権力者ムーブは後からいやというほどできるのだから今は庶務ムーブにしようと考えていた。
列に並び、しばらくすると僕らの順番が来た。
「身分証は」
「ないけど」
「それなら5,000シェルだね」
「シェルって」
「通貨です。5,000シェルなら半銀貨5枚ですね」
「持ってる?」
「持ってないです」
都市に入るためのお金か。考えたこともなかったな。そうと知っていればあの基地からいくらか奪ってきたのにと後悔した。
「この街って魔女の支配地なの」
「この街がどうなのかは知りませんが、確かアルタサ王国自体は拝金の魔女の属国みたいな感じだったと思います」
どうなのという感じで門兵を見つめてみると、明らかにめんどくさそうな感じを出しながらも答えてくれた。
「ああ、確かにここは拝金様の支配地だよ。最も最近までは違かったんだが、どっかの馬鹿どもが買い取ってね」
「拝金様って何」
「魔女の名前です。魔女の本名を直接言うのは基本的に憚られています。そのため魔女たちはそれぞれに2つ名のようなものがつけられて呼ばれるんです。拝金様とか拝金の魔女という風に呼ばれます」
「拝金ってさちょっと悪口入ってない」
「私たちが決めたわけではないので」
拝金とは簡単に言えばお金大好きみたいな感じである。それが名前の魔女とか絶対に悪口だ。でももしかしたら陰口じゃないだけましなのかもしれない。
「お嬢ちゃんたち金が払えないならさっさとどいてくれないか。後ろがつかえちまってるんだ」
せっかく庶民ムーブをかまそうと思ったのだが、仕方がない。ここは権力者ムーブをかますことにしよう。
「誰に言っているんだ」
僕が尊大にそういえばフィディは私がやり方を変えたことを即座に理解してくれたようで門兵やあたりに威嚇を始めた。と、そこで横から声がかかった。
「おっ。かわい子発見」
チャラチャラとした感じの男がこちらを嘗め回すように見ている。博士の時は、性的というよりも完全に被検体に対してという感じであったが、こいつは完全に性的な目を向けてきている。
「こ、これはネラル様。いかがいたしましたか」
「なんとなくよっただけだけどさー。お前さっき俺らのことなんて言ったよ」
「いえ。なんでもござ」
そこまで言った段階で、腰から抜いた剣をその門兵の腹に差し込んでいた。
「が、がは」
それだけでは死ぬことはなく、門兵は苦しそうに喘ぎながら倒れ込んでしまった。
「治療するの禁止だからなー。さてと、君らは俺と一緒に来いよ。接待させてやるからよ」
すぐにこちらを向いて嫌な誘いを向けてくる。こいつがまずかったのはすでに僕は権力者ムーブに切り替えてしまったことだった。もう少し早ければもうちょっとは生きられたのにと思う。
僕の横からフィディが飛び出していった。そしてネラルを思いっきり蹴り落した。そして地面に倒れ込んだネラルの腹を思いっきり踏みつぶす。
「ぐはあ」
「お前、誰に向かって口きいてるのかわかってるのですか。お前みたいな金で買っただけの愚図がこのお方を誰だと思っているんです。あぁ」
さすがに、すでに僕のことを知っていたらそれはそれで怖いだろうと言うことはできなかった。思っていたよりもフィディのすごみ方が怖かったのだ。
「どういうことだ。なぜ俺がこんなことに。ありえない俺は騎士だぞ」
「それが何なんですか。それに騎士? はっ。拝金から金で買っただけの奴が騎士なんて名乗らないでもらいたいです。騎士っていうのは私みたいに魔女様に心より使えるやつのことをいうんですよ」
そのまま腹に穴が開いてしまった。よほど怒こっていたのだろうがやっぱりこの子沸点が低すぎる。それに怒り方が乱暴ですぐに殺そうとしていて危ない。まあ、それでも僕のためにやってくれたみたいだからおおめにみてあげようかなと思っている。
「よくやったフィディおかげでただで都市に入れそうだ」
「はい」
さっきまでの形相はどこに行ったのか、満面の笑みをこちらに向けてきた。ちょっと怖い。
門兵は倒れ、あまりの騒動周りににいた人たちも離れている。このまま勝手に入っていっても文句は言われないだろう。
「じゃあ、こいつがお金の代わりということで」
一応代金の代わりとして騎士の死体を残っていた門兵に渡してから悠々と都市に入ることにした。門兵はちょっと引いてた。
横に並んで歩いていたいフィディの水色の髪をなんとなく撫でてあげた。
「ふぁあああ」
とても気持ちよさそうに顔をとろけさせている。髪はすべすべで手触りは良かった。
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