第3話 魔女
「魔女っていうのは何なの」
今まで魔女だと呼ばれていたが、僕はその意味を知らなかった。なので森を歩きながらフィディに聞いてみることにした。
「魔女とは魔力を有している方々のことを言います。レゼ様を含めると魔女は現在12名の方がいます」
魔力。それは僕の体の中にある不思議エネルギーのことだろう。僕はこれによって強い力を使うことができるし、よほどの攻撃でない限り、ガードすることができる。それにこの魔力自体を火や風のようなものに変換して魔法を放つことだってできるのだ。
「つまり魔女以外は魔力を持っていないってこと」
「魔女と騎士だけですね。騎士は私のように魔女によって力を分けられた者のことを言います」
「でも魔獣とかいるって言ってなかったっけ」
魔獣。魔とつくだけあって普通の獣よりも強いのだろうと思ていたのだが、魔力を持っていない人間に対処が可能ならばそうでもないのかもしれない。
「魔獣は魔力を有した獣のことです。人間はこれらに対抗するために魔法石と呼ばれる魔力を有している鉱石を使っているんです。この男が持っている剣も魔法石が使われているはずです。魔法石を組み込むことで普通の剣よりも強くすることができるんです」
魔法石か。道理で微妙に魔力が感じられると思っていたのだ。ということはその鎧にも使われているのだろうか。
「魔女はどんな立場なの。ほら危険視されて追われていたりとかする」
「まさか。そんなことはありえません。魔女は皆膨大な魔力を持っているので、基本的に人間たちは阿りながら生きています。何かを命じられればいうことを聞かなければいけないので、かかわからないように気を付けるんです」
つまり、僕もそういう扱いになるのだろう。なぜ自分が魔女としてこの世界に来たのかはわからないが、どうせ来たのなら好き放題に楽しく生きていきたい。
「あとはそうですね。魔女によっては自分の領土を持っている者とかもいますね。あと、有名なのは浮遊都市を有している魔女とか」
「浮遊都市!? なにそのかっこいい奴。いいなー。僕もそういうの欲しいかもでもパクリは嫌だな。……地面の下に国をつくるのはそう。地下帝国みたいなの」
「素晴らしいと思います」
「そうだよね」
イエスマンからの賛成は得られたのでこの方向性で行こうかと本気で考えてみることにした。地下帝国は上段だとしても自分の国は欲しい。国王になって偉そうに踏ん反りかえってみたい。
そんな話をしていると、魔獣が現れた。狼の魔獣のようだ。
「あれが魔獣」
「はい。あれは狼の魔獣ですね。魔獣は基本的に普通の獣が魔法石を体内に取り込んで変質したものだと考えられています」
「僕が苦戦しそうな魔獣っているの」
「過去には魔女が討伐に苦しんだ魔獣がいたという記録を見たことはありますが……それほどの物に会う機会はよほどのことがなければないでしょう」
すごくフラグに聞こえてしまう言い方だ。目の前にいる狼の魔獣は確かにフィディに言う通り僕にかなうとは到底思えない。魔力は有しているようだがそれは僕と比べるのもおこがましいほどだ。僕の魔力を1割ほど分け与えているフィディとさえ比べられないほどに小さい。
指先に魔力ををため、ビームにして出せばよけられずに死んだ。死体はそのまま残っている。
「死体が消えたりしないんだな」
「はい死体は残りません。肉質などは普通の獣よりも固いとされていますが魔力を有していたからなのかおいしいようでこのせいで魔女の肉はおいしいという話も出されているほどです」
「ちょっと食べてみるか」
ちょうどいいところに剣を持った人物がいたため、そいつに魔獣の肉を切り出させた。最初はびくびくしていたがいざ切り出し始めるとそいつは「大事な魔法剣が」と文句を垂らしながら作業をしだした。
それを聞いたフィディが殺そうとするというハプニングこそあったものの僕らは魔獣の肉にありつくことができた。意識していなかったが、これが転生後初の食事である。
「いただきます」
食べると、確かに少し硬くはあった。が、おいしい。肉汁があふれてくるし味の深みがすごい。ちょっと固いのも噛み応えがあると思えばこの味にはあっている。魔獣の肉はおいしかった。
「おいしいね」
「はい。気に入っていただけて良かったです」
「フィディも食べていいよ」
フィディは僕が食べている間はずっとにこにことしながら僕のことを見つめていた。そのことを恥ずかしいと思いながら、僕は肉を食べていたのだ。許可を出さないと肉はすべて僕の物だとか言い出しかねない。尊敬の念をもって接してくれるのは非常に自尊心を刺激してくれてありがたいのだが、ちょっとめんどくさい部分もある。ただ言い方を気を付けないとそれはそれでめんどくさいことになるという確信が僕の中にはあった。
それからさらに2回ほど魔獣に会いながら森の中を進んでいくとついに森を抜けることができた。この近くの街のある場所を聞くと、用済みになった案内役を処分してから二人で進むことにした。
案内役はなぜか自分は助かると思い込んでいたようであった。勘違いも甚だしい限りである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます