第2話 制裁
確かに俺的にも殺そうとは思っていたがさすがにそこまでではない。しかも怒っている理由が俺に対することばかりだ。
「いや、さすがにそこまでではないかな」
「そうですか。それならいいです」
急にスンとなっている。もしや俺がさっき言った俺の意見を無視するのかという言葉のせいで従順になっているのかもしれない。
「じゃあ、適当に殺してここを出よう」
「ま、まて、そんなことをして許されると思っているのか」
恐怖で口もきけない様子だったのだが、死ぬとわかると喋れるようになってしまったらしい。不愉快な声が聞こえてきた。
「えい」
魔力をビームのように変換してイラクティの顔に向けてに発射した。すると面白いように頭が弾け飛んだ。
「うわっきたな」
肉片が辺りに吹き飛んで寝台の上まで飛んできてしまった。こんなに汚いなら他の奴はどうやろうか悩む。
「フィディも好きにやっていいよ」
「わかりました」
そういったフィディは寝台を降りていった。俺の魔力を渡したはずなので遠距離攻撃もできるはずなのだが、わざわざ近づいてから攻撃をするようだ。
エディリスに近づくと小声で何かを言っている。小さすぎてうまく聞こえないがエディリスの謝罪の声がどんどん大きくなりながら響いてくる。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
鎧の隙間からは黄金の液体が漏れ出てきていて汚い。登場は黒い鎧でかっこよかったのに今は無様である。ちょっと笑える。
「じゃあ、死ね」
フィディは俺と同じように、魔力をビームにして放出した。だが、俺の時とは違い、出力が大きくない。しかも明らかに致命傷にならなそうなところにやっている。まるで拷問はやめるみたいな言い方だったが怒りは想像以上に大きかったらしい。今も腹のあたりに向かってゆっくりビームを出していた。
絶叫の声がうるさくなってきたので早く終わらせるように言う。言えばフィディは従順ですぐに終わらせた。残りも面倒なので同じようにビームで頭を吹き飛ばして終わった。その時にはさっきの反省を生かして自分たちの周りに風の膜を張っていたため寝台にまで肉片が飛んできたりはしなかった。
「とりあえずここを出ようか」
フィディを連れて、部屋から出ていくことにした。部屋の外にはエディリスと同じように全身に鎧で着込んでいる奴らが大勢いた。
「えー、こんなにいるの。めんどくさいな。どいてくれる」
相手が倒れてもめんどくさいのでさっきよりも少なく。ほんのちょっとだけ魔力を解放しながら頼めば鎧集団は壁の端によってモーゼのように道が出来上がった。
「それじゃあフィディ。外まで案内して」
「それよりも、お召し物の方が先ではないですか」
言われてから思い出したが、確かに今の俺は裸だ。このまま外に出るのはよくないかもしれない。
「そうだね。じゃあ服からにしようか。ここに服はあるの」
「魔女様に合うような素晴らしいものはありませんが、少しの間着ているくらいなら」
そういって案内してくれた部屋の中には、白い布があった。病院とかで着そうなもので下着すらもおいてはなかった。
「これ、服なの?」
「すみません。この施設にはあまり女性の方は詰めていないので」
確かにこの体は女の物だ。それならば男物ではなく女物を着るのも納得。それにおじさんのお古とかあんまり着たくはない。
「じゃあこれでいいよ」
服を手に取る。部屋の中には姿見もあったので服をかぶりながら覗いてみた。そこには美少女がいた。かわいいらしい少女だ。黒い髪を腰ほどまで伸ばし、瞳は金色に光って見える。目も大きくかわいらしい。完璧な造形美だ。
「かわいい」
「素晴らしいです。やはり魔女さまこそ至宝の美ですね」
拍手しながらフィディが言ってくる。ここまで褒められるとなんだかちょっと馬鹿にされているような気分になってしまう。
「この姿で一人称が俺っておかしいかな」
「そんなことはないです。魔女様のすばらしさは一般とは違うのですから」
「いやおかしい。私……いや僕にしよう」
俺はちょっと男っぽすぎる。私にするのは男としての感性が違和感を訴えてきた。そのため妥協として僕にすることにした。見ようと思えばボーイッシュな感じに見えないこともないしな。
「そういえば、魔女様っていうのちょっと他人行儀な感じするよね」
「それならばご主人様はどうですか」
「いや、せっかくフィディがつけてくれたんだからレゼって呼んでいいよ」
「わかりました。ではこれからはレゼ様と呼ばせていただきます」
服も来て懸念点もなくなったことで、ついにこの施設を出ていくことにした。
施設は森の中に隠れるようにして立っていた。深い森でここがどこなのかもわからない。
「フィディはここがどこなのか知ってる」
「はい。ここはアルタサ王国の南側にある森のはずです」
「どっち行けばいいかわかる」
「すみませんそこまでは」
結局また施設の中まで戻り適当な奴を連れて道案内させることにした。
「これなんか不愉快だし消しちゃうね」
少し歩いたところで、今までいた施設を爆発させた。連れていた男は泣き崩れていたがフィディは無邪気に僕の魔法をほめてくれた。
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