魔女のおもちゃ遊び
蛸賊
第1話 転生
気が付くと俺は白い部屋に全裸で寝かされていた。寝る前の記憶はなく、ここがどこなのかわからない。あたりを見回すと、ちょうど俺の体を拭いていた最中の少女と目が合った。
「お、お目覚めになったんですね。おめでとうございます」
水色の髪をした少女が俺に向かって祝いの言葉を述べてくる。目覚めただけでほめられる。いい世界になったものだ。
「俺、もしかして女の子になってない?」
俺の体からは男としての特徴が消え去ってしまっていた。寝ている間に性転換手術でもされてしまったのだろうか。
「えっと。申し訳ございません。私にはよくわかりません。あ、でも博士だったら知っているかもしれないので今から呼んできますね」
そういって部屋から出ていきそうになっている少女を慌てて呼び止めた。混乱しているが、それよりも全裸で寝かせられている理由を知りたくなった。
「俺が何でここにいるのか知ってたりする? そもそも自分の名前もわからないんだけど」
どんなに頑張っても記憶が不確かなのだ。自分が日本という国に住んでいた男だということはわかる。しかし家族だとか自分の名前とかについては何一つ思い出せないのだ。
「あなた様は魔女様です。名前の方は……すみません私にはわかりません」
あからさまにしゅんとなった少女に少し悪い気がしてきた。というか魔女か。つまりこのちんちんがなく胸もない体は女ということになるのだろう。
「君の名前はなんていうの」
「あ、私はフィディ・ルクエと言います!」
元気のいい子だ。それになぜだかわからないけど俺に対しての尊敬の念を感じる気がする。こんな美少女に裸を見つめられながら尊敬されるとかなんだか興奮する。
「俺の名前さ、わからないから君が決めてよ」
「わ、私がですか。そんな恐れ多いです。」
「俺がいいって言ってるんだからいいの」
「そ、それではレゼというのはどうですか」
少し悩んでからフィディは名前を付けてくれた。レゼ。なんか響きがいいな。
「それってどういう意味」
「内緒です!」
顔を赤くしながら教えてくれなかった。そんな言い方をされたら余計に気になってしまう。
「よし。それじゃあ俺は今からレゼ・ルクエって名乗るかな」
「そそそそそそ、そんな恐れ多い」
壊れたおもちゃみたいになっちゃった。やっぱり面白いな。
「だから俺がいいって言ってるんだからいいの。それともフィディは俺の意見を無視するの」
「はい! 魔女様は今からレゼ・ルクエ様です」
姿勢を正し元気な声を響かせる。この面白いおもちゃで遊んでいると、扉から男たちが入ってきた。先頭には白衣を着た男がいて多分フィディが言っていた博士というやつだろう。
「おい。被検体が起きたのならさっさと呼べと言っていただろうこの愚図が」
そういいながら博士はフィディを殴りつけた。ふざけんな。俺のおもちゃに何やってるんだ。
「おい、やめろ」
俺が止めると博士は視線を俺に向けてきた。ねっとりとした視線が気持ち悪くてつい体をくねらせてしまった。
「ふむ。しっかり目覚めているようだな。イラクティ様。ではどうぞ」
俺の話を聞こうとする様子もなく博士は話を進めていく。博士の後ろからはイラクティと呼ばれた肥満男が現れた。
「うむ。魔女よ。この私に貴様の力を渡すがよい」
「え、やだ」
普通にヤダだろ。そんなもの。力を与えるにしてもせめてフィディのような美少女の方がいい。
「ふざけるな! この私を誰だと思っている。貴様これはどういうことだ」
「な、何分目が覚めたばかりなので、少し干渉がうまくいっていないだけかと。時を置けば必ずやイラクティ様のいうことを聞くようになるかと」
「私にこのような侮辱をしたものを放置しろというのか。そんなのは我慢ならん。エディリスさっさとこの失敗作を処分するのだ。」
「お、お待ちください」
俺に要求を断られたことがよほど気に入らないようで、イラクティは博士の制止を無視して俺を処分することにしたようだ。耐えれなすぎだろと思う。
エディリスと呼ばれたものは全身を鎧で包んだ奴だった。背に大剣を持っている。しかも鎧は黒く塗装されていて、なんともかっこいい。
そのまま剣を引き抜くと、上段に構えて俺に向かって振り下ろしてきた。しかし俺がそれに対して何かをすることはない。確信があった。この程度では俺に傷一つつけることもかなわないだろう。
「なっ」
エディリスの驚きの声が聞こえる。それもそのはず、彼の剣は俺の体に到達することなく真っ二つに割れてしまったからだ。多分魔力というやつだと思う。膨大の魔力が自分の中にあるのを俺は理解していた。その使い方もだ。
折れた剣を見て絶句している面々を見渡しながら少し魔力を解放する。そうすると奴らは立っていることもままならないようで、倒れ込み中には失禁しているものまでいる始末だ。俺は寝台の上にいるからまだ大丈夫だが床はきったないおっさんの黄金色の液体が広がりだして汚い。
俺はその液体の広がる先にフィディがいるのを発見した。これはまずい。美少女が知らないおっさんの汁で横れるのは嫌だ。気を付けながら寝台から降りると急いでフィディのもとまで駆け付け、抱きかかえてから再び寝台に上がった。
「大丈夫だったか」
さっき殴られた分も含めて聞いてみたが、どうやらフィディも俺の魔力に当てられてうまくしゃべられないようだ。仕方ないから俺の魔力を1割ほど分け与えることにした。これがイラクティの行っていた力を渡すということだ。これをすると俺の総魔力量の総量がその分だけ減ってしまうようだ。
「大丈夫だったか」
「はい、もちろんです。魔女様こそ大丈夫でしたか」
「俺は大丈夫。それよりもこいつらどうすればいいと思う」
未だ倒れこんでいる奴らを指さしながら聞いてみた。俺的に殺すのは決まっているのだが、一応フィディもひどい扱いを受けていたようだからどうにかしたいことがあるかもしれない。
「はい。こいつらの魔女様に対する言動は決して許されるものではありません。生きていることを後悔されてから、魔獣の餌にしてしまいましょう」
この子ちょっと俺に対しての感情が重くないか。
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