第27話 秋は乾燥芋の季節 ②

「1日の適量は50gよ」

「それを超えるとどうなるの?」

「恐ろしい結末を迎えるわ・・・生きているのが嫌になるくらいに・・・」

「でも・・・やめられないわ」

「ダメだよ、りっちゃん・・・・それ以上は・・・」

「りつ、貴女、そうでなくても最近・・・・」

「なな!それは・・・それ以上は言わないで~~~」


りっちゃんはそう言って、山吹色のお菓子を口に運んだ。


「美味し~い・・・幸せ♡」

「なんで乾燥芋って食べ始めると、止まらないんだろう?」

カミーネも次の乾燥芋に手を伸ばしている。

「脳内麻薬が出ているのよ、ご褒美を摂取したとしてドーパミンがドバドバ」

「なんて危険な食べ物なのかしら・・・・でも、食べちゃう!」

りっちゃんはそう言って、更に次の乾燥芋を口に運んだ。


来活部の部室で3人は今年できた乾燥芋の差し入れに舌鼓を打っている。

歩留まり分と商品から規格外にされた言わば訳アリ品だが、

多少、形が小さかったり歪でも、味は出来立てのそれと遜色なく、

モチモチと柔らかく、香りが濃縮され、

近年、糖度管理がなされ、とっても甘いのだ。



お茶を飲みながら、一息つき、会話が進む。


「乾燥芋は茨の城が全国シェア90%を誇るわ」

「一度、小清水さんちが生産した乾燥芋を京都の親戚に送ったら、1週間もしないでリピートが来たよ」

「最近は糖度が80を超えたサツマイモを天王としてブランド化してるんだって・・」

「毎年値段が上がっているわ、そして紅はるかの乾燥芋は即完売らしいわ」



干芋=乾燥芋は元々、冬の保存食として重宝されてきた歴史があるが、

近年ではサツマイモの品種改良や糖度を量る技術革新などで、

その地位を完全に高級天然和菓子へと昇華させた。


乾燥芋は普通、平干しと言われる平らにカットしたものが主流だが、

高級品として丸干しが人気を集めている。

丸干しは平干しに比べ時間が倍以上掛かり手間を掛けたプレミア商品であり、

食感は外部は平干しのように楽しめ、内部が甘い蜜のような味わいと言われている。



桐の箱がある。

上面には金の文字で天王の丸干しと達筆でしたためられている。

今年、小清水干芋販売所でプレミア50箱で販売された内の1箱である。


小清水 りさによってカミーネに3箱進呈された。

1箱はカミーネに、もう1箱は領主光山に、

そして、2人のお眼鏡に適った暁には、献上して頂きたいとのこと。


もちろん天皇陛下へ

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