第34話 クラン(5)
その後もクラン【森羅万象】の評判は順調にあがっていった。
僕たちは簡単なクエストを受けてるだけで、楽々やっていけてる。
そして、僕のパーティーは、いつも難しいクエストを率先して受けていると勘違いされてるから、文句も言われないしね。
まあ、ロランとかエリーは少し物足りなさそうだけどね。
そしてついに、王様から手紙が届いたのだった――。
なんだろう……。
もしかして、ギルドに昇格してくれるとか……!?
そうなったら、ついに僕はギルドマスターだ……!
ギルドマスターになったら、クエストに行かなくても済むぞ……!
他のパーティーに任せてギルドで悠々自適に寝て過ごすんだ……!
「えーっとなになに……? 閃光のノエルどの……。閃光のノエルの噂はきいておる」
僕は手紙の内容を読む。
マジか……王様にまで名前を知られてるなんて……。
なんで僕の名前そんなに一人歩きしてるんだよ……。
「どうやら新しいクランも順調のようだ。特に閃光のノエル率いる【霧雨の森羅】は最強のパーティーだときいておるぞ。そこでだ。君たちのパーティーに、【ファイナルドラゴン】の討伐を頼みたい。これは指名依頼だ。ぜひ君たちに頼みたい。よろしく頼むぞ……!」
と、書いてあった。
指名依頼……指名依頼……指名依頼ぃいいいい……!?
「しまったああああああああああああああ!!!!」
僕はすっかり忘れていたのである。
この、指名依頼というシステムを。
指名依頼というのは、王様が直々にクエストを受けるパーティーを指名するクエストだ。
つまり、王様からの直々の依頼ってことになる。
まあ、その分報酬も高いし、冒険者としては名誉なことともされている。
だけど、基本的に指名依頼になるのって、とんでもない難易度の高いクエストばかりだ。
普通にクエスト募集を出したのだと、高難易度すぎて誰も受けないからこその、指名依頼。
指名依頼は王様からの命令だから、断ることができない。
だけど、マジで死ぬほど難しいクエストばかりだ。
つまり、どういうことかっていうと、死んでこい、ということだ。
実際、指名依頼で命を落とす冒険者も珍しくはない。
指名依頼というのは、それほど難しく、危険なクエストということなのだ。
だからこそ、わざわざ王の名前をつかって、依頼してくる。
基本的に、フリーの冒険者には指名依頼はやってこない。
だからこれまであまり気にしていなかったのだけど……完全に失念していた。
僕たちはクラン所属のパーティーになったから、そりゃあ指名依頼だってあり得る……。
それにしても、なんで僕たちなんだよおおおおお……!?
くそ、完全に失敗した……!
クランの中での名声が上がりすぎた……!
閃光のノエルの名前が売れすぎた……!
クランの中で名声を上げて、閃光のノエルの名が売れれば、ギルドマスターに一歩近づくとか思ってた僕が馬鹿だった……!
勘違いは早々に解いておかねばならなかったのだ……!
まさか、僕の名前が王様にまで知られていたなんて……。
誰だよ王様に教えたやつ……!
そのせいで、指名依頼を受けるはめになるなんて。
嫌だよ、僕まだ死にたくないよ。
指名依頼なんて、僕みたいな雑魚が行ったら、絶対に死んでしまう。
しかもなんだよ【ファイナルドラゴン】って、めちゃくちゃ強そうなやつじゃん!
こんなの絶対死ぬ……!
頭を抱える僕とは裏腹に、手紙を見てロランは上機嫌だった。
「お、なんだよ。指名依頼か……! いやぁ、久しぶりに手ごたえのありそうな相手だぜ! 腕がなるなぁ! ノエル!」
「そ、そうだね…………」
ああもう……引退したい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます