第31話 クラン(2)


 さてと、細かい事務作業や手続きなんかはクラリスさんにお任せしてっと……。

 次は、クランに所属してくれるパーティーの募集だね。

 とはいっても、設立したばかりの無名のクランだしなぁ……。

 誰も所属なんかしてくれないんじゃないのか……?


 パーティーは、クランに所属することで、そのクランからクエストを受けることができる。

 その代わりに、クランはパーティーから報酬の1割を受け取る。

 パーティーがクランに所属するメリットはいくつかある。

 まず、普通のオープンギルドでは受けられないような極秘のクエストが受けられる。

 あ、ちなみにだけどギルドはオープンギルドとクローズドギルドの2種類があるよ。

 普通にフリーの冒険者がクエストを受けたりすることができるのが、オープンギルドで。

 所属してないとクエストを受けられないのがクローズド。

 クローズドはまあ、大きいだけで、基本はクランと変わらないって感じかな。


 話を戻すね。

 他にも、クラン対抗でクエストの成果を競争したりする、クラン対抗マッチなんかに参加できる。

 あとは、パーティーだけじゃ厳しいような、大きなクエスト。

 クラン規模のクエストに参加できるってところだね。

 ドラゴンなんかの強力なモンスターと戦うときは、パーティーだけじゃとてもじゃないけど倒せない。

 そういうときは、クランごとクエストを受けて、クラン全体でクエストに挑むこともある。

 そういう大きなクエストは報酬も大きいから、それはクランならではだね。


 だけどまあ、僕たちはまだ出来立てほやほやの新米クランだ。

 そんな無名のクランには、あまりいいクエストは回ってこない。

 だから、僕たちのクランに入りたいっていうパーティーは、なかなか来ないんじゃないかな……?

 って、ちょっとネガティブに考えてしまう。

 だけど、そんな心配はいらなかった。


 僕たちのクラン所属パーティー募集のチラシに、さっそく応募してきてくれたパーティーがいた。

 しかも、なんと僕たちもよく知っているパーティーだった。


 Aランクパーティー【精霊の心象】、そう僕たちが以前、クオーツク大森林で助けたパーティーたちだ。

 【精霊の心象】のリーダー、シンゴは、まっさきに僕たちのクランに応募してきてくれた。


「閃光のノエルがクランを設立したときいてな、居ても立っても居られなかった。【霧雨の森羅】に救ってもらった恩があるからな。ぜひ俺たちをクラン【森羅万象】に入れてくれ!」

「その名前やめてよ……。でも、ありがとう。僕たちは君らを歓迎するよ!」


 シンゴをはじめとする、【精霊の心象】のメンバーをクランに加えることが決定した。

 いやぁ、人助けはするものだね。

 いきなりAランクのパーティーが参加してくれるとなると、心強い。


 それにまったくの知らない人たちじゃなくてよかった。

 シンゴたちの大体の能力なんかは知っているから、仕事も振りやすいしね。


 【精霊の心象】はどうやらあれからさらに活躍を進めていて、もうすぐでSランクパーティーにすら届きそうらしい。

 そんな優秀なパーティーがクランに参加してくれて、僕もうれしい。

 優秀なパーティーがいればその分、僕の働きが減るからね。ゲフンゲフン。


 そしてうれしいことに、さらに応募は続いた。

 続いて応募してきてくれたのは、またしても名前をよく知るあのパーティーだった。

 【氷上の輪廻】、同じく以前僕たちが救ったAランクパーティーだ。

 

「ノエルくん! ノエルくんがクランを作ったときいて、すぐに駆け付けたよっ!」

「それは、ありがとう。アヤネ。君たちを歓迎するよ」


 アヤネたちの参加はすごくうれしかった。

 やっぱり仲間はいいね。

 彼女たちもSランク間近の凄腕パーティーだから、きっと大きな戦力になってくれるに違いない。


「そしてゆくゆくはノエルくんのお嫁さんになって、ギルマス婦人に……」

「なんでそうなるの!? しないからね!?」


 さて、これでクラン【森羅万象】に所属してくれるパーティーは僕たちを含めて3組になったわけだけれど……。

 まあ三組もいれば当面の活動には問題ないよね。

 と思ってたところ――。

 なんとさらに多数の応募が殺到することになった。


 全然知らないような無名のパーティーから、そこそこ名の知れたパーティーまでいろいろだ。

 みんな、【精霊の心象】と【氷上の輪廻】というAランクで有名な2大パーティーが参加したことで、僕たちのことを認めてくれたのかもしれない。

 【精霊の心象】と【氷上の輪廻】が宣伝してくれたのも大きかったね。


「なんと、うちのクランリーダーはあの閃光のノエルさまなのよ!」

「え……!? あの閃光のノエルが……!?」


 などと、アヤネが冒険者ギルドで吹聴したそうだ。

 閃光のノエルの名前ってそんなに求心力あるのか……?

 とにかく、おかげさまでかなりのパーティーがクラン【森羅万象】に集まった。

 最終的に、15個ものパーティーがクランに参加してくれることになったよ。

 ようやくこれで僕も引退できるといいんだけど……。

 はてさて、どうなることやら……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る