第28話 クエスト(5)


 その後、僕たちは無事にコルレット鉱石を採取して、街に戻ってきた。

 

「いやぁ、やっぱノエルは強いな! さすが俺たちのリーダーだぜ!」

「いやまあ僕結局なにもしてないけどね……?」


 結局、サイクロプスを倒せたのだって、あんなのはまぐれだ。

 正直、何度も通用するような手じゃない。

 ロランがサイクロプスを盾で抑えるなんていう、規格外な芸当をしてみせたおかげだ。

 普通、あんなことできない。

 サイクロプスを抑えようと思ったら、普通はつぶれちゃうからね。

 ロランはやっぱり、怪物級にすごなと、僕のほうこそ改めて思った。


 僕が倒したというのも、剣が強いってだけだ。

 僕には剣術なんかの技術はないし、ただ止まっている敵を斬っただけのこと。

 ふつうに正面から戦ったら、勝ち目なんかない。


 それでも、今回はまあがんばったよね。

 自分でも自分を褒めてあげたいと思う。


「ようし、じゃあ今日は二人で飲むか! ノエルの大活躍を祝して!」

「うん、そうだね。僕もお腹すいたから、なにか食べたいな」


 僕たちは食堂に向かうことにした。

 せっかくの男だけの時間だ。

 久しぶりに、ロランと二人だけで食事するのも悪くない。


「俺、ちょっとさっきの戦いで盾がおかしくなっちまってよ。ちょっと防具屋によってから行くわ。先にいって、適当になんか注文しててくれ」

「うん、わかった」


 ということで、僕はロランと別れ、食堂に入る。

 のらねこ食堂、ここはけっこう美味しいんだ。

 お酒も飲めるし、冒険者たちはみんな、クエストのあとはここにやってくる。

 ちょうど、このくらいの時間からみんなクエストを終え、やってくるんだよな。

 僕たちは少しはやめにクエストが片付いたから、席が空いていたけど、はやめにとっておかないと、すぐに埋まるんだよな。

 ロランだけ防具屋にいって、僕が先に来たのは正解だったかもしれない。

 すでに、まだ日も明るいというのに、店の中は客で埋まり始めていた。


「よいしょっと……」


 僕は適当なカウンター席に座った。

 横の席に荷物を置いて、ロランの席も確保する。

 さてと、なにを頼もうかな。

 適当に、お酒と前菜を注文する。


 注文を終え、待っていると、荷物を置いてあるのとは逆のほうの席に、一人の男が座った。

 男はビールを注文すると、僕に話しかけてきた。


「なあ兄ちゃん、あんたも冒険者かい……?」

「ええ、まあ一応……」


 男は、顔を赤く染めていて、呂律も安定していないようだった。

 これは……昼間からけっこう飲んでるな……この人……。

 この店は二件目かな……?

 なんだか、面倒なのに絡まれたぞ……。


「職業は……?」

「荷物持ちですね」

「かぁー! そうかそうか、まあ。そういうこともあるよな。ちなみに、俺は剣士だ」

「そうですか……」


 なんか、見下されたような気がする。

 ちょっとうざいな、この人。


「まあまあ、きいてくれよ。こう見えて、俺様はAランクの冒険者さまなんだぜ?」

「へぇ……」


 まあ、たしかにAランクには見えないかな……。

 失礼だけど……。

 だいたい、ほんとにAランクなのかな?

 こんな昼間から飲んだくれていて……。

 パーティーメンバーはどうした。


 まあそこは、僕が言えたことではないけど……。

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