第27話 クエスト(4)


 僕たちは嘆きのダンジョンへとやってきた。

 ダンジョンの中をドンドン進む。

 向こうから、モンスターが向かってきた……!

 まず、正面のモンスターをロランが盾で抑える。


「すまんノエル……! あとのモンスターは任せた……!」

「……って、ええええええええ!?」


 いつもは正面のモンスターをロランが抑えたあと、そこからあぶれたモンスターはエリーが焔魔法で焼き殺してくれている。

 だけど、今回はそれがない……。

 いや、ロランどうするつもりだったの……!?

 いや僕も無策だったけど……。

 僕にどうにか、できるのか……!?

 一応、他のモンスターたちにフェンちゃんも襲い掛かる。

 だけど、ロランとフェンちゃんだけでは、モンスターを抑えきれない。

 僕の目の前にも、モンスターが襲い掛かってくる!


「任せたって言われても……!」


 僕は一応、剣を構える。

 まあさすがにBランクのモンスターくらい、なんとかなる……よね……?


「うりゃああああああ!」


 僕は向かってくるモンスターに、剣を振る。

 しかし、僕の剣は虚しくも空中で空振りしてしまう。


「ありゃ……!? やっぱダメじゃん……!」


 やはり、いくら剣が強くても、使うのが僕じゃだめなんだ。

 モンスターたちは、空振りしたまぬけな僕に、容赦なく襲い掛かってくる。


「うわああああああああ死んだこれ……!」


 僕は目を瞑って覚悟する。

 やっぱり僕じゃダメだったんだ……!

 やっぱり、エリーたちがいなきゃ、ロランと二人だけじゃ無理だったんだああああ。

 こんなことなら、無理やりにでも引退しておくべきだった……!


 そのときだった。

 僕にモンスターがぶつかる瞬間――。

 ――キン!


 僕はなぜか無傷だった。

 まるで、僕の周りになにかバリアのようなものが張ってあるような……。

 そして、僕にぶつかったモンスターたちは急に燃え盛り、灰になって消え去った。


「ど、どういうことだ……?」

「おう、さすがノエルだな……!」

「えぇ……? 僕、なんにもしてないんだけど……」


 今のは、マリアのバリアと、エリーの迎撃システムだ。

 まさか、あの二人、遠隔でも僕に……!?

 風邪をひいて寝込んでいるのに、僕への魔法はかけたままだったのか……。

 どんだけ僕のこと大事なんだよ……。


 でも、おかげで助かった。


「ふう……なんとかなったけど……。これは先が思いやられるぞ……」


 その調子で、しばらくダンジョンを進む。


「あった……!」


 ついに、僕たちはお目当てのコルレット鉱石を見つけた。

 コルレット鉱石は、ダンジョンの奥にある広いエリア、そこの壁に存在していた。

 だけど……このエリアだけ不自然に広いような……?

 そのときだった。

 ダンジョンの奥から、とてつもない大きさの、一つ目巨人が現れた。


「こ、こいつは……サイクロプス……!?」

「や、やっぱボス部屋だよね……!!?」


 だけど、あれ……なにかがおかしい。

 なんでサイクロプスがここにいるんだ……?

 たしか、僕の記憶では、サイクロプスはAランク以上のダンジョンでしか登場しないはずのモンスターだ。

 それが、どうしてこのBランクのダンジョンにいるんだよぉ……!


「これはちょっとやべえかもな……。おいノエル……! 作戦だ。俺が大盾であのサイクロプスを惹きつける! そこをお前が伝説の剣でやれ!」

「えぇ……!? 僕が……!?」

「大丈夫だ! 閃光のノエルならやれる……!」


 とはいったって、僕にそんなことができるのか……!?

 だって、僕はただの荷物持ちなんだぞ!?


「グオオオオオ!!!!」


 そうこう言っている間に、サイクロプスは襲い掛かってくる。


「うおおおおおおお!」


 ――キン!


 ロランが作戦通り、大盾でサイクロプスを受け止める。

 かなり重たい一撃。

 なんとかロランは耐えている。

 さすがはロランだ。

 ていうか、化物か……!?


「よし、ノエル! いまだ!」

「うおおおおおおお!」


 こうなりゃ自棄だ。

 やるっきゃない。

 ええい、ままよ。


 僕はサイクロプスに向けて、伝説の剣【月闇の輪舞】を振りかざす。


 ――キン!


 そして、僕の攻撃によって、なんとサイクロプスは真っ二つに裂けた。

 ロランがサイクロプスを抑えていてくれたおかげで、僕の攻撃は空振りすることなく炸裂した。


「グオオオオオ!!!!」


 サイクロプスはそのまま地面に倒れた。


「うおおおお……!? さすがノエルだな!」

「え…………はは…………僕、本当にやったんだ……」


 全身から力が抜ける。

 こんな経験は初めてだった。

 ロランの力があったとはいえ、初めて自分でまともに活躍できた。

 エリーとマリアがいなくても、僕が……活躍できたんだ……!


「うおおおおおお!!!! やったぞ……!!!!」


 僕はその場で大喜びした。

 僕はずっと、自分が無能だと思ってきた。

 だけど、戦い方さえ考えれば、このくらいのことはできるんだ!

 ついに、僕はやったぞ!


「ま、俺とノエルなら楽勝だよな!」

「そ、そうだね……」


 とはいえ、これはAランクだからなんとかなったようなもんだ。

 Sランク以上のモンスターだったら、こんな単純な作戦は通用しなかっただろう。

 うん、やっぱりモンスター怖い。

 引退したい……。


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