第22話 伝説の剣(4)


「死ねえええええええノエル……!!!!」


 店に向かうために歩いていた僕たち。

 夜道を歩いていると、急に後ろから、そんな声がきこえていた。

 僕は咄嗟に後ろを振り向く。


 そこには、目を血走らせたシュバールがいた。

 シュバールは僕に向かって、剣を振り上げている。


「シュバール……!?」


 なんでシュバールがここにいるんだ……!?

 なんでシュバールが僕を襲う……!?

 僕を逆恨みしているのか……!?


 ダメだ、なんとか避けないと……。

 でも、僕なんかに、シュバールよりも早く動くことなんか当然できない。

 剣でガードしようとも考えたが、それも間に合わない。


 ふと横を見ると、シュバールの襲撃に気づいたロランが僕を守ろうと走ってくるけど、それも間に合わない。

 くそ……どうすればいい……!?

 こんなところで僕は死ぬのか……!?

 いやだ、死にたくない……!


「死ねええええええええええええ!!!!」


 シュバールの剣が、僕の首に突き刺さ――


 ――らなかった。


「え…………?」


 シュバールの剣は、僕の身体に弾かれ、宙を舞った。

 僕の身体には、傷一つついていない。


 ど、どういうことだ……?


 まるで僕の身体は、鋼でできているかのように、シュバールの剣を弾いた。

 シュバールも、剣を弾かれたことに驚いた顔をしている。


 次の瞬間だった――。


 今度は僕の肩らへんから、炎の塊が飛び出した。


「え…………!? なにこれ……!?」


 そして、炎の塊は、シュバールを攻撃した。

 シュバールはたまらず、その場にうずくまる。

 え……なんか出たんだけど。

 なんですかこれは……。

 僕知らないんだけど……!?

 僕の身体どうなってんの……!?


「シュバール……! てめえええええ……!」


 ロランがシュバールのことを取り押さえる。

 でも、僕はまだ状況が理解できていない。

 僕に張られていたバリアみたいなのなに……!?

 なんで僕の肩から炎魔法が出たの……!?


 次の瞬間、その疑問の答えが、マリアの口からもたらされる。


「おやおや、これはシュバールさん? 残念でしたね。ノエルさんに危害を加えようとしても無駄ですよ……? ノエルさんの身体は、常に24時間この私がシールド魔法でガードしていますからね……!」

「っく…………」


 えええええええええええええええええええ!?

 なにそれ……!?

 初耳なんだけど……!?

 マリアさんそんなことしてたの……!?

 僕にそんな魔法かかってたの……!?

 全然きいたことないんだけど……!?


 なるほど、なんかおかしいとは思ってたんだよ……。

 戦闘中、明らかにかすったなっていうときでも僕無傷だったし。

 僕の逃げ足がはやいって思ってたけど、全部マリアのおかげじゃねえか!

 僕マジで無能じゃん……?

 

「私の大切なノエルさんには、指一本触れさせませんよ……?」


 いや……なんというか……。

 どれだけ僕のこと大事なんだ……。

 まあ、うれしいような怖いような……?

 せめて僕には教えておいてほしい……。


 補足するように、今度はエリーが口を開いた。


「残念だったわねシュバール。私の魔法で、ノエルには自動迎撃機能がついているの」

「え……そうなの……?」


 それも初耳なんですが……。


「ノエルに攻撃したものを自動で攻撃するように、あらかじめ焔魔法を仕込んであるのよ。だから、ノエルには指一本触れさせないわ……!」

「っく…………」


 いや、っく…………じゃなくて。

 なんなんだよその恐ろしい迎撃システム……。

 僕まったく知らなかったんだけど……!?

 いつからそんなことになってたんだよ……!?


「シュバール、あんたが逆恨みしてくるのは予想できた。だから私はこの前からこうして、ノエルにトラップを仕掛けてあったのよ。まんまとひっかかったわね。ノエルに危害を加えようとしても無駄よ。私の目が黒いうちは、そんなことはさせないわ……!」


 うん、この人たち過保護するぎる……。

 僕のこと好きすぎでしょ……。

 まあ、ありがたいし、おかげで助かったんだけど……。

 せめて一言教えておいてほしかった。

 こっちもびっくりする。

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