第21話 伝説の剣(3)
「ねえ、ほんとにこの剣もらっちゃっていいのかな……?」
僕は伝説の剣を手にしながら、エリーに尋ねる。
だってこの剣、厳密には僕が抜いたんじゃないからね……!?
僕がこのままもらってしまうのは、なんというか気が引ける。
「いいのいいの! だってノエルが抜いたんだし! それに、私は魔法使いだから、剣なんか使わないしね」
まあ、それはそうだけど。
「ロランは……?」
「俺もその剣はやっぱノエルのものだと思うぜ? それに俺はこの大盾を持たなきゃならねえから、そんなデカい剣は持てない」
「そっか……」
「まあちょうどいいじゃねえか。ノエルはこれといって気にいった武器もなかったんだしさ」
「まあね……」
僕はこれまで、特に武器という武器はもっていなかった。
せいぜい護身用に短剣をもっていただけだ。
だって、普段の戦闘で僕の出番ないからね……。
僕が武器を持っていたって、なんの役にも立たない。
「うーんでも、この武器も無用の長物だなぁ……」
たしかにこの武器はすごいのだろう、なんたって伝説の剣だ。
だけど、僕がそれを持っていたって、使いこなせる気がしない。
そもそも剣術の才能だってないし。
僕は防御力だって乏しい。
僕が前線で剣をふるう姿なんて、想像もつかないよ……。
「なあノエル、ためしにその剣振ってみろよ」
「え…………?」
「いざというとき、戦場で初斬りよりは今試したほうがいいだろ? ほら、俺の盾に向けて斬りかかってこいよ!」
「うーん、まあそうだね。一度くらいは試しておくか」
僕はロランにいわれるがまま、試しに剣を使ってみることにした。
もしかしたら、無能の僕でも、この剣さえあれば少しは戦力になるかもしれない。
「いくよ! うおおおおおおおお!」
僕はロランに向かって剣を振った。
すると――。
――キン!
ロランが剣を盾で受け止めたその瞬間。
「うわあああああああああああ!?」
ロランはそのまま後ろに数メートル吹っ飛んだ。
「ええええ……!?」
まさかの事態だ。
あのひ弱な僕が、ロランを吹っ飛ばしたなんて……信じられない。
「だ、大丈夫!? ロラン!」
「あ、ああ……大丈夫だ……それにしてもすげえな。さすがはノエルだ!」
「いや、これすごいの僕じゃなくてこの剣だと思うけどな……」
どうやら、伝説の剣というだけあって、その威力はすさまじいようだ。
この僕が適当に振っても、これだけの威力があるのだから。
だけど、これ……実戦でつかえるか……?
実戦で止まってる相手に一方的に斬りかかれることなんて、そうそうない。
前線で剣をぶつけ合いながら、戦うのなんてとてもじゃないが無理だ。
そんなの、僕が死んでしまう。
攻撃力は手にしたけど、僕紙装甲だからな……。
うーん、これはたしかにすごい武器だけど……。
使いこなせる気がしない……。
さっそく引退したい。
「ノエルくんはすごいです! ロランさんを吹っ飛ばしてしまうなんて……! ますます強くなりますね!」
「いや、アヤネ。僕じゃなくてこの剣がすごいんだって……」
先ほどから、【氷上の輪廻】のメンバーたちも一緒にいる。
伝説の剣を抜いた流れで、せっかくだからこのまま一緒にご飯でもということになったのだ。
僕たちは今、こうして剣を試し斬りしながら、飲食のできる店に向かっている。
「ノエルさん、せっかくだから、その剣に名前を付けたらどうでしょう? いつまでも伝説の剣じゃ、わかりにくいでしょう?」
とマリアが言ってきた。
「たしかに、そうだね。うーん、どうしよう……。【月闇の輪舞】とかかな……」
「かっこいいです……!」
僕たちは雑談をしながら、店に向かった。
◆
【シュバール視点】
だめだ、もう許せねえ。
俺はノエルを許せねえ。
パーティーを追放されて、あれから俺はさんざんな目にあった。
俺の言ってることは誰にも信じてもらえず、俺は嘘つき呼ばわりされた。
そして誰にも新しいパーティーを組んでもらえず、俺はひとりぼっちだ。
くそ……それもこれも、全部ノエルのせいだ。
俺は……ノエルを殺す……!
これは復讐だ。
あいつが悪い、俺は悪くない。
あんな奴は殺されて当然なんだ……!
俺は剣を握りしめながら、ノエルのあとをつけていた。
ノエルのやろう……ムカつくぜ。
ノエルは今、【霧雨の森羅】のメンバーを従えながら、夜道を歩いていやがる。
暢気なものだ。
しかも、さらに別の女どもを4人ほど侍らせていやがる。
なんであんなカスみたいなヒョロガキがモテるんだ……?
なんであいつがあんないい思いして、俺はひとりなんだよ。
おかしいだろ……!
くそ、どいつもこいつも……!
コロス……!
コロス……!
コロス……!
俺はやれる。
俺ならやれる。
俺はノエルの後ろからそっと近づいて――。
「死ねえええええええノエル……!!!!」
思い切り剣を振りあげた。
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