第6話 追放(1)
【シュバール視点】
俺はシュバール・ロワン。
このAランクパーティー【霧雨の森羅】の切り込み隊長を務める男だ。
俺には、どうにも納得のいかないことがあった。
「クソがよ……!」
――ドン。
ホテルの一室で、俺はタンスを殴りつける。
俺は今のパーティーの状況に、納得がいかず、いらいらしていた。
俺たちはAランクパーティーで、次はいよいよSランクにあがるってのによ。
それなのに、なんだあの雑魚のお荷物は。
「なんでいっつも、ノエルばっかり……!」
うちのパーティーには、どうしようもないお荷物がいる。
それがノエル・グランローグ。
ただの荷物持ちで、なんの戦闘能力も持たない男。
せいぜいマッピングが得意なのと、逃げ足がはやいくらいしか、特筆するところのない地味な男だ。
「くそ、なんで切り込み隊長でいつも血まみれの俺がモブ扱いで、あのノエルとかいう無能ばかり持ち上げられるんだ?」
他のパーティーメンバーはみんな、正直言っていかれてるやつばかりだ。
ロランはノエルに心酔しきっているし、女どもはみんなノエルにほの字だ。
なんであんなクソゴミが、イキっていやがるんだ……?
マジで理解できねぇ。
俺以外のパーティーメンバーの目は節穴か……?
なんであんな逃げ回ってるだけのやつを優遇するんだ。
それに比べ、俺の扱いの悪いこと……。
「俺の顔が悪いからか? 畜生……! もう我慢ならねえ……!」
今日こそは、きっちり言いたいことを言ってやろう。
俺はそう決めた。
俺たちもSランクパーティーになるのだ。
いつまでもお荷物を置いたままにはしておけないぜ。
今、ちょうどノエルはギルドへ報告をしにいって、留守だ。
エリーも、そのノエルを追ってどこかに行ってしまった。
ロランとマリアもどこぞをふらついているのか、俺は置いてけぼりだ。
こんなときまで俺はひとりぼっちなのかよ。
みんな、俺のことをないがしろにしすぎだろ。
俺はこのパーティーの大事な切り込み隊長なんだぞ?
もっと俺を重宝しろよ。
いっつもこうだ。
プライベートでも、自由時間になると俺は誘われない。
くそ、みんな俺のこと馬鹿にしやがって。
あいつらが帰ってきたら、今日こそは言ってやる。
しばらくして、みんながホテルに戻ってきた。
俺は、ノエルの首根っこをつかんで、言ってやった。
「おい! ノエル・グランローグ。荷物持ちしかできない無能め! 今日でお前は追放だ! もうこのパーティーにお前は必要ねえ。Sランクに上がるんだ。お前のようなお荷物を置いてはおけねえ、みんなも賛成だよなぁ……!?」
俺は、そう叫んだ。
◆
【ノエル視点】
ホテルに戻った僕に対して、シュバールはなにやら神妙な顔つきで、近づいてきて、話を切り出した。
「もういい加減、我慢ならねえ……!」
シュバールは僕の首根っこをつかまえると、壁に押し付けて、声を荒げて言った。
「おい! ノエル・グランローグ。荷物持ちしかできない無能め! 今日でお前は追放だ! もうこのパーティーにお前は必要ねえ。Sランクに上がるんだ。お前のようなお荷物を置いてはおけねえ、みんなも賛成だよなぁ……!?」
その瞬間、僕はよろこんでいた。
よかったぁああああああああああ。
この瞬間を待ちわびていたんだよ。
はあ。本当によかった。
僕、前から追放してほしかったんだよねぇ……。
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