三色目
「よう、おまたせ」
離れた位置から男にしては高い、特徴的な声が聞こえる。一瞬自分に向けられたものでは無いのかと錯覚してしまうほど遠い位置からの声だった。変に緊張しいなアイツらしいと思った。
「イブ、久しぶり。」
連絡直後に声をかけるのかと少し笑いながら顔を上げるとわかりやすい頭が目に入る。目に優しくないビビットのオレンジ色と目が合う。彼の名前は中谷一颯。口数は多くないがアツい男だ。明るすぎる髪色を除けばきっとクールに見えることだろう。実際、昔はそうだった。あがり症のくせに生徒会長をやったり、部長をやったりと、とんでもない行動力と思わずついて行きたくなるほどのカリスマ性を持ち合わせている。その反面、超がつくほどの機械音痴で、パソコンを教えてくれ、スマホの使い方を教えてくれと連絡が来たりする。一颯は俺の幼馴染で、俺が尊敬する人間のうちの一人だ。
「まさかハルがこんなに早く着くとは。俺が一番だとばっかり思いよったけ、びっくり。」
「なんでよ、俺だってたまには間に合うこともあるよ。」
そうなのだ。俺はいつも誰より遅く到着する。今日はたまたま家に帰らず、駅で待機していたので間に合ったのだが、授業後、家に帰っていれば恐らく待ち合わせ時間から三十分経っても到着していなかっただろう。
「ユウは後で来るって言っとったよな」
「バイト終わったら来るって。でもどうじゃろ、なんかまだ仕事しよったんよね」
「どうする?先に店行く?」
「LINEしてみる。」
言い終えないうちにイブの手に持ったスマホからポコポコと間抜けな音が聞こえる。まるで見計らったようなタイミングだな。とイブが呟く。
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