第14話

 「と、言う訳で、遅ればせながら紹介したい。こちら、神様だ。」

 「・・・はい!?」「まぁ!」

 なんだか申し訳なさそうにペコペコしている村長の隣でクアラが胸を張り腕を組んでムフンとやっている。とても上機嫌だ。

 「いやぁ、若い頃に留学していた極東の国の馴染みの本屋に祀られていたお方でね。こういう姿に顕現する事は珍しかったんだが、なんだか条件が重なって実体を得られたんだろう。」

 「村長、それで説明できたと本気で思ってます!?結構分からない事だらけの中、半月くらい部屋を貸してた私が納得できるとでも!?」

 「いやはや、私もさっさと受け取ってしばらく屋敷に祀って、軽い旅行感覚にでもして差し上げようかと思っていたんだがね。タイミングが悪かった。」

 「神様の旅行・・・なにそれ・・・。屋敷に祀る・・・祀る・・・!神棚!?」

 「おぉ、随分博識じゃないかユナ君!そうだね。極東にはそういう形の祭壇があるんだよ!」

 「なんだか少し謎が解けたみたいね・・・ユナ・・・ごめんなさい。」

 「いやぁ・・・そんなことってある?」

 自分の正面に立つ長身の美女、いや女神をおずおずと見上げる。また穏やかな表情でこちらを眺める視線とうっかり目が合ってしまった。

 「ひゃあ、神様だったかぁ・・・!」

 「・・・なんだかすっかり打ち解けてるみたいだね。」

 「まぁ、最近は毎日ご近所の方も交えてお茶会なんか開いちゃってまして。」

 「なるほどなるほど。・・・それじゃあ、どうしようかなぁ。ねぇ、神さ、いや、クアラ様。」

 「へぇ?」

 「君たちにとっては友人だが、私にとっては神様に違いないからね。神様の意思に反してヤシロを動かすなんて禁忌も禁忌さ。」

 「つまり・・・それって・・・」

 「うん、しばらくこの方を君の郵便局に住まわせては頂けないか。なに、必要なら援助もする。だから、お願いできないかな。」

 「・・・う~ん。」

 「・・・いいんじゃない?ユナ。だって最近なんかあなたの不在中に時間外窓口に立ってくれてるのよ?村のおば様方だって最近はすっかりクアラとのお茶会が楽しみだって。」

 「う~ん。」

 「よろしく頼む。ユナ。」

 「はい、わかりました・・・。そう言う訳だから、クアラもしばらく窓口当番、よろしくね?」

 彼女を見上げようとする前にさっき村長も受けただろう物凄い風と質量の柔らかな衝突を体験した。

 「うわ!ちょっとクアラ!今服汚れてるから!あれでもあなたは汚れないからいいのか・・・じゃなくて!これからもよろしくね!だから放して!」

 「ハハハ!屋敷なんかよりよっぽど楽しそうだ!よかったよかった!」

 「ふふふ。これからも楽しくなりそうね。」

 『グルルルルル!』

 「もう!早く休ませて~!」


 ここは丘の上の郵便局。私と、竜と、極東の神様・・・が暮らす、竜の郵便局・・・。

 のどかな景色と竜がある、何の変哲もない郵便局。の、筈だったんだけど!一体これからどうなっちゃうの!

 「・・・ま、なるようになるか。」

 すっかり晴れた空に安心したのか、木の陰に隠れていた小鳥たちが羽ばたいて日の射す丘に飛んで行く。いつもの変わらない優しい風が、ハイランドの草原風景を駆けて行く。

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配達員ユナの郵便日誌 ~不思議な荷物と魔法の嵐~ 音無詩生活 @My_Life_Of_Music

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