第11話
襲来を感じてからの勢いは凄かった。ほんの数分前までザワめき程度だった草木は今や引き抜き薙ぎ倒されんとばかりの雨風に必至の抵抗を見せている。しかしその風景も豪雨に押し流されるようにどんどん暗闇に飲まれて行く。
「怖いわ・・・。」
「意思を強く持つんだベルタ。魔法の闇に立ち向かえるのは命の光だけなんだ。こんな雨の中では、勇気と祈りを忘れてはいけないよ。」
「・・・わかったわ。大丈夫かしら、ユナ・・・。」
「わぁ!凄い雨ね!それに風景がどんどん暗くなっていくわ!」
郵便局にはあまりの豪雨に逆にテンションが上がっている元気な少女がいた。
「暗闇の魔法ってどんな感じかと思ってたけれど、なるほど確かに”闇が落ちてくる”って感じなのね~!」
自分でも何となく分かる。これは空元気だ。暗い丘の上に一人というのはやはりどうしても寂しさが勝ってしまう。最早どうなるのかも分からない豪雨を目の前に、もうできるのは自分で自分を励ますか、祈るくらい。
「わぁ・・・!凄い凄い!雨、どんどん、暗く・・・。」
想像以上に早く闇が村を包み、気付けば村の家の灯りも見えるかどうかという小ささになっている。
小さい頃から一人が苦手だったことを思い出す。夜はセム兄さんと一緒じゃないとトイレに行けなかった。怖い本の読み聞かせの後は無理を言ってセム兄さんや友達と夜通しトランプをした。
なぜだかどんどん暗闇を恐れていた記憶が呼び起こされる。これも魔法の影響だろうか。
ふと気付くと、窓枠に寄りかかって俯いていた肩をクアラが並んで大きな手で包んでくれていた。顔を見上げると相変わらず黙って空を睨んでいる。
気付けば随分の時間、暗くなるだけの外の風景を眺め続けていた。そうしていないと、世界で自分だけが取り残されているような気がしてしまうから。寂しさがどんどん頭から離れなくなっていく。
「・・・うぅ。嵐過ぎないかな・・・。助けて・・・神様。」
不思議な事が起きた。
隣でいきなり物凄い量の光が溢れた。ちょうどクアラの位置からだ。
「え・・・?」
再び顔を持ち上げると、何故かクアラが、口を閉じた満面の笑みでこちらを見つめている、物凄く光りながら。
「クアラ、さん?なんかいつにも増して光ってません?それにとっても眩しい笑顔・・・。」
まるで嵐も吹き飛ばせそう・・・あれ?なんか窓の外も明るくない?
クアラを中心に展開された半径10mくらいの光のドームの中はなぜか雨が打ち消されて昼のように明るくなっている。
突然クアラが音もなく入口の扉に向かって歩き出した。
「え、ちょっとクアラ!」
勢いよく外に飛び出したクアラを追って出ると、案の定クアラの周りだけ昼のような明るさに包まれている。
「クアラ・・・あなた一体・・・。」
唖然としてまた彼女の顔を見上げていると、バッとこちらに向き直ったクアラが両手を大きな手で持ち上げ包んで揺らして来た。
頑張れって言ってる・・・?
「何とか、できるかな。」
またクアラの光と笑顔が一際眩しくなった。
「・・・うん!やれるだけやってみよう!」
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