第4話 最初の刻
調はインターネットでつい最近、ゴブリンによる被害があった場所へと出向く。
ビルや店のガラスは割れており、災害が当時のまま止まっている様な感覚に陥る。
「初めてみたけど酷い有様だな。それでゴブリンはどうやって倒せば良いんだ?」
(殴って殺せ。この世界の武器は刃物ですら奴らには効果がない。奴らに効果があるのは魔力と聖気。やり方を教えてやる)
そういうとザウスは脳にイメージを焼きつかせた。拳に魔力を纏わせる技術を。
「これが魔力運用。もっと高度な技術は教えることは出来るのか?」
(お前は幼児に高度な勉学を教えて覚えられると思うのか? 脳の容量がパンクして死ぬぞ?)
「は、はい。じゃあまずは魔力運用からだな。全身を巡り、右手に集め、留める」
(それで殴り殺せ。ゴブリン程度はそれで充分だ。威力も普通に殴るより強力なはずだ)
「魔力は武器に纏えないのか? その方が強力な気がするけど」
(それは追々だな。まずお前の技量が足りない。そしてこちらの世界の武器では魔力に対する耐久性がない。魔力を流しただけで壊れるだろう)
「そうなんだ。じゃあとりあえずゴブリンを探しますか」
人が歩いているが数は少ない。
夜だからという理由もあるが、やっぱり鬼の存在が大きいだろうと予測した。
ビルの陰から奇妙な声をあげる背丈の低い怪物が現れた。数は5匹。全員がナタや棍棒といった武器を持ち歩いているようだ。
「いた」
(お前はまだ弱い。五匹のどれかが単独行動に出たら追って殺せ。そうすればレベルが解放される)
調は頷くと物陰に隠れながらゴブリンの様子を窺う。だがずっと集団で動いている様で中々離れてはくれない。
「中々離れてくれないな。そうだ、良い事を考えた」
(何をするつもりだ)
調は大声で叫ぶとゴブリンは一斉に振り向き、走って追っかけてくる。
(馬鹿が。殺されたら終いだぞ)
「良いから良いから。任せてよ」
調は路地裏へと向かう。
それもかなり狭く、人が1人入れるかくらいの狭さだ。
ぐぎゃぐぎゃと興奮しながら獲物を追いかける。あるのは食欲と殺意。
彼等は慢心し、いつもの様に傷つけ、肉を食うつもりで追いかけた。
誘き出されたとも知らずに。
(なるほどな。ここは都合の良い場所だな)
列になるゴブリンは早く殺したい欲求に頭が一杯になっている。
「戦いは冷静な奴が勝つ。それがバトル漫画で予習した答えだ」
魔力を纏った右ストレート。
先頭のゴブリンの顔がひしゃげ、バキバキという骨の粉砕した音が聞こえた。
武器もろとも後方へ吹き飛んでいく。
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レベル機能が解放されました。
現在のレベルは[1]です。
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頭に響いた声は女性の綺麗な声だった。
「誰の声?」
(アナウンスだな。綺麗な声だろう。私が女体化した時の声だ)
「げっ。てか性別とかあるの?」
(あるような無いようなって所だな。神は性別に縛られないのだ)
吹き飛んだゴブリンの先頭は死んだが、残りの4体は起き上がり怒りに声を荒らげて武器を振りかざして走ってくる。
「奴らに知能はないのか?」
(所詮はゴブリンだ。単純な思考能力しかない)
「だが武器が効かなければ倒すのは不可能だったと言うことか。いいね……面白くなってきた」
この先待ち受ける戦いを想像し、血が熱くなる。つまらない日常から抜け出し、血が火のように燃え盛る。そんな体験がこれから待ち侘びていると思うと興奮が頂点に達した。
アドレナリンが多量に分泌される。
魔力を両手に纏い、連打、連打、連打。
(ほう。魔力運用に才があるか。それも天賦の才が)
調はいつもより体が軽く、疲労も感じなかった。あっという間にゴブリンを殺し尽くし、顔面は返り血で汚れていた。
「はぁ、はぁ、あぁあああああ楽しかった」
空に向かって満面の笑みを見せる。
今まで味わえなかった非日常に興奮し、絶頂した。
脳内には快楽物質で溢れている。
最高に幸せのひとときであった。
(よくやった。それではクエストを開始する)
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〔ゴブリン10体を討伐せよ。0/10〕
報酬:
−Skill[乱れ斬り]を獲得
受注しますか? Yes/No
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調は迷わずYesを選択し、次のゴブリンを探しに向かった。
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