第2話

二軒目の100均は一軒目とは別のスーパーの3階にある。


エスカレーターで昇っていると、前方にどこのお姫様かと思うくらいドレス姿のバッチリ決まった3、4歳ごろの子どもがお父さんと思しき壮年の男性と並んでいた。

その男性はどうやら赤ちゃんを抱っこしているらしく、抱っこ紐が見えている。

赤ちゃんの顔は見えないが、ふさふさの髪の毛と小さな足が少し覗いていた。

よく見るとお姫様も抱っこ紐をつけているらしく、人形が覗いている。


ひょっとしたら、わたしも小さいころはこんな感じだったのかな?

二つ離れた弟とのやり取りを思い出しながら二本目のエスカレーターへと向かう途中、お姫様はぴたりと立ち止まって、視線の先に置いてあるらしい物を買ってほしいと言い始めた。

何気なくちらりと見ると、それは目前のお姫様にきっとよく似合うだろうフリルのついた水色のエプロンだった。

ただ、小学生くらいの子どもが身に着ける物なのか、少し大きそうだ。


あらら。


なんとなく困ったことになりそうな予感がしつつも、何も持ち合わせていない赤の他人のわたしにはどうすることもできず、間をすり抜けて上へ昇るしかなかった。


「すみません。ほら、とりあえず邪魔になるから避けよう」


男性がぺこりと頭を下げる。

わたしも軽く会釈してニコリと微笑むと、お目当ての階へとたどり着いた。


今度は店員さんのもとへとまっすぐ向かい、お薬カッターがあるか確認する。

すると、幸いあったようですぐに見つかった。

レジへの通り道、ふと一つのシールが目に留まる。

女の子やキッチンツールの描かれたキラキラしたシールだった。


わたしは気づいたら手に取っていた。

もしかしたらと思い、お会計を済ませると急ぎ足で2階へと降りていく。

予感が当たり、例のお姫様はしゃがみこんで一歩たりとも動こうとせず、お父さんは困っている様子だった。


駆け寄ると、先ほど買ったシールを差し出し、話しかけた。


「おばちゃん、間違えてカゴに入れてお会計しちゃったからよかったら」


すると、女の子はスッと立ち上がり、「ありがとう!」と言って笑った。


「ありがとうございます」


男性がそう返すと、お姫様の頭を撫でながら「サクラ、エプロンはもっとピッタリ合うのがあると思うから、また今度探しに行こう」と言うと、お姫様が元気よく返事をして、親子は去っていった。

そんな様子を見送ると、わたしの時もこうだったら良かったのに、なんて羨ましいという気持ちになる。

今思うと母親とわたしはお互いに我の強い者同士。父親もさぞかし苦労したことだろう。

母親から、いろんな理由で比較されたり我慢や変更を強要されたりしながら育った幼少期を思い出しながら、下へと降りていった。

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