青の春に
つつみやきミカ
絵の具の匂いを嗅ぐと、春の日の美術室を思い出す。
美術部だった私は、作品展に出品する作品を完成させるため放課後はいつも美術室にこもっていた。厳しい部活ではなく、活動日もあいまいだったので、放課後に用もない私は常に美術部に居座っていた。加えて部員が少なかったため、美術室にひとりきりになることも多々あった。春から三年生になって、高校最後となる作品展に出品するための絵をずっと描いていた。あの時もひとりで。
ふと、ギーと新しめの美術室のドアが鳴る。誰か美術部の部員が来たのかな、と思ったがそうではなかった。
ドアの隙間をすり抜けたのは、透けた細い髪を肩まで伸ばした男子生徒だった。女子生徒だと言われても納得してしまうだろう、その華奢な肩から伸びた腕が、重そうに美術室のドアを支えていた。その容姿でなぜ、私が彼を男子生徒だとわかったのかというと、三年生になって同じクラスになったからである。彼は目立つ方の人間ではなかった。しかし、同じクラスになってみるとどこか世間ズレしているというか、変わった人間だと感じた。決して悪い意味ではない。名前を橘かおりといった。
橘かおりは美術部に私しかいないことを確認すると、静かにドアを閉めて言った。
「シャーペンを忘れて、取りに来たんだけど、知らない?」
少し低い声は彼の持つ少女性を欠いていた。
「忘れ物なら、前の机にあると思うよ」
今まで挨拶も交わしたことがないのに、橘かおりが気軽に話しかけたということは、わたしが同じクラスの生徒であることを知っているんだろう。それには少し驚きだ。私はクラスでも目立たない方であるからだ。彼は誰に対しても親しげであり、成績も良くも悪くも目立たない人物だった。クラス替え直後ということもあるが、あまり接点は持たないタイプである。私からすると、容姿のせいもあり、近寄り難く思われたほどだ。
橘かおりはありがとう、とこぼした後教員用の机の上から彼のものと思しきシャーペンを拾い上げ、あった、とつぶやいた。そしてそのままドアに近づき、美術室を去るのかと思いきや、ドアノブに手をかけて立ち止まる。その行動に疑問を感じ、わたしも橘かおりを見た。透けた髪にほどよく似合わない黒目と視線がかち合う。
「藤井さん……だよね? 美術部だったんだ」
「うん」
彼が私に興味を持っているとは思えなかった。話しかけられて私はつい怪訝な表情をしてしまう。橘かおりは私の表情を気にも留めず、視線を私が向き合うキャンバスに移す。
「へえ、すごいね。その絵はもう完成してるの?」
「まだだけど……」
橘かおりが言った『すごいね』が、絵を描くことができる私に対しての称賛なのか、絵に対する称賛なのかがいまいち掴めなかったが、橘かおりと話しているという予想外の事態がその疑問をないがしろにさせた。
「そうなんだ!」
そう言う橘かおりになんと返答すればいいのかわからず、私は頷く。
「そうだよ」
その言葉を聞くと、橘しおりは控えめに咳き込むように笑った。息を吐いて笑うのは彼の癖なのだろうか。まだ彼の目元が三日月になっているうちに、彼は言った。
「すごく綺麗な絵だね。そんな綺麗な絵、初めて見た」
その言葉を残して、ひらりと彼は美術室のドアを開けて、去っていった。ドアが開いた隙間から生暖かい風が吹き込む。
その時、私の春が加速した。
結局、その絵は賞をとれなかった。なんの冠もなくその後もただ美術室に佇み続けた。けれど、橘かおりが綺麗だと言った、そのことが作品の付加価値になっているように思えた。
橘かおりとは、その後も特に仲良くなることはなかった。たまに話す程度で、橘かおりにとっての友達以下でしかなかった。橘かおりのことをやたらと見ていた時期もあったが、その時期にも橘かおりが特別な好意を持っている相手がいるということに気付いたし、それを思うとなんだか私の感情もどうでもよくなって、やめた。橘かおりにつり合うつり合わないを考える前に、誰かに自分の感情を振り回されることに嫌悪感を感じた。私は全く絵を描かなかったわけではなかったが、その気持ちを作品にぶつけることはなかった。その作品を残して、感情をこの世に露わにすることも恥ずかしかった。けれど、大学受験の勉強の合間、ふとなにかを考える時、橘かおりのことを思い出した。橘かおりがどこの大学に行くかとか、そもそも進学しないのかとか、そういった話も彼とはしなかったし、卒業式で会うのが最後だろうなと思っていた。その予感は正しかったのだが。
卒業式の日、橘かおりに告白をした。
緊張した覚えはあまりない。ただ好意を伝えたかっただけだった。迷惑かもしれないと思ったが、このまま自分だけでこの感情を消化しきる自信はなかった。橘かおりは少し驚いたような顔をしたが、私に、すでに自分には恋人がいるということを告げた。恋人の名前まで教えてくれたが、その人はクラスメイトではあったものの、男子生徒だったため、私とは接点もあまりなかった。だから嫉妬心も何も沸いては来なかったことを覚えている。正直、橘かおりがその人のことを好きなのだとわかっていた。予想通りだった。納得しただけだった、本当は橘かおりと付き合いたかったのかもしれないが、傷つくのが嫌で保険をかけていたのかもしれない。今となってはそんなことも思い出せないが。
「ごめんね」
と、橘かおりは何度も言った。謝られることなど何もしていなかった、むしろ一方的にこちらの感情をぶつけてしまった私が謝るべきだと思った。どこかの企業のお祈りメールのように、あなたの幸せを願っております、また機会があればどこかで、程度で流して欲しかった。私の気にならないところで申し訳なさを感じている橘かおりがもどかしかった。もっと違うところで、橘かおりの感情を動かしたかった。しばらく無言が続いた後、橘かおりは別れを告げた。
「じゃあ、またね藤井さん」
私はうん、またね、とだけ返事をして、去っていく橘かおりを見つめた。
橘かおりにはその後もう会うことはなかった。またねとは言っていたものの、もう二度と会うことはないんだろうな、と感じてはいた。口ではまたねと言いつつも、橘しおりももう私に会うつもりはなさそうだった。数年後に開催された同窓会にも来なかったし、私もあまり思い出すことはなかった。橘かおりが綺麗だと言ったあの絵は、卒業式が終わった後今までの作品と一緒に燃やした。やはりそれなりの時間と手間をかけた作品なので、塵にしてしまうのは惜しいかなと一瞬燃やすのに躊躇したが、火をつけてしまえばどうでもよくなった。今もそうしたことは後悔していない。
数年後、私は美術教師として同じ美術室に戻ってきた。
将来の夢を持たなかった私は、高校時代に打ち込んだ美術を職業にすることを選んだ。もっと言うと当時の担任から勧められたのがそれだっただけで、特にこだわりも何もない。
それでもそれなりに教師という職業も面白いところがあるし、進路選択は間違いではなかったと自分に言い聞かせている。
春休みという今、わざわざどうしてここ美術室にいるのかというと、新学期から使用する道具などの個人的な荷物を置きに来たからである。もちろん、荷物を置くだけなので長い時間滞在する必要はない。しかし、今の美術室がどうなっているのかというのも気になり、しばらくここにいることに決めた。変わっていないだろうという気はしていたし、別に教室を眺めてみたところで感慨深くもなかった。美術室は散乱する絵が当時と変わっていただけで、実際大して変化はなかった。この教室では多くの時間を一人で過ごしたため、友達との思い出もあまりない。
なんだかつまらないな、と首を傾げた時、急に目が覚めるように橘かおりのことを思い出した。彼は今どうしているだろうか、とふと思ったが、気になって仕方なくなるほどの興味はなかった。当時の恋人とよろしくやっているにせよ、一人で楽しくやっているにせよ、橘かおりはあまり変わっていないような気がした。
そのとき、美術室の、もう新しいとは言えないドアが控えめな音を立てて開いた。
教室の外から入り込むあたたかい風でひどく透けた髪が揺らめく。
少し離れた位置からでもわかる、長い睫毛、光を取り込んだ瞳、薄い唇。
「かおり」
その名前が口から出たのに気づいたのは、大きな音でドアが閉まってからだった。
困惑した。橘かおりが目の前にいる、と思った。そんなはずはないとはわかっているが、動揺は隠せなかった。ただ私の記憶の橘かおりと、目の前に立つ橘かおりのような人物とでは違う点があった。橘しおりよりも髪が短くショートカットなのと、女子の制服を着ている点だ。
「……こんにちは」
その少女は美術室に人がいると思わなかったのか、驚いた顔をして、控えめな挨拶をした。細く高い声だった。反射的に私もこんにちは、と返すが少し声はかすれていた。
冷静に考えて、いくらなんでも、このタイミングで、橘かおりがこの美術部に現れるはずはない。ましてや女子生徒の制服を着ているのだ、別人に違いない、他人の空似というには、あまりにもできすぎているが……。この時間にここに来たということは美術部の部員だと考えるのが妥当だろう。私は焦る息を無理に飲み込んだ。
橘かおりにそっくりな彼女は机に鞄を置くと、静かに教室を横切る。私はその姿を焦点の合わない目で追いかけ、声をかけた。
「美術部?」
「あ、はい、そうです」
教室の端に干されていた水入れとパレットを手に取った彼女は言う。
「そうなんだ、じゃあはじめましてだね、私、四月から美術部の顧問になる、藤井です」
「あ、新しい先生!」
ひと際大きな声を上げて彼女の顔が明るくなる。ぱたぱたと歩きづらいであろう上履きのかかとを鳴らしながら、自分の鞄を置いた机に抱えていた画材を放り出した。
「私、三年の橘しおりと言います。よろしくお願いします」
そう言ってぺこりと頭を下げる姿は、橘かおりそのままだった。
「一応部長なので、連絡とかあれば言ってください」
橘しおりという名前なのか。なるほど、苗字が一緒ということは、血縁者だろうか。ここまで瓜二つなのだから、逆に赤の他人である方が怖いというものだが。
「橘さんね。よろしく」
彼女は、はい、と控えめに答え、笑顔を見せた。
「ねえ、橘さんって、橘かおりくんの親戚か何か?」
私がそう聞くのに時間はかからなかった。彼女は、私の唐突な質問に一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに大きく頷いた。
「あ、はい! 兄はかおりって言います」
兄。あっさりと関係を把握してしまい、拍子抜けする。橘かおりに妹がいるなんて知らなかった。親しくなかったのだから知らないのも当然だが、橘かおりが兄であるイメージがなく不思議に感じてしまう。
「あ、やっぱり? 私、高校の時、橘……かおりくんとクラスが一緒だったんだよね」
橘しおりはええ、と声を出して目を見開いた。
「そうなんですか! へえ、じゃあ先生もここの高校なんですね」
「うん、そう。ここの美術部だったんだ」
「えっすごい! じゃあ私の先輩ってことですか」
へえ~と、息を吐く。私が小さく頷き、そこで会話は途切れた。私も橘しおりも微妙な空気を吸った。それから、彼女は思い出したように机に散らばった数種類の青の絵の具を適当に並べて、一番深い色の青のチューブを手に取り、その蓋をひねった。一体何の絵を描いているのか、パレットに大量の青が乗せられる。私がその様子を眺めているのに耐えきれなくなったのか、青に視線を落としたまま彼女は言った。
「さっき私のこと兄だと思いました?」
すこしどきりと心臓が鳴る。
「気のせいかなと思ったんですけど、かおりって聞こえた気がしたので」
何も後ろめたいことはないはずなのに、なんだか答えづらい気がして、やっとの思いで言葉を絞り出す。
「う、うん、ちょっとだけ。似てるって言われない?」
「言われます」
そう言って橘しおりは咳き込むように笑った。さすが兄妹と言うべきか、笑い方も似ている。ぼんやりと橘かおりが笑った瞬間を思い出した。
「今日は橘さん一人なの?」
橘しおりという、橘かおりの妹と二人きりで美術室にいるのがひどく不思議に思えて、橘しおりに尋ねる。彼女は首を傾げた。
「たぶん……今日は本当は活動日じゃないですから。私、最後の作品展に出品する作品を早く完成させたくて来てるだけなんです。受験勉強は余裕をもって始めたいので」
私は高校時代、春休みにも美術室が使えることは知っていたが、部活に顔を出したことはなった。恐らく先輩も後輩も、顧問の先生もそうだっただろう。美術部はそんなに熱心な部活ではなかった。私も実技試験があるからと理由をつけ、のんびりとギリギリまで部活に行っていた。おかげで筆記試験がギリギリだったのは反省すべき事柄である。そのことから考えると、橘しおりは立派だなと感心してしまう。
「計画的で偉いね」
また橘しおりは咳き込むような笑い声で答えた。
「いやいや」
そう言って橘しおりは青をすくった筆をキャンバスに擦り付ける。
ふと、今まで橘しおりと話していたときだけ時間が止まっていたような感覚に襲われて、時間を知りたくなった。左腕につけた腕時計の文字盤を見て思ったよりも時間が経っていないことを確認し、自分の本来の用事を思い出す。
「じゃあ、私は荷物置きに来ただけだから帰るね。帰るときは窓の鍵、閉まってるか確認してね」
「はい! 藤井先生、ではまた」
はつらつとした声を聞きながら、私は早足で美術室を出た。私が勢いよく押した美術室のドアが穏やかに閉まる。それを見届けて、私は息を大きく吐いた。
ずっと気づかないふりをしていたが、明らかに心拍数は増加していた。
事実として、夢ではなくて、橘かおりの妹がいた。なんなら橘かおりとそっくりの。
こんなことがあるものか。私は橘かおりとの思い出を美術室でしか蘇らせられないといっても過言ではないのに、その、同じ学校の美術室で出会うことがあるのか。
私は複雑な気持ちを抱えたままその日は帰路に着いた。
家に帰って埃を被った卒業アルバムを開く。自分が何組だったのか思い出しつつ、ページを一枚一枚めくった。そこに色褪せることなく映る橘かおりの顔と、今日目に焼き付けた橘しおりの顔を頭の中で比べ、やはり瓜二つだと確認する。中性的な顔立ちだと思っていたが、本当に女子生徒であっても綺麗だ。橘かおりのことを今更事細かに思い出す気にもなれず、ぐるぐると回る気持ちに酔いながら私は目を閉じた。
新学期になって、そこから橘しおりは毎日部活に来た。わたしも顧問という立場上、出来るだけ美術室にいるようにしていたので、結果として毎日のように顔を合わせるようになった。しかし、私は一年生のクラスの担当だったため、三年生である橘しおりを美術室以外で見ることはほとんどなかった。
一年や二年の部員もいることはいたが、週に三回ほどある活動日に気まぐれに来るのみで、橘しおりほど熱心に毎日絵を描いていなかった。
この日も正規の活動日ではない日で、美術室には橘しおりと私だけだった。最初の頃こそ、私は勝手に少し緊張感を感じてはいたが、しばらく経てば二人きりの美術室は普通の風景で、たまにお互い軽口を叩きながら絵を描いていた。
すると、そんないつも通りの時間に、美術室のドアが勢いよく開いた。
「橘さんいますか」
素朴な雰囲気の男子生徒だった。見たこともない。誰だろうか、と思いつつ橘しおりの方をちらりと見る。
「はい」
橘しおりは淡々と返事をし、席を立った。
「あの、ごめん、さっき辞書借りて返すの忘れてたから返しに来た。ありがとう」
とその男子生徒は言って、なかなかの分厚さの辞書を橘しおりに手渡す。橘しおりがなぜか若干嫌そうな顔をしているのが少し面白かった。苦笑いをしながらしおりは彼に話す。
「そんなのよかったのに。私電子辞書も持ってるから使わないし」
「そういう問題じゃないよ。本当にありがとう」
男子生徒は深々と頭を下げた。橘しおりが活発な女の子ということを考えると、さほど意外でもないのだが、クラスにも辞書を貸す人がいるほど馴染んでいるのだなと思うと失礼ながら驚きだった。橘かおりの妹だと思うと、変に彼女の性格を歪めて見てしまう。橘かおりは人気者ではあったが、良くも悪くも浮いていた。だから橘しおりもそうだと思ってしまった。橘しおりが普通の女の子だとわからされている。そう思ってしまうほど、わたしが橘かおりに対して歪な憧れのようなものを抱いているのだと、薄々分かっていた。気付きたくもない、同じクラスだった男子に対してそんな感情を抱いていると認めてしまったら、自分で自分が気色悪いと思ってしまう。
橘しおりよりも背の高い男子生徒は、橘しおりの頭上の向こうに視線を飛ばし、橘しおりの描く青い絵を見つけた。
「あれ、橘さんが描いてる絵?」
辞書を片手に持つ橘しおりは、急に絵の話題を始められたことに少し戸惑いつつ、大きく肯定した。
「うん」
「すごいね」
間髪入れずに男子生徒は続ける。橘しおりは少し怪訝な顔をした。
「すごいって、私を褒めてるの? それとも、絵を褒めてるの?」
男子生徒はぎょっとして、唾を飲んだ。私もつられて緊張感を持つ。橘しおりの気持ちはなんとなくわかった。私も同じようなことを思った経験がある。それもどれもこれも、橘かおりから言われた言葉なのだが……。男子生徒は思ったよりも早く重い口を開けた。
「どっちもかな。あの絵も素晴らしいと思うし、あんな綺麗な絵を描ける橘さんのことも、尊敬する」
橘しおりは少しの間考え込んで、満足そうに柔らかく笑った。
「そっか、ありがと」
そうして橘しおりは視線を下に落とした。
男子生徒はその視線の動きを合図と認めたようで、じゃあ、と言い美術室のドアを派手に閉めた。それを見届けると、橘しおりは自分が座っていた席に戻る前に、手に持っていた分厚い辞書を雑に机に放り投げる。辞書を投げるのやめなよ、と言う前にバンと鈍い音がして少しだけ机の上で辞書が跳ねた。
「ただのクラスメイトです」
釈明するように私に目配せをしてはにかむ。
「使わないって言ってるのに、律儀ですよね」
そう怠そうに椅子に腰掛けた。
「まあまあ。で、使わないのに何で持ってるの?」
「ロッカーに置いてて持って帰ってなかっただけです。さっきこの辞書の分、他の教科書鞄に詰めちゃってもうこの辞書入んないんで、美術室に置いてってもいいですか?」
橘しおりはニヤニヤして筆を取り、絵を描くことを再開した。
「いや、持って帰りなよ」
私は少し面白がりつつも呆れるふりをした。橘しおりの荷物はわりとある。美術室に美術部員の私物が置いてあることはよくあるが、橘しおりはそこそこ広めに美術部の一角を占拠していた。特に気にも留めないのでいいのだが、散らかされるのは問題だ。橘しおりは鼻で機嫌がよさそうに笑う。
「そんな気分じゃないんで」
そう言って、また青い絵の具の上に青い絵の具を重ねた。
橘しおりの下校後に、彼女の描く未完成の絵をしっかりと見たことがある。
彼女は私に絵を見せたがらなかった。いつもキャンバスに布をかけて帰った。絵を描くときも私と向かい合うようにして座っていたし、直に見ないでくださいと言われたこともあった。だけど教員という立場上、見ないでいることは不可能だと恐らく本人も分かっていただろう。けれど見せたがらなかった。私は彼女の意思を尊重したかったから、しばらく見ないでいた。しかし、彼女のパレットが日に日に青に染まるのを見て、単純に好奇心が強まった。美術室に一人きり、彼女のキャンバスを照らす。
青だった。
キャンバスの裏に「春」と書いてあるのは知っていた。
彼女の絵は真っ青だった。
一瞬にして彼女の春に溺れた。名画とは言えないが、下手ではない、しかし上手いと手放しに賞賛出来るほどではない絵だったが、青に溺れて息ができなくなるような。
何が描いてあるか簡単にわからなかったのだ。多分いつ見ても理解できないだろう。私の見ている春を彼女は見ていなかったし、彼女の見ていた春を私は見たこともなかった。彼女は作品展に出品するために描いていると言っていたが、きっと自分のために描いているのだろう。いや、自分のためではないかもしれない。彼女の見る全ての春のために描いてある。彼女はこの絵で賞を取りたいなんて微塵も思っていないのだろうなと感じた。
私はその絵を見たことに不思議な満足感と罪悪感を抱えながら、そっとキャンバスに布をかぶせた。そして、その絵に挨拶するように美術室の明かりを消した。
その日の晩だった、橘しおりの夢を見たのは。
放課後、私が教員用の机で作業をする向かい側で、橘しおりはいつものように淡々と絵を描いていた。塗り重ねても塗り重ねても青、水入れを染める青。すると突然、橘しおりはがこんと水入れを倒した。ピシャリと水が床にぶつかり弾ける音が鳴り、驚いて私は橘しおりを見る。けれどそこにいたのは橘しおりではなく、橘かおりだった。橘かおりの姿をした橘しおりがそこに立っていた。驚いて息を飲む。
「いつから私のことをかおりだと思っていたんですか?」
一体どっちなのかわからない、橘しおり――橘かおりのような橘しおりは、真っ直ぐ私を見つめてそう言った。見た目は完全に橘かおりだったけれど、細くて高い声はそこに立つ人物を橘しおりだと認めていた。
「いつから私のことをかおりだと思っていたんですか」
そう繰り返したのち、足元に広がった青色の水溜りを踏みつけ、彼女は私の元へやってきた。右手に握りしめたままの筆を持ち上げる。そのまま橘しおりは自分の顔に青を零した。
「え、ちょっと、ちょっと」
慌てて橘しおりの右手を掴むが、簡単に振り切られてしまう。
陶器のような肌に、柄も統一性も秩序もなく塗りたくられた青は、顔というキャンバスをはみ出して透けた髪に飛沫を浴びさせた。青く塗られていく橘しおりの姿を見ているのに、頭では橘しおりの姿かたちがはっきりとわかった。橘しおりは青に染まらない。
「私は橘しおり」
そう橘しおりが言ったところで、私は聞き慣れたアラームの音に気が付いた。
今日だけは明るいテンポの曲調もサイレンのように聞こえる。
目の前で青くなる橘しおりの姿を思い出して、自分の顔をなぞる。もちろん青の絵の具など付いていない。いやにはっきりと覚えている夢の、いやに意味深なセリフを反芻する。
「いつから私のことをかおりだと思っていたんですか」
シンとした部屋にその言葉だけが響く。
カシャンと水入れに筆を立てる音が聞こえる。いつもと同じ音だった。
「先生、この絵、完成です」
橘しおりはキャンバス越しに私にそう声を投げた。
「あ、完成したんだ」
橘しおりは頷く。
「もうこれが乾いたら、部活引退します」
キャンバスに隠れたまま、彼女の声だけが聞こえる。
「もう部活には、来ません」
橘しおりはいやにその言葉をはっきりと告げた。
「寂しくなるね」
私は反射的に薄っぺらい言葉を返す。それに覆いかぶさるように橘しおりの声が耳に届いた。
「嘘に聞こえます」
驚いて橘しおりの方を見るが、肝心の表情は見えない。わざと見せないようにしているのか否かもわからない。私が次の言葉を見つけられず、口を半開きのままにして固まっている間に、橘しおりは少し声を荒げた。
「先生、好きです」
私は思わず、持っていたボールペンを落とす。震える声で返事をした。
「なんてこと言いだすの」
橘しおりは黙っている。どんな表情をしているのかわからない。
「私がしおりに何か期待させてしまってたんなら謝る」
真っ先に頭の中に浮かんだのは、結論だった。
橘しおりとは付き合えない。
橘しおりが同性だからとか、そんなくだらない理由じゃないし、教師と生徒だからとか、そんなつまらない理由でもない。
ただ、私が橘しおりのことを好きだと言い切れない。
「期待なんて……してないですけど」
そのまま会話は途切れる。どこからか聞こえる吹奏楽部の楽器の音や、運動部の掛け声がその沈黙を誤魔化した。
「すみません」
そう小さな声で言った橘しおりがいたたまれなくて、私は言葉を重ねる。
「謝らなくていいよ」
「……はい、すみませ……」
言葉を詰まらす橘しおりは投げ出していた足を揃えた。彼女の上履きが床を擦る音がひどく大きく響く。
「私さ、かおりのことが好きだった」
不意に口から言葉が出ていた。
「かおりのことが……好きだったんだ、私、忘れたつもりだったけど、今でもかおりのことが好きなんだ。もしかしたら、私も橘さんのことを好きだと思ってたかもしれない。けど、それも結局私は橘さんを通してかおりを見てただけなんだと、思う」
早口で捲し立てる私の言葉を橘しおりは黙って聞いていた。そして少し息を吐いて、
「知ってました」
橘しおりは平坦な声で言う。
「知ってました。先生が時々、私を私と見てないってこと、わかってました」
橘しおりは立ち上がった。視線が嫌でもかち合う。真っ黒な瞳からは目が離せない。橘しおりの口が何かを言いたそうに震える。
私の口もつられて震えた。
「先生、ごめんなさい」
橘しおりがか細くそう言って、薄い唇をかみしめる。私の頭は真っ白になり、涙が不意に滲んだ。橘しおりの姿が一瞬ぼやけて、違う誰かに見える。
「かおりの顔でそんな悲しい顔しないで……」
橘しおりの目から水入れの水と同じ色の水滴がこぼれ出た。
ふらりと揺れた橘しおりの手が当たって、がこん、とあの日の夢と同じように倒れた水入れを、二人で見つめた。あの夢とは違って、橘しおりは水溜りを避けながら、美術室の端にくたりと山を作っている雑巾を取りに行った。その間誰も何も話さなかった。先ほどまで校内に響いていた部活動の音さえも聞こえなかった。這いつくばって雑巾に青を染み込ませる橘しおりを私はただ見つめていた。ただ見つめていた。ただ見つめて、橘しおりが手洗い場で雑巾を染めた青を抜くのをみて、小さな声で呟いた。恐らく橘しおりには聞こえていなかった。
「絵が濡れなくて良かったね」
ああ、やっぱり私は、どうしようもない人間だ。
あの後、橘しおりは部活を引退し、美術室に顔を出すことがなくなった。部活は数人の一年生部員が週に数回来るだけになり、私は以前のように雑談することがなくなった。それが本来あるべき教師の姿なのだろうと思いつつも、少し寂しく思えた。三年生の教室の前を通ることもほぼなかったため、廊下等でしおりの姿を見ることもなかった。
そして橘しおりと会わないまま、彼女の卒業式を迎えた。
卒業式で久しぶりに見た橘しおりは、髪が伸びていて以前よりずっと橘かおりに近くなっていた。式が終わりに近づくにつれ、周りの生徒が鼻をすすり目を擦る中、ひとり少しぼうっとした顔をしていたのは非常に彼女らしかった。
まだ寒いが、小春日和というやつか、冬だという気はしなかった。私は春の橘しおりしか知らない。夏の橘しおりも、秋の橘しおりも、冬の橘しおりも、知らない。ただ春にそこにいるばかりだった。
卒業式後、部活もないが、私は美術室にいた。なんとなく絵を描きたくなって、美術室の画材を使って絵の具を塗り重ねていた。すると、ドアが控えめに軋む。
「先生、こんにちは」
高めの声が透けた髪の間から覗く。
「帰ったんじゃなかったの?」
「帰るの早いかなと思って」
そう言って橘しおりはくたくたになった鞄と、鞄に入りきらない卒業アルバム、卒業証書を次々と美術室の床に放り投げた。
「冗談です。前使ってた辞書を忘れました。もうここには来ないつもりだったのに」
冗談だとは思わなかった。なんとなく口実のように聞こえた。そういえば前に辞書をロッカーに入らないとかなんとか言って美術室に置いていったことがあったような気もする。私もすっかりそのことは忘れていた。橘しおりが取りに来なければ思い出さなかっただろう。後で橘しおりの辞書を見つけたところで、私は橘しおりに届けに行くこともなかったと思う。
橘しおりは私が絵を描いている机の正面の生徒用机に腰掛ける。いつもならちゃんと椅子に座れと叱咤するところだが、本当のところ、私は机に座ることを嫌うわけではないし、何しろ今日はそんな気分になれなかった。卒業式の日くらいいいか、と自分に言い聞かせる。橘しおりは窓の外を眺めた。
「大学はもう決まっています。今日、お世話になった先生には挨拶を済ませたので、もう学校にも来ることはないです」
そんな気はしていた。特に驚きもしないので、腑抜けた返事を返す。
「寂しくなるね」
「また、そんなこと言って」
彼女は咳き込むように笑い、窓の外から視線を外した。私の方を見る。
「先生が絵描いてるの初めて見ました」
わたしはそこでやっと自分が筆を持ちっぱなしだったことに気づき、筆を置く。筆はパレットの上に置いたが、コロコロと転がり、床に落ちる寸前で、座っていた机からとっさに飛び降りた橘しおりが掴んだ。危ない、と言い水入れの中に突っ込む。
その時に橘しおりは私の絵を覗き込んだ。
「へえ、綺麗な絵を描くんですね」
彼女はなんの気もなしに言ったのだろうが、その言葉は私に突き刺さる。
「そう言ってもらえたの、高校ぶりだな。ありがとう」
彼女はまた机にふわりとスカートをなびかせて座りなおした。なぜだか得意げな笑みを見せる。
「そういえば、昨日兄に藤井先生が学校にいること話したんですけど」
「え?」
突然の話に素っ頓狂な声を出してしまう。
「普通に気になったんです、兄が何て言うか。あんまり面白くなかったんですけど……もしかしてそんなに仲良くなかったんですか?」
橘しおりの悪戯そうな笑みに少しの安堵を覚えながら、必死に言葉を選ぶ。好きだったと言っておきながら、親しくなかったというのは事実だ。なんだかこの話をするのも随分今更のような気がした。
「まあ、仲良くなかったというか……好きだったけど、話したことはあんまりなかったね」
「あ、そうなんですね。あんまり覚えていないって言われたので何かはぐらかされたのかなって勘ぐっちゃいました」
橘かおりのことだから、妹にさえあまり自らのことを話さないのだろうと思っていたが、あまり覚えてないというはぐらかし方はセンスがないなと感じる。いや、本気で私との思い出がないのかもしれない。自虐的な考え方は好きではないが、十分に可能性はある。
「覚えてないのか。もっとオブラートに包んで言ってほしいよね、そういうことは」
「すみません! でも藤井先生って言ったらすぐにわかったみたいなので、元気出してください。兄、ああ見えて、身の回りの人とか全然覚えていないので」
橘しおりが少し慌ててつつ、相変わらず元気を出せなどと軽口を叩いているのを聞いて、面白かった。橘かおりが身の回りの人物を覚えていないのは想像通りだ。一通り言い終わって、橘しおりはおずおずと私に尋ねる。
「私が藤井先生の名前を出したとき、兄が何て言ったか聞きたいですか?」
そう言って早く答えを言いたそうな目つきをこちらに寄越した。聞かないわけにはいかず、何だって? と問う。
「『綺麗な絵を描く人』って」
橘しおりの声は風のように耳を通り抜けた。
ああ、橘かおりが綺麗な絵と称した私の絵は、まだ彼の中にあったのか。現物は燃やしてしまって、私もぼんやりとしか覚えていないけれど。私だけが、彼が綺麗だと言ったことを覚えているのだと思っていたが、彼も覚えていてくれたのだ。
「私も今日の今日まで先生の絵をちゃんと見たことが無かったので、知らなかったんですが、なるほど、綺麗です」
橘しおりがそう続けて話し、私は浮ついた気持ちでありがとう、と呟いた。
橘しおりは悪戯に微笑む。
「そうだ、あと先生私、彼氏できました」
急に年相応の話題を振られ、思わず大きく驚いてしまう。
「そ、そうなの? おめでとう」
かなり予想外だった。驕っているつもりではなかったが、どこかで橘しおりはまだ私のことが好きなのだと思っていた。半年もあっていないのに、それは思い上がりだ。橘しおりは私が特別視していた橘かおりの妹だというだけで、ただの女子生徒であるというのに。
「ありがとうございます」
橘しおりは苦笑した。
「さっき告白されたんです。卒業式の日に告白とか、本当にする人いるんですね」
「え、いるでしょ……定番だよ。定番」
ひきつる口角を必死に抑えて、私は心の中で笑い声を上げた。橘しおりは知らないだろうが、私は卒業式の日に告白している。他でもない橘かおりに。今の生徒は卒業式にあまり告白しないのだろうか? 時代の流れを感じた気もするが、いや私の時も卒業式の日に告白した話は聞かなかったな、と思い直し、ばつが悪い思いをした。
「先生、あの辞書返しに来た人、覚えてないですか?」
「覚えてるよ。え? ひょっとして彼氏ってあの人?」
橘しおりはニヤリとする。
「そうです」
橘しおりの絵を綺麗だと言った男子生徒だと記憶が結び付き、勝手に納得する。やはり絵を綺麗だと言われたことがきっかけになるのかな、と自分を重ね合わせ考えた。そして、恋愛が成就したことを少し羨ましく思った。
「あの子、橘さんの絵を綺麗だって言ってた子だよね」
橘しおりは眉間に皺を寄せた。
「あれ、そうでしたか? 覚えてません」
それは関係ないのか。あっけらかんとしているのは確かに橘しおりらしかった。橘しおりと私はやはり似ていない。私は無意識のうちに笑い声を出していた。
「そうだよ。あの子のこと好きだったんだ?」
橘しおりは目を少し泳がせる。
「まあまあですかね」
「まあまあって」
「私のまあまあは結構ですよ」
ニヤニヤしながら橘しおりは言った。
「遠距離になるんじゃない?」
「いや、大学が――お互い近いので、そこまでじゃないです」
そうなんだ、と興味がなさそうな返事をしてしまったのを反省し、謝ろうとしたが、橘しおりは特に気にしていなさそうだったのでやめた。これから彼女は楽しい新生活になるのだろう。
「お幸せに」
「はい」
「先生もお幸せに」
「相手もいないのにそういうこと言うんだ?」
つい、嫌味を投げかけてしまう。卒業したとはいえ、学生相手に見苦しい。橘しおりは微笑みを保ったままだ。
「恋人がいることは幸せの必須条件ではないですよ、恋人が何人いても誰であってもそうです。そう私は信じています」
橘しおりはそう言った後、机から飛び降り、床に散らばった荷物を拾い上げた。かなり膨らんだ鞄に辞書を詰め込み、指に引っ掛ける。彼女の細い指がその重さに耐えきるのか不安になった。
「あ、ねえ、絵は?」
急に橘しおりの描いた絵の存在を思い出す。あの絵は作品展に出品され、既に返却されていた。美術室の端に数ヶ月放置されていて、忘れかけていたのだった。橘しおりがそのままにして卒業したら、連絡して取りに来てもらうべきか……と考えていたが、運よく思い出したので、もうその必要はない。少しほっとした。
橘しおりは少し困ったような顔をして、自分の描いた絵をいらないと言った。
「じゃあ捨てようか?」
けれど彼女としては、捨てるという選択肢を選びたくなかったようで、最終的に持ち帰ることを決めた。私もその方がいいと勧めた。せっかく描いた絵なのだから。学校にはもう来ないつもりだと言った、荷物をたくさん抱えた橘しおりに、絵を持ち帰らせることで荷物を増やすのは酷だとも思ったが、そんなに大きな絵でもないので、卒業アルバムと重ねて無理やり持たせた。持ち上げた瞬間、苦しそうに呻いた橘しおりを哀れに思ったが、それも橘しおりの最後の姿だと思うと少し笑えた。
私は彼女を励ましながら美術室のドアを開ける。相変わらず開ける時には音が鳴る。ドアに作品の角をぶつけながら橘しおりはヨタヨタと美術室の外に出た。
「お世話になりました」
下げられない頭を無理に下げようとする姿が可笑しかった。
「いいえ、こちらこそ。体調には気をつけてね」
「はい。藤井先生も」
二、三歩進んで、橘しおりは私の方を振り向く。
「ではまた、藤井先生」
その声を聞いたらわかる。
もう橘しおりに会うことはないのだろう。橘しおりとは橘かおりよりも親しくなったと感じていたが、兄同様にもう私に会う気はないのだとわかった。それなのに、無責任にまた、と別れをを避けるところはよく似ていた。
「またね」
そう思っているのに、またねと返す私も同じようなものだと自分にほとほと呆れながら、橘しおりの後ろ姿を眺めた。風に押されて美術室のドアがバタンと音を立てて閉まった瞬間から、橘しおりは私の思い出になった。
完成した橘しおりの絵を見たのは一回きりだった。
橘しおりは繊細で美しいイメージがあったせいか、力強く描き殴られてぐちゃぐちゃな絵は私を驚かせた。彼女に似合う絵ではなかった。だからと言って、だれに似合うと言われればだれにも似合わないし、だれのためにも描かれていない、天涯孤独の絵だと思った。それは橘しおりらしいなと思ったが。
私はあれから数年、美術教師を続けているが、あの絵のことがずっと忘れられない。私はあの絵以上に綺麗な絵を見たことがない。私は綺麗な絵を今日も描き続けているが、あの春には及ばないのだった。今年も春という季節は来る。けれど、春が来るたびに、私の春はあれっきりだと思うのだ。
青の春に つつみやきミカ @tutumika
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