下宿話

「下宿してっと、面倒くさくて。朝御飯なん


か作ってられないよな」


 裕次が、リュックをどんとテーブルの上に


置いて大らかに笑う。


「彼女でもつくったらいいのに」


冗談っぽく言うと、


「あんな汚い部屋に、誰も来てくれません。


野郎だけです」


そう言って、みどりのショートの髪を、く


しゃくしゃっと撫でる。


最初は抵抗あったけど、これが裕次なりの


愛情表現。




「それに、親からの仕送りも少ないし。教科


書代も高いし。朝昼、兼用で十分だな」


「ほんと、大学の教科書って高いよね。図書


館に置いてる分も少ないし。試験前なんか、


全部借りられてるもんね」


「もっと書籍、増やしてくれたらいいのにな。


オレ、借りれるだけクラブの先輩に教科書と


過去ノート、過去問、借りたけど」


「生協に本買いに行ったんだ。教科書のリス


ト見ながら全部揃えたんだけど、重いからね。


ぼちぼち買わないと。Frauに載ってた新


作のバックが欲しいな」


「裕次、家賃いくらで下宿借りてたっけ? 」


「共益費入れて、3万ちょいかな」


「まあまあのとこだね。地方出身者にとって


は。真人なんてこの前の冬、家賃より高いコート


買ったって、みんなに笑われてたもん」


「あいつ、ホント面白いよな」


 裕次が膝を大袈裟に叩いて笑う。


「ほーんと」

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