坂の途中
だから、少し立ち止まって。
背筋を伸ばしてゆっくりと空を仰ぐ。
ヤワな育てられ方はしていないけれど。
この坂は本当に長いなと思う
もう、一年と少し登り続けてきた坂道。
あと数年、登り続けないといけない。
けれど……こんな記憶も、いつかはいい想
い出に変容していくのだろうか。記憶という
曖昧な密封されていない直射日光の当たる、
半透明の容器の中で。
その中ではきっと美しい思い出だけが、砂
のように手の平からこぼれ落ちるに違いない。
坂の途中には、いつも大型のバイクや原付
が隙間もないぐらいに並べられていて、遅く
来る学生が置き場を探して、無造作に放置さ
れたバイクを動かしている。
昼過ぎには、この坂はいつもバイクの煙が
充満していて。沖縄の突き抜けるように青い
空と、キレイな空気の中で育ったみどりには
少し煙たい。
喉が痛くなるときもあるけれど、一生懸命
勉強して都会の志望の大学に入れたんだから
このくらい我慢しないといけない。
ぎっしりと並べられたバイクの中に、ピン
クのナンバープレート見ると、いつも胸がド
キンと高鳴るのを隠せない。
みどりは、生まれて初めての恋をしている。
まだ「恋」と呼ぶには、幼すぎるかもしれ
ない、そんなそっと大きな両手の中で温めた
くなるような小さな小さな恋。
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