裕次出現!
「よお、沢木」
いきなり、後ろから威勢の良い落ち着いた
男の声がした。
振り向くと、黒いヘルメットを被った男の
口元がニヤッと笑っているのがプラスチック
のガード越しに透けて見えた。
わざとオーバーに驚いてみせると、男はヘ
ルメットを脱いで日に灼けた色黒の彫りの深
い顔を現した。
坂元 裕次 19歳。
同級生でアメリカン・フットボール部の準
レギュラー。
広い肩に隆起した筋肉のがっしりとした体
の裕次に会うと、思わず目を反らしてしまう。
本当はすごく、好きなんだけど。
「今から、授業出る? 」
「飯食ってからにしよ。2限目の出席とるの、確かラストだったろ? 」
「うん」
「昼休み中、学生食堂すごく混むしさ」
「そうだね」
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